第2話
彼女は連絡先をLINE で入れておいてくれた。彼女が藤が丘の駅ビルの2階にあると言っていたその塾にYは行ってみた。わりに新しいビルで駅前にある他の塾と大差なかった。大手なのに藤が丘にはあまり力を入れていないのかもしれない。教師5〜6人でワンフロアの教室を見るそんな感じだ。
昨日の彼女の話じゃ私立中学校受験の子供達を担当していると言っていたから、割にお金の余裕のある人達の子供を相手にしているんだろう。私立中学に通わせるには経済的な余裕が必要だ。大抵は医者か弁護士、でなければ社長の息子や娘が多い。だから親に気に入られれば、授業料とは別にお中元もお歳暮もこんなにもらっていいのかというほどもらえる。ほとんどボーナスみたいなものだ。お金だけじゃなくデパートからブランド和牛や商品券もたっぷり届けられる。自分たちがそうやって接待されてきたからなのか大抵の親はあちらこちらと名店に誘ってくれる。Yも行ったことのないような店に色々と連れて行ってもらった経験がある。お金に余裕があるということはこんなにも違うものかとYは思った。だからみんなどうせ担当するなら私立受験クラスをやりたがるわけだ。
「どう?小さいでしょ。」
「いや。こんなもんじゃない。人数も手頃だし…。」
「こっちに来てやってって言ったらやってくれる?」
「それは無理だよ、今のところがあるし。」
「そうね、きゅうに先生変わったら子供達も嫌がるだろうし…。」
「それに急に雇うって言っても無理でしょ。上の人たちのこともあるし。」
「それがそうでもないのよ。」
「えっ!?」
「私が推薦すれば、大抵は大丈夫よ。」
「へーそうなの、力あるんだね。」
「あなたなら私立中学校受験者を教えていた実績もあるし、教室長の私が推薦すればまずオッケーよ。」
「教室長だったんだ!」
「一人ぐらい雇う権限をもらってるから、えへへ。」
「すごいね。」
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