第10話 弥生と達也と陽介
2009年2月今年最大の寒波が押し寄せ、都内だというのに氷の結晶がフロントガラスに、神秘的な霜の華を散りばめ、窓ガラスには厳寒の氷のアートを、自然が生み出した何とも言えない神秘的で芸術的な曲線で描き出している。
そんな寒波が押し寄せたある一室で・・・
「オオオオオオ————ッ!やっと!………アア!やっと!やっと!芸術作品を作り上げる事が出来た————!」
「そんな事!キッ危険だ!」ある一室で誰かが話し合っている。
何か~?危険な……?
▽▲▽▲▽
1980年5月新緑が冴え渡る青空に白い雲。
母が晴れて退院の日を迎えて早一週間。
陽介と弥生の姿が昭和レトロな空間の喫茶店に有る。
弥生はあの当時の若者達のトレンド「ハマトラ」「横浜発のファッション」スタイルのポロシャツに赤のトレ-ナ―、深緑と茶色のチェック柄ミニスカ-トのカジュアルなファッション。
スラリと伸びた長い足に、あの当時流行った聖子ちゃんカットの何とも可愛らしい弥生。
一方の陽介はあの当時流行ったベルボトムパンツとブラウンの革ジャン、首にはさりげなくスカ-フを巻き付け、あの当時流行った西城秀樹さながらのサーファカットの、当時の若者そのままのファッション。
長身に加え長い足の陽介は、モデル雑誌から飛び出して来たのでは?と思う程の爽やかイケメン。余りの美男美女ぶりに2人が喫茶店に入って来た途端に、一瞬ざわめきが!そのくらい素敵なお似合いのカップルだ。
喫茶店ではバックグラウンドミュージックに、流行り歌が流れている。
あの当時流行ったチュ-リップの名曲『虹とスニ-カ-の頃』*♪⋆*🌈 ♬わがままは♪オオオ♬男の罪♪オオオ♬それを………♪**⋆。⋆ *
2人は笑っていたかと思うと、時には何やら神妙な面持ちで話し合っている。
それからというもの、2人は徐々に良き相談相手として、また気の合う友達として付き合い出した。
まだデ-トとまではいかない2人。それでも時間が合うと陽介が愛車セリカで待ち合わせ場所までお出迎え。
一方の達也も実は……あの時の美少女弥生が忘れられないでいる。
2人が付き合っている事など露知らず、頭の中はあの少女の事で一杯。
今年やっと私立大学医学部に合格したばかりの達也は、勉強そっちのけで弥生の
事で頭の中が一杯で、何も手につかないで只々妄想にふけっている。
◆▽◆
ある日の日曜日、陽介がお友達を家に連れて来た。
なんと……それは弥生ではないか?
その夜達也は「陽介チョット俺の部屋に来い!」
「兄貴どうしたんだい!」
「お前あの少女と付き合っているのか~?」
「まあ?お友達として!」
「そうか~?俺も今度一緒に連れて行ってくれよ!」
「嫌だよ~!兄貴なんか!」
「お前そんな事言うんだったら、お袋に言い付けてお前が大学に行けなくしてやるからな。そればかりか追い出してやる!」
「言えばいいじゃないか。おじいちゃんに言ってやる!」
「ダメ!ダメ!おじいちゃん癌だから絶対ダメ!」
「もう~!仕方ないな~?いいよ!」そして…一緒に行動するようになった3人。
◆▽◆
付き合い出して1年チョット経った夏休み期間中に「弥生のお友達も誘って長島スパーランドに1泊2日で行こうよ」と兄達也が提案して来た。
弥生も3年生、受験の追い込みに疲れ切っている。気分転換の為にも休息が必要。
そして快諾した。
お友達の佳代子も誘って、アトラクションのコークスクリュ-やシャトルループ、更にはバイキングと名立たるアトラクションを満喫出来た弥生は大満足。
だが…その夜達也が弥生に「話がある!」と誘い出した。
「あのさ~?弥生のお母さん……また癌が再発したよね~?俺が親父に頼んでやるから心配するな。最先端医療で絶対直してもらうから……最善を尽くしてもらうから心配いらないよ。俺の力はあの家では絶大だから心配するな!」そして抱きしめて安心させて強引に唇を奪った。
弥生は達也に対して強く拒絶をしたが、その反面、拒絶する以上に感謝の気持ちが頭をもたげて、唇を許してしまった。
達也のお陰なのか?余命宣告を受けていたにも拘わらず、一時退院の許可まで出た。それでもあれ以来、達也を避けている弥生に不安が一杯の達也。
「きっと俺じゃなく陽介の事が好きだから、あんなに親切に色々言ってあげても受け入れてもらえないんだ。俺はどうしても弥生を自分だけのものにしたい……あの優秀な陽介にだけは絶対に渡したくない。あの陽介が憎たらしい!俺が4浪もしてやっと2流私立医大に入ったのに、あいつは現役で国立医大に合格。その差は歴然!ああ……これでは、全てあいつに奪われてしまう……弥生だけは絶対に渡すものか……」
そして達也は恐ろしい事を企てた。
ある日陽介を自分の部屋に招いて「たまには兄弟水入らずでお酒を飲もうよ!」と誘い出し、アルコールと規定量の3倍程度の睡眠導入剤を混合して飲ませた。
薬と酒類を混合して飲むと死に至る事もある。するとやはりバタリと倒れて昏睡状態に陥った。
だが、殺人者にだけはなりたくなかった達也は、父に連絡して何とか回復出来たのだが?一時は危険な状態だった。
弥生は大好きな陽介が危険な状態と聞き付け、毎日病院に見舞いに訪れている。
それを良い事に「俺が父に連絡しなかったら陽介は多分助からなかったと思うよ?俺が付いてるから大丈夫さ~!」
弥生も陽介を助けたいばかりに、達也と頻繫に連絡を取るようになって行った。
弥生は、以前にも達也に助けて貰った事を、片時も忘れた事が無かった。
それは、母が余命宣告を受けていたにも拘わらず、一時退院の許可まで出た時の事だ。だから…達也には感謝してもしきれない。
そこに陽介まで助けて貰って、徐々に感謝から信頼に代わって行った。
そこに……ある事件が起きる。
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