第25話 陽介と貴理子の離婚



 あの日のカーセックスの日以来、貴理子の様子が変だ。


 目がキラキラ輝き、まるで大切な宝物を見つけた童女のように浮き浮きと、それはまるで以前とは全く別人格のようになっている。


 それと言うのもあの若い木村とあれ以来、頻繫に陽介の多忙な事を良い事に隠れての蜜月の日々が続いている。


 木村の実家やホテルなどで陽介の目を盗んでの密会の日々。

 それで飽き足らず、木村は昼休みのほんのわずかな時間にまで求めてくるようになって来ている。


 若いとはこういう事だ。血気盛んな木村は我慢が出来ない。

 わずかな時間でも貴理子を求める。


 封鎖された病室でカーテン越しに、休憩時間のわずかな時間にまで2人は、隠れて欲望のままに激しいセックスを楽しんでいる。


 貴理子はこれを真実の愛だと信じて疑う余地など無い。


(私を愛しているからこそ、こんなにまで求めてくれるのね。私だってこんな幸せな時間はないわ。求めに応じれるだけ応じれば今度こそ木村を繋ぎ止めれる!)


 木村の野望とは裏腹に、すっかり木村の虜になってしまった貴理子は1997年6月の大雨の日に陽介と離婚した。


 陽介と貴理子の結婚生活の怨恨を洗い流すかのような、そんな大雨の日に2人は別れた。


 離婚の条件には次のような条件が、貴理子から突き付けられた。

 遥斗の親権は貴理子が持つ。

 内科副院長には木村輝樹。

 産婦人科の副院長には今まで通り貴理子が。

 そして多額の慰謝料を手にした木村と貴理子は、その半年後に無事ゴールインした。


 街中が色とりどりの電飾のイルミネーションでキラキラ輝き、それはそれは美しい幻想的で神秘的な世界に彩られたクリスマスイブの日に、2人は晴れて夫婦となった。


 ◆▽◆


 一方の達也は40歳でやっと授かった愛娘の樹里亜が可愛くて可愛くて仕方がない。もうメロメロ!


(だが…その一方で造精機能障害の俺に子供って……?そういえば…あれだけ俺の目を盗んで陽介と……ひょっとして陽介と弥生の子供と言う事も考えられる……?DNA鑑定をして貰わないと……)


 こんな不安な状況だと言うのに……謎の封書が……?

 そして…法科学鑑定研究所に依頼した。


 すると99,9999978パ-セントの確率で、達也の子であることが立証された。


 不安も解消された達也は一安心。

(俺が陽介と弥生を無理矢理引き裂いたのだから)とは思っては見ても、許すことが出来なかったが、正真正銘の実子も生まれた事だし、もう少し妻弥生を大切にしなくてはと、強く心に誓うのだった。



 ◆▽◆


「フフフフフフフ上手く騙したな~!」


「本当に!」



 樹里亜が生まれた8ヶ月のちの、1999年2月真夜中の極寒の東京。

 精神に異常をきたしたのか?もう遥か以前から異変をきたしていたのか?


「ああああああああ————————ッ!眠れないああ~!どうした事だ?気が狂いそうだ————!」


 真夜中に裸で外に飛び出した達也。


 達也は以前から徐々に精神に異常をきたして……。



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