第4話 美しい樹里亜!
東京都八王子市の田園地帯に、お洒落な西洋風のお城のような作りの豪邸山城家がある。
2012年梅雨入り間近の6月中旬***
山城産婦人科院長の山城達也53歳は妻弥生47歳と娘樹里亜14歳の3人家族。
一見幸せを絵に描いたような家族なのだが、実は娘の樹里亜は5年前の交通事故で意識不明の昏睡状態に陥っていた。
以前の樹里亜は成績優秀で、元ミス東京の美人の誉れ高い母親譲りの、美貌をそのまま受け継いだ非常に美しい、華やかな薔薇の花のように美しいお嬢さんだった。美しい妻と愛らしい一粒種の娘樹里亜にも恵まれて、達也は幸せいっぱいだった。
ご近所さんにも「美人の奥様と絵に描いたように可愛いお嬢さん、本当に御羨ましい事!ホホホホ」と褒められ有頂天になっていた達也だった。
◆▽◆
幸せが未来永劫続くと信じて疑わなかった達也だったのだが……
忘れもしない5年前の、2007年6月土砂降りの雨の中、学校帰りに右折してきた車にぶつかり、大切な一人娘樹里亜は昏睡状態に陥った。やっと授かった一人娘が昏睡状態に陥り、達也と妻弥生は不幸のどん底に突き落とされた。
不妊治療の末やっと授かった娘が、こんな悲惨な状態になり絶望感に打ちひしがれている。妻の弥生は深い悲しみに打ちひしがれて、一時は死を選ぼうとしたほどだった。
そして2人は苦しみぬいた結果ある手段に辿り着いた。
▽▽▽▲▲▲
一方樹は深い森の中の湖畔で見た母にそっくりの、まるで娼婦のような女性の事で意気消沈気味で浮かない日々を送っていた。
そして…あれ以来母の一挙手一投足に目を光らせている。だが、ひょんな事から母の不貞を確信したのだった。
今年の梅雨は降水量が異様に多いどしゃ降り雨が続いている。
6月下旬のある日、母が余りのどしゃ降りに見舞われ、ビショビショになり家に帰るなり、ワンピースを脱ぎ半裸状態でバスタオルで身体を拭き出した。
するとその時、あの湖畔の美しい女性と寸分変わらぬ腰のアザを発見。
(アアアア!やはりあれは紛れもない母だったのだ!)と確信した。
実は…そのアザの原因は、家族で毎年夏休み期間中にキャンプに出掛けている桐谷一家なのだが、2年前のあきる野市にあるキャンプ場での事。
都心からわずか1時間ちょっとの緑に囲まれた静かな場内に、木の香りで一杯の͡格安コテ-ジが立ち並ぶキャンプ場。
毎年恒例のキャンプ、いつものように屋外でのバーベキューを楽しもうとバ-ベキュ-コンロに火を付けたのだが、あいにくの強風の為母のポシェットに火が引火、腰の辺りに半径10㎝ほどのヤケドを負いアザが出来てしまった。
まあ大惨事だけは免れたので不幸中の幸い。
◆▽◆
1年前のあの日、何処かで見た事のある美しい妖艶な……別荘のガラス越しの美しい肌も露わな女性の腰の辺りにくっきりと、あのアザ?………アアアア!あれは母と同じ場所にある…アザ!
(嗚呼!あれはやっぱり母だったのだ!………そう言えば母は月に2回位、仕事があるからとよく1泊で出掛けている。母は父と言う大切な夫が有りながら何故あのような事をしているのか?許せない!許せない!不潔で裏切り者の淫らな母の顔など見たくない!)
ある日とうとう我慢が出来ずに父に「ママがどこに出掛けているのか知っているのかい。おやじ~?俺…見たんだ~!」
「何を?」
「ママが男の人と2人で……いるところを?…大丈夫?」
だが?父の顔から全て悟っているような・・・?分かっているような・・・?
一体何を考えているのか?自分の妻が他の男のオモチャになっている事を知っていながら、静観出来る父は母の事などどうでもいい存在なのだろうか?只々両親が許せない樹なのだ。
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