第6話

声をかけたらすぐに電話番号を教える女を軽いとは思わない。

誘ったらすぐにホテルに行ってセックスする女も軽いとは思わない。

すぐに電話番号教えたり、ホテルに行く女を少しも軽いとは思わない。

彼女が軽いかなんて、どうでもいいことだ。それに軽いかどうかなんて大した意味がない、どうでもいいことだ。そんなことで彼女の何も決まらない。

もし俺がイケメンだったら電車で隣に座った女に声をかけてその日の午後にはもう抱いてる。そうなのかもしれない、でもそんなことに大した意味はない。

抱くか抱かないかなんて大した意味はない、どうでもいいことなんだ。それは一つのきっかけに過ぎない。俺と彼女が付き合うきっかけにはなるだろうけど、それ以上にもそれ以下にもならない。ただ俺は彼女とセックスをした。それは事実だ。そして俺と彼女が付き合うきっかけにはなったが、それ以上には何にも変わっていない。

はっきり言うがセックスには何の力もない、そんなもんだ。


彼女は今教え子の進学で悩んでいる。数学はできるけど国語力がないそうだ。4教科しかない私立中学校入試で国語力がないのは決定的だ。受験する子達はほとんどオール5に近い子ばっかりだ。他の3科目がいくら良くても勝てない。

それは簡単な算数だ。400点と300点では負けるに決まっている。

受験生の親というのは本人以上に親が熱心だ。特に小さい子どもの私立中学校受験はほとんど親の受験といってもいい。子供も頑張って勉強するけどそれ以上に親が頑張って子供たちのために努力をする。夕食を作る時間や栄養のあるバランスの良い食事お風呂に入る時間から何時に寝て何時に起きるかほとんど全ての事を懸命にやる。まだ幼くて可愛くて仕方のない子供たちの受験だから親は本当に一生懸命になっている。こちらが見ていて恐ろしくなるほど両親の頑張り方はすごい。評判の良い先生の話を聞けば多少高くても子供のために高額の給料を払って、その先生に教えてもらおうとする。家庭教師の先生によく教えてもらうために先生を全力で接待する。大抵は親よりもずっと若い大学生だったりするんだが両親はそんなことは気にしない。見ているこちらが涙ぐましくなるほどだ。子供が算数が苦手となれば親は全力を尽くして子供に算数を教えてくれる良い先生を探す。どの科目もそうだ。そうやって親は一流の先生を見つけてくる。子供たちも素直に親にしたって、それでうまくいかないことはまず少ない。私立中学校受験は親も大変だが、子供も本当に大変だ。昼間は学校に行き学校が終わってから塾に通う。そして夜中かヘタをすれば朝までずっと勉強している。私の経験では受験の勉強で一番よく勉強するのは私立中学校を受ける子ども達だ。大学受験よりも勉強時間も長く、大変な努力を要する。

いったい何のためにそこまでするのか全くわからないが彼らには彼らなりに頑張る理由があるんだろう。ご苦労なこった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る