第5話  樹と美少女



 樹はあれ以来母を見る目が異様だ。


朝から母の身体を””ギロリ””と上から下まで隈なく軽蔑的な、まるで街中(マチナカ)で男を誘う淫らな女を見るような目付きで、口も聞かなくてなって来ている。


「樹な~によ~?その態度は~?全く~!それからその目付き何よ~?」


「ママ気持ち悪ッ!」


「もう!何よ!その言い草は~?困った子ね~!」


「ママ放っときなさいよ~!思春期!思春期!お兄ちゃんなんかベッドの下にエロ本隠して読みふけっているんだから!どうしようもないわ~」


「コラ~!莉々よくも————!バラしたな~!待て————!」


「キャ————!バ~カ!」


 妹の莉々は舌をペロリと出して逃げるように学校に出掛けた。だが、結局は仲が良い。その後を樹が追いかけ一緒に学校に向かった。母も樹の思春期問題には苦労している。


 

 ◆▽◆


 母の……あのおぞましい姿が頭から離れない樹、それでも相変わらず悪友利也とは時間が空くと、つるんであの美少女探しに余念がない。


 そして、とうとうあの美少女を発見する事が出来た。


 野郎達と出掛けた時のあの美しい森の中の池に、優しそうな中年の女性と手を繋いで何か話しているのか……?さも楽しそうにこちらに向かって歩いて来る。



 だが、2人はある1点に目を奪われた。


 一体どうした事か?あれから2年以上も経ったのに、あの時の美少女は幼い8歳位の幼児にしか見えなくなっていた。


「おかしいな~?きっと妹に違いない!」


 更に半年後大学受験に向けて猛勉強中の樹は、最終追い込みに疲れて、気分転換にまたあの森に出掛けた。あの美少女の事が頭から離れなかった樹は(もう一度会いたい!)心からそう思うのだった。


 淡い恋心なのか……あの瓜二つの女の子はやはり妹なのか?


 森に着いた樹が薄っすら雪化粧をした美しい森の中を散策していると、どこからともなく、またあの時のような罵声に似た怒鳴り声が、遠くから聞こえて来た。


「お前は分からず屋だね——!全く!」


 するとその時、泣きながらこちらに向かって来る、あの時の美少女が……。


(このチャンスを逃しては大変!勇気を出して声を掛けよう!)と、傍に近づくと一体どういう事なのか?今度は最初に見た美少女の姿ではなく、もう大人の美しい美女に変身してしていたのだった。


 最初に見てからまだ2年半も経って居ないのに、もう20歳を優に超えた美しい大人の女性に変身しているではないか?樹は目を疑い呆然と立ちすくむのだった。


 それでも……一層美しく成長したこの美女に益々心奪われ……。


(俺より年上に見えるのだが……?それでもな~んと美しいこと!)



 この美しい少女?イエ!この美女に魂を奪われ、益々忘れる事が出来なくなった樹。一体何がこの美少女?イヤ!美女に何が起こっているのか?



 益々混迷の一途を…………?















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