第96話 『北海道解放作戦④』
「戒、このままじゃまずいぞ?」
「尊、向こうのサポートに回ってくれ」
かといって、仲間を見捨てることもできない。こうなれば、一か八か向こうに戦力を集中させて一気に倒してもらうしかない。俺の負担が増えるが、これが現状最善の策だろう。
「いいのか?」
長年一緒に戦ってきた仲間だ。俺の覚悟が伝わったのだろう。苦しそうな声で確認してきた尊に、顔を向けることなく頷く。背後から尊が離れていく気配を感じながら、俺は
尊の援護がなくなり、状況は更に厳しくなった。震雷の火神はこちらに残ってもらっているが、彼の魔法では
ひょっとして、ここで全滅するのかもしれないと思ったその時、救世主が現れた。
「仁さん、こっちは私達が引き受けます。仁さんは戒さんの方にいってあげてください!」
この声は柊明日香だな。我々がもたついている間に後方支援組が追いついてしまったようだ。
俺達が戦闘中の時は近づかずに待機するように言っておいたはずだが、彼女たちは見るに見かねてサポートに来てくれたのだろう。
規則違反ではあるが、正直ありがたい。
「2級の
「大丈夫です! 任せてください!」
ありがたいどころか、頼もしいな。
4級の
「兄貴、待たせたな。ここから反撃の時間だ」
俺の隣に弟が並び立つ。今でこそパーティーが分かれているが、幼い頃からともに切磋琢磨してきた仲だ。こいつとの連携なら、
その
まずは手始めに火神に
目の前には俺の動きを予想していたのであろう、
「ハァァァ!」
完全に頭上の死角から拳を振り下ろす我が弟。硬化スキルと腕力強化スキルの併用で、その破壊力は何倍にも膨れ上がっている。
ドゴン!
仁の拳は
「キ、キサマ、ヨクモ我ガ角ヲ!」
片膝を着いた
自慢のミスリルの剣を腕力強化にものを言わせて縦横無尽に振り回した。
ザシュ!
そのうちの一撃が悪魔の腕を切り落とした。それでも俺の剣は止まらない。脚、腕、胴体と傷をつけていきあと一息のところまでやってきた。
「調子ニ乗ルナ!」
片腕を失い、全身傷だらけになりながらも未だ戦意が衰えていない
「させるかよ!」
素晴らしいタイミングで火神のファイアーアローが発動し、闇の鞭を蹴散らした。
「終わりだ。断鉄剣」
俺はとどめにスキルを発動させ、ミスリルの剣を橫薙ぎに振り抜いた。胸から上が後ろにずり落ち、下半身が2,3歩あるいたところで膝から崩れ落ちた。
ホッとしたのもつかの間、俺達はすぐにもうひとつのパーティーの加勢に向かう。だがしかし、彼らの戦いを見たオレ達はすぐに加勢するのを諦めた。なぜなら、たったひとりの少女が縦横無尽に動き回り、
「すごいな……」
横に立つ仁が呟く。こいつがこれほど素直に強さを認めるなんて珍しいな。だが、その思わず漏れたであろうその感想に俺も同意せざるを得ない。確か彼女は中学生のはず。その若さであの強さとは……末恐ろしいな。
「ふう、あっ、そちらも終わったのですね! お待たせしてすいませんでした!」
「あ、ああ。いや、いいものを見させてもらった。それに助けに来てくれて感謝する。正直、危ないところだったが君たちのおかげで無事倒しきることができた」
まじか。
幸い、この辺りに魔物はもういないようだったので、ここで少し休憩を取ることにした。後方支援部隊から各種ポーションを補充し、昼食をとる。生きて再び飯が食べられることに感謝しながら、だがしかし俺はこの先の戦いに一抹の不安を感じるのだった。
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