第30話 弥生の心理!




 1988年6月に晴れてジュンブライド6月の花嫁となった弥生24歳***


 雨に濡れて一層生き生きと咲く紫陽花。


 白い花が青くなったり、青い花が深い青になったり、また紫やピンクに七変化。


 まるでまやかしの……ような……?


 そのため「七変化」「八仙花」と呼ばれることもある紫陽花。


 何とも…紫陽花の花言葉は「移り気」「心変わり」「高慢」「冷淡」などなど。


 こんな花言葉が乗り移ったかのようなこの4人の恋模様なのだが???


 実は弥生も(結婚している身の上で陽介と関係を持つなんて?)そう思われがちだが、そこにはそうならざるを得ない事実が隠されている。


 医学の道を志す人々の中には少なからず精神を患う人もいる。

 例えば頑張り過ぎた結果、能力の限界を遥かに超え、精神に異常をきたしてしまう者達。


 達也も自分の能力では到底無理だと、薄々学生の頃から感じ始めていたのだが?あの優秀な陽介にだけは、絶対に負けたくない。また親の期待に応えようと頑張り過ぎた結果徐々に異常が……?勿論一概には言えない。遺伝的要因も十分に考えられる


 


 自分の能力に限界を感じ他業種の職業に逃げたかったのだが、家族の要望に応えるために無理をした結果達也は、双極性障害を患ってしまった。


 躁状態では、気分が高ぶって、まったく眠らずに延々と罵倒したり話しかけたり動き回ったりと、活動的になる。そして…ギャンブルにハマり法外な金を散財したり、高額のローンを組んで買い物をしたり、突然の酷い暴力もある。


 それに飽き足らず、また陽介と浮気をするのでは……?と付きまとい、電話に盗聴器まで取り付ける有り様。


 一方、うつ状態では、一日中憂鬱な気分で、眠れなくなったり、または逆に眠りすぎたりする。大好きだった趣味やテレビ番組にも関心がなくなったり、食欲が低下し、おっくうで身体を動かすことができないといった症状もみられる。


 病院の方は達也と弥生の結婚から2年後に、結婚した陽介の妻副院長の貴理子に任せっきり。


 実は貴理子の実家は産婦人科病院。

 優秀で奇異な存在の貴理子は産婦人科と内科を掛け持ちしている。


 こんな達也なので弥生は睡眠不足に加えて、ストレスが頂点に達している。

 また、ストレスに加え身の危険を感じて、里帰りをした事も一度や二度ではない。


 こんな筈ではなかった。後悔しきりの弥生は毎日泣きはらしている。



 そして…陽介が休みがちな達也を心配して、達也のマンションを訪ねて来たのがきっかけで、連絡を取り合う中になって居た。


 達也はうつ状態の時には、20時間位眠るので、この時とばかりに陽介に相談する。弥生も必死だ。


 こんなみっともない話し誰に相談出来ようか。

 達也が寝ているその隙に、陽介に相談を持ち掛けている。

 陽介もあんなに愛した弥生が、こんな酷い状況に置かれて気の毒で見て居られない。

 そんな何とも痛ましい状況下弥生も、すがるのは陽介しかいない。いつの間にか、いつも同じ空間で相談事を度々聞いている内に、また寄りが戻ってしまった。


 弥生にしてみれば尋常な精神状態ではない。

(こんな精神状態の男とは一日でも早く別れたい。誰にこんな事相談できるの?親にも相談できないし、心配させたくない。だから…陽介との密会を知られても仕方が無い。躁うつ病は自殺する人も多いらしいが、いっその事自殺でもしてくれればどんなに楽か!それでも…子供でも出来れば、また道は開けるが、造精機能障害の為に最後の望み、子供も授かる事が出来ない。こんな状態は絶対耐えられない)


 弥生はこんな血も涙もない女に変貌してしまった自分を、恥じる事すら忘れている。それだけ達也の異常な行動や言動に、追い込まれている。





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