第40話 話し合い




 可憐なコスモスが優しい花を付けてゆらゆら風になびいている今日この頃。


 弥生が樹里亜を連れて里に帰っていると聞き付けた陽介は、あんな双極性障害の異常な状態の達也と高齢の義母咲子を一緒に置いておいたらとんでもない事になる。そう思い心配になり弥生に電話を入れた。


「どうも達也兄さんが『お母さんが淋しがっている』からと言って、実家に戻りとんでもない事になって居るよ?」


「とんでもない事って何よ?」


「どうも?得体の知れないコピ-人間クロ―ン作りをしていたんだよ」


「そんな……そんな……そんな事が世間に知れたら病院存続の危機?私一旦家に戻ります」


「そうだね!それが良いと思うよ」

 

 こうして…早速、そんな異常な話を聞いて、取るものも取り敢えず達也が現在生活している実家に帰ったのだが、変わった事も無く一安心する弥生だった。



 ◆▽◆

 達也は、戻って来ないと諦めていた矢先に、突如帰って来た弥生に嬉しさ以上にこの実態を知られてはと思い、すぐさまマンションに引き返し事なきを得た。


 それでも…あの時は妻弥生に知られそうになって、これでは全て水の泡だと思い、早速仕事場の病院で陽介に話した。


「陽介…お袋が陽介に話が有るらしいから、一度家に帰ってくれないか?」


 そんなある日陽介が実家に帰って来た。

 だが…妻である弥生は、マンションに帰っていて実家にはいなかった。


 お義母さんが作ってくれた手作りの夕食を囲み、和気あいあいと楽しい食事が進んでいた。そして…陽介が話し出した。


「お義母さん元気そうですね。ところで話したい事って何ですか?」


「いえね?あなたが弥生に秘密にしているクロ―ン作りの話をしたらしいけれど、こっちだって弥生に暫く子供が出来なかっただろう?……もしこの家の長男に子供が誕生しなかったら大変な事じゃ無いの?もうクロ―ン作りを始めていたのに、運良く樹里亜が誕生してくれたんじゃないの?もう達也もクロ―ン作りは中止しているのに、あなたが話を大きくしてどうなるの?……だから…もうこれ以上、その話は吹聴しないで頂けないかしら?」


「エエ?僕としてもクロ―ン作りを止めてさえ頂ければ、何もいう事は有りません」

 陽介も安心して帰って行った。






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