第6話 美少女の謎
樹(いつき)は子供の頃から父親譲りのせいか、絵画だけは誰にも負けない。その為都内の私立総合進学クラス美術コ-スのある、聖徳学園高校に入学出来たのだった。
一般教科は最底辺だったが、絵画だけは父親譲りで群を抜いた存在。その為苦手な一般教科に力を入れて、寝る間も惜しんで勉強したおかげで、日本屈指の武蔵野美術大学造形学部に見事合格出来た。
晴れて大学生となった樹は、希望に胸を膨らませて(これからは素晴らしい未来が訪れるに違いない!絶対に訪れる!)そう確信して疑う余地など微塵もなかった。
ただ、母に対する疑念と森の中のあの美少女の事だけは頭から離れない……。
◆▽◆
受験も終わり夢の第一歩を踏み出した樹は、未来に一筋の光明が差した。そんな明るい未来に夢踊る毎日を送っている。
それでも…あの少女の事が片時も忘れる事が出来ずに、頻繁にあの森の中に出掛けているのだが……一体どうした事だろう?最近は全く見掛けない。
どうしても、あの美少女に会いたくなった樹は、いつも不思議に感じていた謎の怪しい建物(ひょっとしたら……あの建物のどこかにあの美少女?美女?が、いるかもしれない……あの高い塀によじ登ろう)そう思い、コッソリ夜中に壁伝いに中途の隙間まで登った。
そして…どうしても美少女の手がかりが欲しかった樹が、明け方までそこで隠れて様子を伺っていると、看護師姿のユニフォームに身をまとった女性が、慌ただしく病人をストレッチャーに乗せ去って行った。
(あれ~?……あの顔は確か……あの美女?……それでも…何故病院でも無いこんな無機質で、一般社会とは完全にシャットアウトされた、こんな閉塞的な場所に閉じ込められているのか、薄暗い細い廊下の不気味な秘密基地のようなこんな場所に……?それも…まるで隠すように……何故、閉じ込められなくてはいけないのか?……一体どんな目的が有るのか?)
若い看護師姿の女性がストレッチャーに乗せて、辺りを警戒しながら、いかにも意味ありげな表情を浮かべ走り去った。
一方の、ストレッチャーに乗せられた、あの美女も一瞬だが、不安で押し潰されそうな、何とも言えない悲壮感を漂わせて去って行った。
するとその時、あの病院で見たガッシリした若い男が、塀の脇に姿を現した。
(危険だ!)咄嗟に塀の内側に隠れた樹は、間一髪で難を逃れる事が出来た。
一体ここは何をしている場所なのか?
樹はこの謎を解くべく悪友利也に相談。
だが?利也はあいにく浪人の身、むやみやたらと抜け出すことも出来ずに、数週間経ったある日の事、やっと2人であの森に来る事が出来た。
「ようしあそこから侵入してみよう!」そしてあの夜中に登った隙間から2人は内部に潜入した。
するとある一室から、妙な声が微かに聞こえて来た。
「お前が悪い樹里亜をこんな姿にして許せない!」
男とも女とも言えない低い声で怒鳴り散らす声が、どこからともなく聞こえて来た。
(あの少女は樹里亜と言う名前なのか~?)2人はやっと知ることの出来たあの美少女のほんの些細な情報にも心躍らせている。
しばらく隠れて聞き耳を立てていると今度は「何故こんなに年老いてしまった~?可哀想に~!グウウウウ~!」すすり泣いている男の声がかすかに聞こえて来た。
一体ここでは何が起こっているのか?
その時またしても、あのガッシリとした男が、ある一室から出て来た。
その時に、あの日見た看護師さん風の女性が、何やらその男に重要な話でもあるのか神妙な面持ちで「この子も、もう助からないかもしれない?……………」
延々と何か……話しているが、最初の言葉だけは微かに聞き取れたが?後の言葉は全く聞き取れない。
だが……その時部屋の中の様子が少しだけ見えた。
何と人工呼吸器に繋がれた今にも息絶えそうな赤ちゃんが見えた。一体病院でもないのに、ここでは何が行われているのか?恐怖と不安で押し潰されそうな2人。
瓜二つの少女が、ある時は幼児に逆戻りしたかと思いきや、すると今度は成長し過ぎた美女に変身を遂げたりと、更には人工呼吸器に繋がれた、今にも息絶えそうな赤ちゃんが居たりと……?何かしら想像も出来ない恐ろしい、人体実験でも行われているのだろうか……?
恐怖心で一杯の2人。
すると今度は、今まで一度も見た事も無い中年の大柄の男が、2人に気付いて追いかけて来た。2人は逃げて何とか家に辿り着くことが出来たのだが……?
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