第5話 妹は探索者になりたいらしい
色々調べてわかったことは驚愕に値するが、かと言って妹の誕生日を蔑ろにする選択肢はない。
俺は今日得た情報を頭の中で整理しつつ、妹の誕生日パーティーのためにせっせと料理を作っている。
この日のために貯めたバイト代を使って、いつもは食べられないような豪華な食事を用意した。とは言っても、唐揚げやサラダ、手巻き寿司といった他の家庭では当たり前に出てくるような料理だが。
ガチャ
お、どうやら天使が……また間違えた、妹が帰ってきたようだ。すぐにでもスキルやダンジョンのことを教えてやりたいが、ここじゃあ落ち着いて話もできないから、食事をしながら教えてやるか。
「お兄ちゃん、私、
明日香は帰ってくるなり、手も洗わずに駆けよって来てそんなことを言い出した。あれ? おかしいな? 明日香はどこで
興奮する明日香を落ち着かせ、きちんと手を洗わせてから食卓につかせる。
出来上がった料理を運び、『いただきます』をしてから話を聞いた。
(なるほど。まさか楓ちゃんが
妹の情報源を聞いて納得した俺は、自分が調べたことを明日香に教え、二人で情報の擦り合わせを行った。
ある程度現状を把握したところで、いったんシャワー浴びて寝る準備を整えてから、今度はスキルの検証を行うことにする。
「まずは明日香のスロットとスキルを調べようか」
「うん、お願いします」
俺は許可を取ってから、期待に満ちた目でこちらを見つめる明日香に鑑定を使う。
名前 柊 明日香
レベル 1
スロット 3
スキル
どうやら明日香はスロットを3つ持っているが、初期スキルはないようだ。それを聞いた明日香はがっかりし、俺のスロットが無限で前と同じスキルマスターを持っていると伝えたら羨ましがられた。
「もうひとつ試したいことがあるんだけどいいかな?」
がっかりする明日香にまだ試したいことがあることを告げる。そう、もともと俺のスキルマスターは明日香にスキルを付与するための能力だった。ひょっとしたらその力も残っているかもしれない。
以前は明日香と一心同体だったから自然とスキルを付与できていたが、今は自分の身体がある。どうすれば付与できるのか……よし、とりあえず触れてできるか試してみるか。
明日香の手を握り、スキルが付与できるか念じてみた。おほ、緊張する。
名前 柊 明日香
レベル 1
スロット 3
スキル 身体強化
あっ、できちゃった。
もしかしてとは思ったけど、案外簡単にできてしまった。しかも、自由に付け替えることができる。そのことを明日香に伝えると大喜びしてくれた。
兄としてはかわいい妹が危険な
妹のおねだりには弱いのですよ。
そうと決まれば色々準備しなければならない。明日香は早速、楓ちゃんと連絡を取って
俺は再度、
それと同時に、明日香に内緒で俺も
調べを進めていくと、ありがたいことに
なぜなら
今のところ
理由はどうあれ、お金に余裕がない俺たちに取ってはありがたい。さらに、本来ならばスキルオーブを買うのにお金がかかるはずだけど、そこは俺のスキルがあるから心配ない。
むしろ、試験の時は目立ち過ぎないように、明日香につけるスキルはひとつだけにしておこう。実際ダンジョンに入る時に3つつければ問題ないはずだ。
そうと決まれば、こっちのスキルについても調べておくか。向こうにはないスキルがあるかもしれないからね。
明日から学校が始まるから、明日香が試験を受けにいくのは早くても次の土曜日だ。まだ5日間あるから、その間にしっかり準備を整えよう。
楓ちゃんとの電話が終わった明日香に聞くと、
明日から学校が終わり次第、すぐに帰ってきて試験対策を行うことにしよう。楓ちゃんもできる限り手伝ってくれるって言ってるみたいだし。
こうなると、向こうの世界での経験も役に立つというものだ。明日香が
いつも『私もお金を稼げたら』って言ってたからな。そんな妹の優しい気持ちに感謝しつつ、妹が危険な目に遭わないように、万全の準場を整えると決め、俺は布団に入るのであった。
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