第46話 樹里亜殺害を企てた張本人は一体誰なのか!木村





 2007年4月木漏れ日が溢れる穏やかな春の朝**⋆🌸。*・

 一見何の不満も無い幸せ一杯の木村輝樹かと思えば………?

 実は貴理子と遥斗には不満を募らせている。


 いくら…妥協で結婚したからと言えども、貴理子も37歳の時の結婚だから、とうとう子供を授かる事が出来ず、更には7歳年上の貴理子は只々仕事人間でお料理が上手い訳でもなく、オシャレをする訳でもなく、只々仕事で飛び回っているおばさん先生。


 庶民的な所が、親しみ易くて人気を集めているのだとは思うが、それも不満材料の一つなのだ。


 こんなおばさん先生のどこが良いんだ?日頃は産婦人科診療がメインの貴理子なのだが、器用な貴理子は水曜日だけ内科診療を担当している。その日は木村の休日に充てられるためだ。


 (俺の専門部署にも拘らず、水曜日には患者さんが日頃の3倍も多い)


 夫婦だから妻の優秀な事は誇りでもあり、喜びでも有る筈なのだが、木村は男としてのプライドが許さない。

(俺がこんなに内科の専門分野を勉強しているのに、何故産婦人科専門の貴理子の日に患者が多いんだ。おかしいだろう?)


 この近所も高齢化が進み木村のような冷たい美男子は、年寄りにはチョット取っ付きにくい。それでも、幾らハンサムでも親しみ易い人はいくらでもいるのだが、そこは人柄、木村は患者さんからすこぶる評判が悪い。険があり取っ付きにくい。


 その評判通り自分の事しか考えられない、自分勝手で冷たい男なのだ。それがそのまま表情に現れただけの事。


 勉強漬けの文学少女だった貴理子に、男を見る目など有ろう筈がない。ク-ルでシャ-プなルックスに惚れこみ、押しかけ女房同然で7歳も若い木村をゲットした。



 実はこの木村、とんでもない男なのだ。以前から付き合っていた、この病院の看護師麗美との間にコッソリ赤ちゃんを設けていた。


 今は麗美も、この山城病院を退社しているから、貴理子は全く気付いていない。

 山城病院の給料の殆どを、別宅の生活費に充てているとんでもない冷淡な男。


 木村にすれば他人の子供遥斗など可愛い筈がない。表向きは貴理子の夫で山城病院の副院長。


 貴理子のお陰で、分不相応なお金と地位を手に入れる事が出来た三文医者木村。

それなのに恩を仇で返すとは………。


 裏では貴理子より10歳以上年下の若い愛人と、2歳の赤ちゃんの父親なのだ。


 この後貴理子にはどんな不幸が待っている事か?



 この冷淡な木村の腹の中は、まず何の役にも立たない癇癪持ちの、金だけ法外に要求する金食い虫の達也の死。そして遥斗を手なずけて次期理事長に据え、この病院を貴理子と共に自由自在に操る事。


 その為にも、何より目障りなのが直系の樹里亜。


 祖父母は自分達の血の繋がった唯一無二の跡継ぎだから、絶対に樹里亜をこの病院の跡継ぎに据えるに違いない!


 そんな事になったら自分の居場所が無くなるのでは………?不安で押し潰されそうな木村。その為には樹里亜を亡き者に………。



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