第12話 出会い!



 2008年✕月某日***


「アアアア……駄目だ!失敗だ!遺伝子発現に異常が?」


「仕方ない!焼却炉で処分しておけ!」


「可哀想に!」


 どうも……クロ―ン人間を作り出そうとしているらしい。


 ◆▽◆


 2009年4月初旬***

 

「目黒川の桜並木」は、東京の桜の名所として知られており、池尻大橋駅付近から東急目黒線下の亀の甲橋まで約4㎞に渡り約800本のソメイヨシノを中心とする桜並木が続き🌸⋆*・。🌸


 中目黒駅から上流では、桜が左右の川岸からアーチ状に川を覆う何とも美しい情景。また…宵闇に幻想的に浮かび上がる桜のライトアップや、桜まつりも人気の目黒川の桜。


 その幻想的な宵闇桜を後に、小1時間車を走らせた奥深い何とも言えない不気味さを漂わせるある場所で「元気に成長しているな!」


 一体誰に言っているのか?


 一体ここは、どこ?


 ▲▲▲


 2014年大学2年生の樹は夏休みを利用してパリにやって来た。


 名立たる芸術家たちの絵画を目の当たりに堪能し学ぼうと、芸術の都パリ、ル-ブル美術館に、樹の姿が有る。


 その日の大半をル―ブル美術館で過ごした樹は、夕方の5時半くらいに美術館を後にシャンゼリゼ通りに有る、お洒落なカフェテラスでお茶をしている。


 しばらくパリのセーヌ河岸の歴史的建造物に、見入っていると*⋆**⋆


 いつの間にか中世に引き戻され、今にもあのベルサイユのばらの主人公男装の麗人オスカルが、あの名ポ-ズ。オスカルと言えばあのポ-ズ。ブロンドの美しい長髪に真っ赤バラを口に加えた、凛々しくも美しい姿のオスカルが、時空を超えてふと現れたようなそんな感覚に襲われる樹。


 そんな世界観に浸っている樹だが……。


 暫くすると向かいの歩道を夏真っ盛りだと言うのに、長袖のワンピ-ス姿に目深に帽子を被ってマスクをした、異彩を放つ女性を発見。


 まるで姿を見られては困ると言わんばかりの格好で歩く女性。するとその時強風にあおられて帽子が飛んだ。


 樹はハッと目をやった。 (アアアア!あの娘は?)


 すると父親らしき男と樹里亜らしき女性は、近くのレストランに入って行った。


(アアアア……あれは……あの娘は夢にまで見た忘れられない……あの時の美少女?でもはっきりとは分からない。あの時の少女であってほしい。そして今度こそ連絡先の交換でも出来れば……)と、急いでそのレストランに向かった。


 そして…レストランに入り様子を伺っていると、室内なので帽子とマスクを外した。


(アアアア……やはり、やはり、彼女だ。間違いじゃない!)樹は嬉しくて嬉しくて天にも昇る思いだ。



 一方の樹里亜は父親らしき人物と一緒に、遥々東京からやって来て、何やら如何わしい宗教団体の人々と真剣に話し合っている。


(何故樹里亜ちゃんは、こんな真夏にも拘らず、まるで姿を見せたく無いと、言わんばかりの格好をしているのか?又何故わざわざこんな海外の宗教団体に来なくてはならないのか?日本にだって数え切れない程の宗教団体が有る筈なのに……)


 それはどういう事かというと……色々な愛憎劇・陰謀・研究開発の渦に巻き込まれた樹里亜は、むやみやたらに日本では外出できない。その為に森に隠されていた。


 例えフランスと言えど、樹里亜ちゃんは外国人という事もあり、ただでさえ目立つのに、これだけの美貌非常に目立つ。


 その為に真夏でも完全防備で出掛けている。


 樹は樹里亜がトイレに立ったチャンスを見計らって、勇気を振り絞りコッソリ声を掛けた。


「あっ日本人ですか?僕は日本から来たのですが……ベルサイユ宮殿はどこにありますか~?フランスは初めてですから……分からなくて?日本人もそんなにいないので不躾とは思いましたが……」


 するともう高校生か?大学生?にしか見えない大人の女性なのになんと……?


「ワ カ ラ ナ イ?」


 ただその一言だけを、やっと何とかタドタドしく喋れるくらいなのだ。


 樹は夢にまで見た憧れの女性に一体何が起こっているのか?


「こちらには、観光でお見えになったのですか?」


「チッ違う!また痛いことを……コッ怖い……タスケテ————!」


 身体は立派な大人の女性なのに、まるで幼児のような喋り方しか出来ないこの樹里亜は、一体どんな病気なのか?


 それとも知的障害があるのか?


 この樹里亜の鬼気迫る目を見て樹は、咄嗟に樹里亜の手を引っ張り外に連れ出した。樹は先はどうなろうと、この夢にまで見た女性を助けたい一身で、パリの街を駆け抜けて行った。








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