第93話 チーム推し活④
できるだけ戦闘に参加しないように、どうしても魔法を使うときは、カメラに映らないように気をつけている。それが功を奏したのか、配信の方でもあまり大騒ぎにはなっていないようだ。
定期的に俺を映せというコメント入ってるようだが、そんなものは無視だ無視。目立って面倒を引き込むのはごめんなのですよ。
11階層の途中から森林フィールドに変化し、視界が悪くなったところで陣形が変わる。斥候の綿貫さんが先頭に、その後ろを不破さんが、更にその後ろを海斗と漣さんが、俺は一番後ろからついていく形になった。
少々縦長になるが、斥候の綿貫さんの索敵能力を存分に活かす陣形らしい。海斗も色々考えてるんだな。
森林フィールドは視界が一気に悪くなるから危険も増すのだが、俺にとってはカメラに映らない死角が増えるので願ったり叶ったりだ。上手く木の陰に隠れながら、時折、米粒大のファイアーボールで
っとその時だった。俺の探知に
「ブルルルルル!」
「あぁん?」
俺は
「お前、何やってるんだ!?」
いいね、その表情! ドッキリが成功した時みたいだ。
「バトルホースの上に……ショウ君?」
「むむむ、俺も馬に乗りたい……」
「えっ!? バトルホース!?」
海斗の声に反応して振り向いた漣さん、不破さん、綿貫さんが三者三様の反応を示す。海斗意外の3人も驚いてくれたみたいで、これまた気分がいい。
”はっ? 何? 何が起こってる?”
”えっ? バトルホースに乗ってる? いつの間に?”
”お馬さんに乗るショウ様……素敵です!”
”白馬の王子様!”
”どう見ても白くねぇだろ! バトルホースは!”
”そのまま私を迎えに来て!”
”いやいや、それどころじゃないだろ? 魔物っていうこと聞かないよね?”
”聞くわけないだろ! あんなにかわいいホーンラビットだって、人間を見たら即襲いかかってくるんだぞ!”
”じゃあ、俺達は今何を見てるんだ?”
”超然イケメンのショウ様が凜々しく馬に股がってるところでしょ。静かにしてくれます?”
”ごらぁぁぁ! また誤字ってるだろう貴様! 『股がる』じゃなくて『跨がる』だろ! わざとか? わざとなんだな!?”
しまった……。驚かすのに夢中でカメラの存在忘れてた……
タブレットの電源を入れて確認すると、案の定大騒ぎになっていた。いろんな意味で。しかし、知らなかった。魔物って調教できないと思われてるのか。ひょっとして、調教スキル持ちっていないのか?
俺は思考加速で考えた末、静かに
「さっ、何やってるんだみんな? さっさと先に進もうぜ」
「「「誰のせいでこうなってると思ってんだぁぁぁ!」」」
くっ!? さすがにスルーしてくれなかったか。ってか、そんなにきれいにハモることないだろう。海斗が念話で指示出したのか? 全く、スキルの力を無駄に使いやがって。
とりあえず、配信していることを理由に先に進むことを提案する。『馬がいたから乗ってみた以外の説明は思いつかないぞ』って言ってやったら、すごすごと引き下がってくれた。
(あとで説明してもらうからな)
と思ったら念話で釘を刺されてしまった。全く、無駄にスキルの使い方が上手くなってやがる。他の3名も追求するのは諦めてくれたようで、再び陣形を整えて12階層への階段を探す。
コメント欄は今だ大騒ぎ中で検証班がどうとかこうとか書いているのを見て、俺は再び電源をそっと落とした。
その後は休憩を挟みつつ攻略を進め、14階層まで何事もなく到着した。
14階層は再び草原フィールドに戻っており、俺はまたカメラ映りを気にしながら必要最低限のサポートだけ頑張っていたのだが……
「あー、一応伝えておくか。海斗、どうやら空からお客さんが来たみたいだぞ」
俺は誰も気がついていなかったので、仕方なく空を指さしながら教えてやった。11階層から14階層までの間に一体だけ存在するレアモンスター、
「!? レアモンスターか!? 5時の方向! 戦闘態勢!」
海斗の一言で全員が素早く戦闘態勢に入る。
「綿貫さん、矢は届きますか?」
「スキルを使えば届くかもしれないけど、当たりそうにないし、運良く当たったとしても傷ひとつつけられないだろうね」
さすがにこの距離じゃ矢は無理だよね。そうなると、こちらの攻撃手段はひとつに絞られる。
「ショウ、ファイアーボールならどうだ?」
はい、来ました。そうなりますよね。矢が届かなければ魔法に頼るしかない。それはいい。俺の魔法なら届くだろうし、何なら一撃で倒してしまうかもしれない。しかしだ、問題は
6級の昇格試験を受けに来ている7級の俺が、5級の
とは言え、何もしないわけにもいかない。このままだと、
「やってみる」
それだけを告げて、俺は超超手加減した米粒大のファイアーボールを作り出し、
予想以上の回避能力を見せ、直撃を避けたのだ! 片方の翼を吹き飛ばしたものの、生きた状態で地面に落下してくれた。よくやってくれた
「落ちたぞ! みんなでかかれ!」
相当高いところから落ちたせいで、ふらついている
俺のファイアーボールのダメージに落下のダメージまで加わった
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