第39話 祖母咲子と達也と陽介
2007年の6月16日の事故で樹里亜は、ひと月間入院。そして…祖父母と一緒に生活していた。
昏睡状態の樹里亜を治る見込みの無い状態で病院に置いてはおけない。もう現役引退している80歳の高名な内科・神経内科の名医、祖父勇が昏睡状態の樹里亜を豪邸で治療していた。その為祖母咲子が2か月間付きっ切りで看病する羽目になった。
2007年9月晴れて樹里亜は両親の元に戻ったが、達也の容態があまりに酷いので、樹里亜に何か有ってはと里に帰ったり達也の元に戻ったりの、繰り返しの日々が続いている弥生。
◆▽◆
時は過ぎた。
そんな……ある日、あれだけ陽介を散々酷い目に合わせた達也と義母咲子だったのだが、それでも弥生が里に帰ってからというもの、気掛かりになりお手伝いさんに電話した。
すると「とんでもない状況が続いているらしい」とのお手伝いさんからの情報を耳にした陽介は、心配になり居ても立っても居られず実家に帰った。
情報をお手伝いさんが他人に口外することはないのか?
【それは守秘義務があるので、口外すれば訴えられる事もある】
弥生が家を出てからというもの、度々様子伺いに達也宅に伺っていた陽介なのだが、そこには……おかしなことに、達也と義母咲子更には樹里亜とそっくりの少女たちが居るではないか?
これは一体………?
そして…忘れもしない、2016年異常だった暑さもずいぶん弱まってきた夏の終わり。
今まで見た事の無いガリガリにやせ細った【樹里亜B】が、息絶え絶えでベッドに横たわっているではないか、一体どういう事?ガリガリにやせ細り、それはまるでミーラ-のようだ。
義母咲子も、どこかしら挙動不審な異常な状態だ。この異常な家では何が行われているのか?
「この状態は……一体?」
「何を言ってるの~?私の宝に変な言い掛かりはよしてくれない!ねえ樹里亜!」
「…………。」
こんなミイラ状態の女性に応答など出来るハズが無い。
(一体この家ではなにが起こっているのか???)
そこで達也に聞こうと達也の部屋に向かった陽介は、我が目を疑った。そこには、13歳ぐらいの樹里亜が、達也と一緒に眠っているではないか?
(一体この家では何が行われているんだ?)
余りの衝撃に眠っている達也を無理矢理起こして「オイ!兄貴一体どういう事だよ!詳しく話を聞かせてくれ!」
「うるさいな~!何だよ~?」
「樹里亜が何人もいるじゃないか~?一体どういう事だよ!」
「…………。」
「何だよ?ハッキリ言ってくれ!とんでもない法律に反した事をやっているんじゃないだろうね?そんなとんでもない事をしたら病院の存続の危機だ。分かっているのか?」
「…………。」
「まさかクロ―ン人間!」
「止めてくれ!樹里亜が目を覚ましたらどうなるんだ。人聞きの悪いこというな!
そこに義母咲子が現れて。
「陽介さんあなたいい加減にしなさいよ!私が何も知らないとでも思っているの?達也の妻である弥生さんにチョッカイ出して、その挙句に達也があんなに楽しみにしていた子供が、あなたと弥生さんの子供だなんて……あんまりにも達也が可哀想すぎる」
「チョット樹里亜に聞かれては不味い!応接室で話そう!」達也の一言で応接室に。
「お義母さんそれは違います。僕は確かに弥生さんを愛していました。又今現在も愛しています……それは達也との夫婦生活が余りにも悲惨なので、話を聞いていたのです。確かに僕からも電話はしていましたが、でも……僕は兄貴の双極性障害を手助けするようになってからは弥生さんを避けています。医者としては自分の事より患者さん第一、それ以来男女関係は有りません。だから樹里亜は僕の子供では無いと思います」
「弥生もとんでもない阿婆擦れ女ね!達也があまりにも可哀想。達也あんな女なんかこっちから捨ててやりなさい」
「俺はもう弥生なんかどうでも良い……ただ…あの優秀な樹里亜を離したくないんだ。弥生が俺に愛想をつかして、樹里亜だけおいて慰謝料一切払わずに出て行ってくれたらそれが一番いいんだ!俺の最後の復讐……それは裸一貫でこの家を追い出してやる事だ……俺はお前と弥生の事で気が狂いそうだった。毎日、毎日、一睡も出来ない日が何日も続いた。こんな俺だが樹里亜は優秀だ!この病院は絶対誰にも渡したくない!戸籍上は俺の正真正銘の子供…それから…父も樹里亜は達也お前の子だと言っていた。人の噂に左右された俺だが……この病院の跡継ぎには絶対樹里亜を……それが俺の最大の願い!」
「…………」
その時、一瞬陽介の顔が歪んだ。
それはやはり、自分の息子遥斗を絶対に跡継ぎにと願っての事だろう。
それでも…樹里亜をこの病院の跡継ぎにと考えているのに、何故……?首を締めて殺そうとしたのか?
それは、陽介の子供だと言う噂話に思わずカ――ッ!となって。それが……双極性障害のゆえんだ。
「兄貴、何をメチャクチャな事を言っているんだ!弥生さんを愛しているからこそ、弥生さんにそっくりなクロ―ン人間樹里亜を作り出しているんでしょう?」
「俺は弥生を愛していた。だがお前との裏切りの連続に我慢の限界を超えて、愛が憎しみに変わったのだ!その代わりにコピ-の若い弥生【樹里亜】を生産し続けて愛しているのだ。あんなに愛していた弥生がお前と淫らな関係を行っていた事が到底許せない!お前ら2人が憎い!」
「本当よ!達也があまりにも可哀想。あなたが家にやって来たのが全ての間違いなのよ。この家で行われている事を口外したら只じゃ済まないから!私だって達也がこんな病気で夢も希望も無い状態。ちゃんとした孫だけが生き甲斐なの。どんな事をしても生れなかったらクロ―ン人間を作るしかないでしょう?」
「それは勘違いも甚だしい。僕と弥生さんの間を引き裂いたのは兄貴の方じゃないか?それから兄貴では病院の理事長は鼻から無理でしょう?双極性障害の兄貴に働ける病院なんてありません。俺と貴理子と木村君有っての病院だ。ろくに働きもしないで多額の給料払ってやっているのに言い掛かりもいいとこだ」
その時カ————ッ!となった達也が、机の引き出しからナイフを取り出し陽介目掛けて!
「コノヤロ————!」
祖母咲子の死を待っていたかのように、実は誰かの手によって母の死のわずか1ヶ月後に達也は殺害されていた。
(エエエエ————!じゃ~!11月に仕事に復帰した達也は誰!!!)
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