第110話 推し活 vs 新人類
「それじゃあ、ボス戦は作戦通りにね」
事前に海斗が新人二人に作戦を伝え、いざボス戦が始まった。まずは不破さんが
ボス戦でメインアタッカーを任された二人だが、レベルアップの影響もあってか危なげなくボスにダメージを与えていく。うーん、何だか新人の割に戦いなれしてる気がするね。俺にとってはどうでもいいけど。
結局、海斗達の手助けがないまま二人は
「「やったー!」」
仲良くハイタッチする二人に鼻の下を伸ばす四人。予定ではここのボスを倒せば研修終了だから、さっさと戻ってレベル上げを始めたいところだ。
そっとタブレットの電源を入れてみると。素直にボス討伐を褒めている数少ないコメントの10倍以上の罵詈雑言が並んでいた。あー、怖い怖い。
それでは帰ろうというところになって、俺は彼女達の行動に少々違和感を感じた。真っ先に1階層に転移するかと思いきや、魔力を登録した後、転移せずに俺達に先に戻るように勧めてきたのだ。
普通、初めて転移石を使うとき嬉しくて説明も待たずに飛ぶヤツが多いんだけど、なぜそうしないんだろう?
まあ、別にどうでもいいんだけどここに残りたい理由でもあるのかね? それとも最後に転移しなきゃならない事情とか。何となくだが、引っかかりを覚えた俺は10階層へと転移した。
▽▽▽
~side 海斗~
「何だこいつらは? !? 不破さん、頼んだ!」
新人研修を終え、ゲートから出るや否やファイアーボールが飛んできた。俺は咄嗟に不破さんにお願いし、盾で防いで貰う。危なかった。間一髪だが何とか防ぐことができた。
なにが起こっているかはわからないが、すぐに念話で戦闘態勢を取るように指示を出す。そして、間髪入れずに綿貫さんと翔に反撃するようにお願いした。
綿貫さんの矢が魔法を放った人物の肩に命中したが、なぜか翔の魔法は飛んでいかなかった。ってか、翔のヤツどこいった!? あいつ、ひょっとして別の階層に飛んだのか?
翔がいないことに気がついた俺は、逆にチャンスだと思い念話で今の状況をわかる範囲で伝えた。当然、返事はないが間違いなく伝わっているはず。
翔への念話を送り終えたところで、一人の女が集団の中から歩み出てきた。その様子から、こいつが首謀者だと判断する。
「ふーん、これが期待の新人チーム『推し活』ね。名前はさておき、中にいた連中よりよっぽど手強そうね」
女のただならぬ気配に、俺の本能が警笛をならしている。こいつはヤバい。俺達全員でかかっても敵わないかもしれない。それにあいつらの後ろには、滅茶苦茶に壊されたセンター内部が見て取れる。
この状況から察するに、テロリストか何かにここは占拠されたようだ。おそらくこんなことしでかすのは『新人類』以外ないだろう。参った。最悪の状況だ。
まさか
とはいえ、相手は頭のおかしなテロリスト集団。こちらの言い分なんて通用するわけもない。俺達は最後の抵抗を試みるべく、テロリスト集団を睨みつける。
「制圧するのは問題ないけど、こっちにも多少の被害がでそうね。やっぱり予定通り頼むわ」
なぜか自分の仲間ではなく、俺達に語りかけてくる女。どういうことかと考えようとしたその時、後頭部に強い衝撃を受け床へと倒れ込んでしまった。
意識が飛びそうになるのを必死にこらえて顔だけ上げると、氷天と陽葵が不破さんに後ろから襲いかかっているところが見えた。クソ! あいつら二人もグルだったのか!? 横を見れば漣さんが、後ろでは綿貫さんも倒れている。
「よくやったわ、あなた達。あの方にもしっかり報告しておくわね」
「「ありがとうございます!」」
氷天と陽葵は悪びれた様子もなく、女の横に立ち並びこちらに笑顔を向けてきた。
「騙しててごめんね、みんな。あなた達、6級の割に結構強いから作戦が終わるまでダンジョンに隔離させて貰ったの。おかげでレベルも上がったし、作戦も上手くいったみたい。みんなここで死んじゃうけど、許してね。あっ、ショウ君だけは私達が飼ってあげるから、安心……して? あれ? ショウ君はどこ?」
姉の氷天が翔がいないことに気がついた。それにしても、こいつら俺達を殺すつもりなのか。ここにいる
(頼む、翔。何とかここから抜け出して、助けを呼んできてくれ!)
俺はそれだけ翔に伝えたところで、首謀者であろう女に長い針で何かを打ち込まれ、意識を失ってしまった。
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