第17話 樹里亜誕生
全てを失っても愛さえあれば何も怖いものなどない。
「弥生俺は今でも弥生が⋆◍。*✧💛。✧♡」抱き寄せてそして* * *
「ダメよ~*⋆⋆。✧♡。💛✧♡こんな事~ああ~~💋あああ~愛しているわ~⋆。⋆*。」
どうしても忘れられなかった陽介と弥生は、秘密裏によりを戻して隠れて付き合っている。
何も知らない達也は仕事に造精機能障害の治療に、必死に取り組んでいる。
ただ?陽介の世話で陽介のマンションに入り浸りの、弥生の帰りが遅いのが気掛かりで仕方がない。まあ父の言い付けだから仕方ないのだが……。
ある日余りにも心配になった達也は、流石に土日は家にいるか、病棟の貴理子の見舞いに行くか、に決まっている。まさかとは思うが、一度こっそり家を覗いてみようと陽介のマンションに出掛けた。
暫くそのマンションを見張っていると、小1時間ぐらいして2人が出て来た。
そして後を付けた。
すると2人は車を走らせ高級ホテルで昼食を楽しみ、その後スイ-トル-ムに消えた。
達也は余りの出来事にショックで放心状態。到底現実とは受け取れない。
弥生が帰宅するまでの時間自分が一体何を見て、何をしていたかも思い出せない程ショックで時間だけが過ぎ去っていた。
その時マンションのドアの音が ””カチャ””とした。仁王立ちになって待ち構えていた達也が、鬼気迫る今にも殴り掛かって来そうな形相で言い放った。
「お前俺が知らないとでも思っているのか?今日陽介のマンションに行ったんだ。すると仲良く笑顔で出て来て、お前達どこに行ったんだよ。ホテルに入って行く所をしっかりこの目で見たんだ。もう噓は言いっこなし!どういうつもりだ?」
「ウウウウッ( ノД`)シクシク…ごめんなさ~~い!もうお別れしましょう」
「なんだと————!どうせ陽介と一緒になる魂胆だろう?子供が出来るってのに、お前と結婚する訳ないだろう?」
「それでもいいの!あなたが私と陽介の間を引き裂いたんでしょう?また貴理子さんも私達を引き裂く為に、まだ妊娠もしていなかったのに噓を付いて、私達を引き裂いたじゃ~ないの~。もう別れてお願い!」
「そんな事は絶対許さん!」
「いいの。私は出て行くわ!」
「絶対ダメだ!そんな事はさせない。出て行くんだったらお前を殺して俺も死ぬ」
「やれるものなら、やってごらんなさいよ!」
その時包丁を握り弥生目掛けて突進して来る達也。弥生は寒空の11月の夜更けに一目散に外に駆け出した。
暫くあても無く彷徨い、コートでも取りに帰らないと、こんな夜更け風邪でも引いたら大変!コートを取りに家に帰った。
すると達也が玄関で血だらけになり倒れているではないか……。
◆▽◆
達也は、陽介と弥生の幸せそうにホテルに消えて行った2人の、あの姿が頭から離れない。
(アアアア……陽介にだけは渡したくなかった。一番渡したくない陽介なんかと……何故?俺じゃ無く、寄りによって陽介なんだよ!……俺の目の前であんな姿を見せ付けられて。許せない!許せない!許せない!アアアア……腹立たしい!陽介が憎い!いつだって良い所をかっぱらいやがって。あああああああ……憎い!憎い!憎い!) 考えれば考えるほど腹立たしさが増幅して、抑えられない達也なのだ。
この腹立たしさと苦しみから、一刻も早く逃げ出したい一心の達也。
あの2人が仲良くスイ-トル-ムに消えた映像が頭から離れない達也は、頭が冴えて眠ろうと思えば思う程眠れない。
それなので徐々に量を増やし睡眠薬を飲んだせいか、水を飲もうと冷蔵庫にキープしてあった水を飲もうと冷蔵庫に立った。だが…睡魔には勝てず、その場でコケて大量の出血をしてしまった。
出血の方は治まったが、睡眠薬を大量に摂取してしまったので、中枢神経の働きが低下し、呼吸が止まり途中で蘇生したので、無酸素脳症の後遺症が残る可能性が高いと診断された。
『成人の場合は3 - 5分以内であれば注意力障害、判断力低下、協調運動障害
などが出現することがあるが、後遺症を残さず回復することが多い』
とんでもない事に、その後遺症で協調運動障害の後遺症が残ってしまった達也。そんな達也をどうして捨てれようか。甲斐甲斐しく世話をする弥生。
それでも弥生が出掛けようとしようものなら、運動能力の低下が著しい足元もおぼつかない。そんな身体をよろよろしながらも近付き、擦り寄り、弥生の身体を乳房を股座をいじくり回して弥生が嫌がるのも聞かず言い放った。
「ああああ~~**・ヤメテ~!止めて下さい!」
「お前は…俺がこんな身体だから、それを良い事に、また陽介に抱かれに行くんだろう。アアアア……俺がこんな身体だから~。それを良い事にまた陽介とウウウウッ(´;ω;`)ウゥゥ」嫉妬に狂い、いじけて益々手の付けられなくなった達也。
こんな状態の達也を捨てて出て行く事も出来ず時は過ぎた。
◆▽◆
1998年9月中旬
爽やかな秋風が心地よい季節となり⋆*⋆*
秋空にいわし雲が浮かんで……夕焼け空に赤トンボが群れをなして飛んでいる。
造精機能障害の為に、中々子供を授かる事が出来なかった達也と弥生に、待望の娘樹里亜が誕生した。
達也は念願かなって42歳にしてやっと子宝に恵まれ有頂天、その喜びようときたら尋常なものではない。
1年365日の全てを、樹里亜ちゃんに注いでいると言っても過言ではない。
こんな一見幸せいっぱいの家族に見えるのだが……?
※造精機能障害:精子を造り出す機能自体に問題があり、精子の数が少なくなり動きが悪くなり、ただしく精子が作れない状況。
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