第23話 教祖アンドレ-


 

 昔の名残のままに、この美しい花の都パリで、2014年の夏休み期間中に樹は夢にまで見たあの美しい樹里亜に会う事が出来た。


 だが?最後に見たあのウ-ル-ズ修道院に併設された病院、研究所で、何故か?樹が侵入してから急に建てられた高いフェンスと、その上に巻き付けられた有刺鉄線。何か危険な胸騒ぎを感じる樹。


(今樹里亜には何かとんでもない事が起こっているに違いない?)そう思わずにはいられない。数週間前にはあんなに若さに満ち溢れた、ハツラツとした、美しい女性だったのが、今ではあんなに瘦せこけて……今にも息絶えそうな風貌に代わっているではないか、一体どうしたのか?また、あの苦しそうなうめき声は誰だったのか……)



 1975年12月フランスの有名狂人作家アンドレ・トマが設立した新興宗教団体『アンドレィアン・ムーブメント社』


 この宗教団体は2000年にクロ―ン人間製造会社『コピ-エイド社』を設立。


 2002年には人類初のクローン・ベビーを誕生させると発表し、メディアを騒がせた。


 人類はUFOに乗ってやってきたエイリアンのクローンだと信じる新興宗教団体、アンドレの教義では、はるか昔にエイリアンが地球を訪れ、クローニングによって地上を埋めつくしたことになっている。


 また、この教団の勧誘方法は以前から問題になっていた。


 若い美女達を餌に、セックス勧誘をしていると評判の社会的批判を浴びている胡散臭い教団。教祖は「官能的要素を愛する」と発言して止まないとんでもないくせ者だ。


 その上で、裸体や性は非常に純粋で美しく尊いものだという教義のようだ。


 自分の中の女性的部分をもっと大切にすれば、世界中で争いがなくなると、アンドレは説いている。


 また不思議なことに、アンドレに、信者が絶対服従だということだが、セックスもアンドレがしたいと言えば、いつ何時でも喜んで服従している。


 こんな好き放題な教義を振りかざし、自分の意のままにする教祖アンドレ。

 そこがカルト団体と呼ばれる所以なのだ。


 そして何故?樹里亜が遥々フランスにやって来たのかと言うと?


 実はこの『アンドレィアン・ムーブメント社』活動拠点は日本にも有り、大規模に展開している。


 そこで以前から『コピ-エイド社』の噂を聞いていた達也は、こっそりとフランスにやって来て、多額のお金を支払って9歳の樹里亜の治療目的の為に来日していたのだ。

表向きは弱者救済、精神の浄化をかかげた誠に善良な慈善団体に移るが、実はその裏ではとんでもない事が行われていた。


 まだあの当時のクロ―ン人間の成功例は稀だった。

 教団事態『コピ-エイド社』設立に多額の費用も掛かっていた。


 最初の内は愛するペットの複製で結構な収益を上げていたのだが、それに飽き足らず人間の欲とは底知れないもの。


 失った愛する人々をクロ―ンとして甦らせる。


『この事業で膨大な財産をこの手に!』と目論んでいる。


 教祖アンドレは若い美女達を周りにはべらせ、法外な金を湯水の如く使っている。それは美しく飾り立てれば立てる程、美女目当てにとんでもない大金持ちを、この教団に迎え入れる事が出来るからだ。


 寄付金だけでも莫大な資産になるのだ。


 また、教祖アンドレ事態も美しく洗練された魅力的な女性を連れて歩く事で。ステイタスの1つとなっていた。また、抱くのにも美しいという事は一層の楽しみ。


 クロ―ン人間複製に懸命に取り組んでいるが、そう簡単には行かない。


 そこで考えた苦肉の策が(この世界でどれくらいの人々が不治の病で苦しんでいる事か?その人々を救済するのも我々の務め)


 そして失敗作の、もう手の施しようのない、余命いくばくもない、クロ―ン人間の臓器を闇の組織に半値で売りさばいている。結局のところ救済だ何だかんだと言っているが、要はお金。


 お金に目が眩んだ教祖アンドレは益々???


 実はこの臓器売買達也も薄々……?樹里亜はどうなるのか……。





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