第14話 達也・陽介・弥生・貴理子




 達也は夢にまで見た弥生との結婚で、夢のような毎日を送っている。


 陽介を陥れるだけ陥れてやっと手にした弥生を、まるで宝物のようにそれはそれは大切にしている。


 一方の弥生もあんなに愛した陽介があんな卑劣な男だったとは……?


(母の病気の事や陽介が昏睡状態におちいった時に、親身に相談に乗ってくれた達也を悪者にして、その挙句、私と言うものが有りながら隠れて女を作り、妊娠させたなど到底許せない!……だが、一方では本当は陽介が言っていた通り、全て達也が仕組んだ事だったのでは?……また貴理子の事だってまだハッキリと分からない。あの時は貴理子という女性と、肉体関係が有っただけでもショック極まりないのに、赤ちゃんまで出来たと聞いてショックの余り頭が真っ白になり、一刻も早くこの苦しみから逃げ出したかった。忘れたかった。その時に、達也の度重なる熱いプロポ-ズを受け入れてしまった。本当にこれで良かったのか?)


 何故そんなうがった、考えをするようになったかと言うと?ある日陽介の母美智代が里帰りをして帰って来た日の事だ。お茶を出そうと、縁側伝いにある和室に行こうと縁側を歩いていると「お父様あんまりです。許せません!」


「本当だ!達也が悪い!大量の睡眠薬と焼酎を混ぜて飲ます等とんでもない。医者の卵たるもの、そんな事は十分に知っている事。それを……」


「お父様、陽介も達也が怖いと言っています。子供の頃、野良猫やウサギの首を、親に見付からないように、こっそりと切って殺していたらしいですよ~?」


「本当に困ったやつだ。そう言えば昔買っていた猫のあずきも、首を切られた事が有った。あれはひょっとして達也の仕業かも知れない。(病院の跡継ぎだから何としても勉強して貰わないと)と、思い期待し過ぎたせいもあるんだ。あの子の器も考えずに……それであんな子に……」


 一方の陽介は弥生を失って失意のどん底。


(何故こんな事になったんだ?俺と弥生はいずれ結婚しようと誓い合った仲ではないのか?弥生が大学2年の夏休みに軽井沢にドライブした事があった。山道が決壊してその日は等々家に帰れなくて、初めて2人でホテルに泊まり永遠の愛を誓ったではないか?あれは……あの時の誓いは、噓だったのか?弥生何故、俺を信じて付いて来てくれなかったんだウウウウッ(´;ω;`)ウゥゥ)陽介は毎日毎日自問自答の繰り返し。


 余りの陽介の落胆ぶりに、さすがの貴理子も自分のした事の大きさに反省しきり。


 陽介をどんな事をしても、どんな手段を使っても、失いたくない為に、2人を強引に引き裂いてしまった事を後悔している。


(陽介だって私と同じように、弥生をどんな事をしても失いたくなかった筈。それを自分可愛さに無理矢理引き裂いて……誰が見たって私と弥生さんじゃ……月とスッポン。

私を愛してくれる筈など最初から微塵も無かった。残念だけど……それを自分のエゴで、無理矢理自分のものにしようとして、陽介をあんなに傷付けてしまって……それでも良いの。私のものになれば、いつか愛してくれる。愛し合える時が来るに決まっている)


 貴理子は、毎日毎日陽介のマンションを訪れ、壊れたラジオのように、弥生の事を繰り返す陽介を、立ち直らせようと必死だ。


 また…慣れない手付きで掃除、洗濯、手料理と必死になって尽くしている。


 その甲斐もあり、達也と弥生の結婚から2年後の、丁度紫陽花の花が見頃の6月中旬**紫陽花の咲き誇る教会で、陽介と貴理子は結婚式を挙げた。


 だが……。





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