第11話 『ダンジョンデビュー①』
念願だった
初心者向けの配信動画はそんなに珍しいものではないらしいんだけど、実際に
そんな計画を立てた私達は朝から協会の渋谷支部に行き
配信についての注意事項は昨晩、楓ちゃんからみっちり教えてもらったので準備は万端なんだけど、楓ちゃんはそこそこの人気配信者なので同時接続が常時2000人ほどいるみたい。
それが多いのか少ないのかはいまいちわからないけど、楓ちゃんがスイッチ一つ押すだけで、私達の姿が2000人もの大勢の人の目にとまると考えると、だんだん緊張してくる。
「じゃあ、準備はいいかな? 始めるよ!」
楓ちゃんが腕に取り付けたスマートフォンをタップした。同じものを私も借りて腕につけている。これで楓ちゃんの配信を見ながらコメントするみたい。
「おはよう、みんな! カエデチャンネルのカエデだよ! 今日も一日よろしくね!」
楓ちゃんが、ドローン型の自立行動カメラに向かって挨拶をする。いつの間にこんな高性能なカメラが開発されていたのかな。
"おはよーカエデちゃん!! 待ってました!"
"おっはー!! まってたよーん!"
"わーい、カエデちゃんだーってあれ?
"ほんとだ。そこって、センター内じゃない? たぶん渋谷の"
配信が始まると同時にたくさんのチャットが流れていく。開始早々、100人、200人と増えていき一気に同接が500人を突破した。その辺りで増え方は緩やかになっていったが、今もまだじわじわと増え続けている。
それにしても、楓ちゃんが映る背景を見ただけで、渋谷
「今日はね、予定を変更して、以前から企画していたレクチャー動画を配信します!」
楓ちゃんが視聴者さん達を飽きさせないように、テンポよく会話を進めて行く。
"おお、ってことはゲストがいるんかな?"
"きたこれ! レクチャー動画は数あれどカエデちゃんが企画していた『本物の初心者さんを連れて』っていうのは珍しいからな"
"オレ、
"オレモオレモ!"
"どうかゲストが男じゃありませんように(・人・)"
楓ちゃんが一言発するたびにチャット欄が大盛り上がり。さすがは人気探索者。一部、不穏なコメントが見えるけど、私は女だから大丈夫だよね?
「それじゃあ、紹介します! 昨日、
楓ちゃんの紹介コメントとともにカメラがクルッと回り、レンズを私の方へと向けた。
「ど、どうも。ただいまご紹介に預かりましたアスカです。よろしくお願いします」
緊張でちょっと噛んでしまったけど、何とか予定していた挨拶をすることができた。なのに、チャット欄が反応していない! どうしよう、何か変な態度でもとっちゃったのかな?
"天使だ。天使がおる"
"何この生き物。控えめに言って天使じゃん"
"か、かわいい。結婚して下さい"
"清楚系でありながら天然系の雰囲気も? ストライクゾーンど真ん中じゃねえかよ!"
"オレちゃん年上好きかと思ってたけど勘違いだったわ……"
私が心配した一瞬の後、先ほどにも勝る勢いでチャットが流れていった。
"ちょっとオレ拡散してくる"
"オレモオレモ!"
"朗報『天使現る!』拡散してきました!"
天使がどこに映り込んだのかはよくわからないけど、チャット欄が盛り上がっているのはいいことなのかな?
「はいはい、こうなりそうな予感はしていたけど、さすがにこれは予想以上だね。みんな、ここはカエデチャンネルだよ! 忘れないでね!」
"っは!? あまりの衝撃に我を忘れてた。ごめん、カエデちゃん(o_ _)o"
"カエデちゃん最強! でもアスカちゃんまじでかわいい(^。^)"
"カエデ〜、オレお前一筋だぞ~! でもアスカちゃんをもう少し映してもいいんだよ"
カエデちゃんが怒ったふりをすれば、即座に反応が返ってくる。視聴者もカエデちゃんが本気で怒っているわけじゃないとわかっているのだろう、コメントが愛に溢れている。
「でも、親友を褒められて悪い気はしないわね。実際、これを狙っていたのも本当だしね。って、紹介はこれくらいにして実際にレクチャーを始めるよ!」
楓ちゃんがレクチャーを開始する頃には同接がすでに1000人を超えていた。それでもまだ止まる気配はなさそう。
「まずは武器や防具の選び方から教えていくね! よく武器になれていない人は遠くから攻撃できる槍がいいって動画を見るけど、あれって半分は正解だけど実際槍ってすごく重いからね。持ってみて振り回せないようなら槍はおすすめできないかな」
そう言いながら楓ちゃんは、センター内にある武器のレンタルコーナーを映している。この武器のレンタルコーナーは
"そうなのか。武術の心得のないオレちゃんは槍一択だと思ってたよ。危ない危ない"
"確かに楓ちゃんの言う通りだな。大体、槍の長さも重さも想像できないんだよ初心者は。木刀は売ってても槍を売ってるところは見たことないからな"
"言えてる。ってか、レンタルコーナー映してくれるのありがたい。結構な種類の武器がおいてるんだな。オレがライセンス取ったときの参考にさせてもらうわ"
"おいおい、そういうのを捕らぬ狸の皮算用っていうんだぞ(笑)"
"わーってるわい! 夢ぐらい語らせてくれたっていいだろうに!"
"違いない!"
何だかんだ、楓ちゃんの視聴者達は穏やかな人が多いようだ。一瞬、ケンカになるんじゃないかと思ったコメントも、仲のよい友達同士のじゃれ合いみたいに収まっていく。いいね、この雰囲気。
私が実際に武器を手にしながら選んでいくところを配信したのだが、私は前の世界で一通りの武器の使い方をならっていたから、どれをとっても同じに感じてしまった。
それを素直に伝えると『武器を持ったことがなければわからないよね』と共感を得てしまいました。まあ、好意的だからよしとするかな?
結局、私は木刀で練習したことがあるという理由で刀を選んだ。刀は剣より扱いが難しいとされるので初心者には向いてないらしいけど、一番しっくりきたのでこれにさせてもらった。レンタル品だからお世辞も上等とは言えないけど、低階層の魔物ならこれで十分みたい。
それから要所を守る革当ての防具をレンタルし、いざ
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