第3話 樹の家族!
樹の父雄太45歳は東京藝術大学絵画科を卒業したエリ-ト。
若い頃から天才と持て囃されて名立たる絵画コンクールにも数々優勝。
類まれな逸材と高く評価をされていたのだが?現実は厳しく貧乏生活を余儀なくされている。
樹の母沙耶43歳は父と同じ高校の後輩。
ある日部活の部長だった雄太が部室でデッサンを描いていると、カモシカのようなすらりとした足の長い、スタイル抜群の何とも美しい女の子が声をかけて来た。
「あっあの~!美術部に入部したいのですが~?」
「もう7月だから中途入部になるね?名前と学年を教えてくれる?」
「1年Aクラスの伊藤沙耶です。先輩の絵画に憧れて入部を希望して来ました」
「俺のこと知ってるの~?」
「絵画好きな高校生なら誰だって知ってますよ!絵画コンク-ルで賞を総なめにしている桐谷雄太の事なら!」
男子生徒憧れのマドンナ、次期ミス桜坂高校との呼び声高い美人の紗耶は絵を描く事が大好きな少女。
そんな沙耶は人知れず雄太に憧れている。
雄太の大ファン、一方的な憧れから徐々に2人は付き合い出し現在に至っている。
そして…一方の母の沙耶は小学校の教員。稼ぎの少ない父に代わって一家の大黒柱なのだ。
それでも……こんな売れない画家でも、文句ひとつ言わず惚れた弱みで尽くし切っている沙耶。
家のローンと父雄太のデッサンの諸費用にも多額のお金がかかり、おまけに樹は都内でも屈指の有名私立高校に通う高校生。
更には2歳下の妹莉々もいるので生活は決して楽では無い。
その為、月に一度の待ちに待った外食は隣町まで出掛けてのファストフード大手の牛丼チェ―ン店【うまし家】での牛丼だ。
「俺~?大盛りのランチ食べた~い!」すると沙耶が、すかさず手を””ピシャリ””
「ダメ!ダメ!ご飯大盛にしてもらいなさい!」
「チッ!つまんね~の!」
そして申し訳なさそうにパパの「スマナイネ~」の一言でいつもの外食もお開き。
それでも一家は大変仲が良く、いつも笑顔が絶えない。
また何故?隣町までわざわざ出掛けるかというと、この2人貧乏なくせにプライドだけは人一倍高いとんでもない見栄っ張りなのだ。
セレブで通っている一家の実態を、どんな事をしても隠し通したい一心の父と母。
近所の住人にも、又家の近所の小学校の教員をしている母なので、学校の生徒にでも見られたら大変。
目を真ん丸にして、たかが牛丼をさも大御馳走のように頬張る夫の雄太や子供達の、見苦しい姿は絶対見られたくない。
◆▽
それでもこんな貧乏ながらも幸せな家族に……。
2011年6月もう直ぐ17歳の誕生日を迎える樹。
久しぶりの晴天に心躍る樹は部活の帰り道、今日はどういう訳か野郎達と早々に別れ、ふっとあの少女の事が気掛かりになり自転車であてもなく小1時間?いや~もっと~?多分2時間位???
うろうろ彷徨い深い森の中の湖畔にたどり着いた。
辺りはシ~ンと静まり返り静寂の音に耳をすませていると?
どこからともなく女の艶めかしい喘ぎ声が「ああ~あ~~💋~*⋆*♡*・*ああ~!」樹はこんな猫の子一匹通らないような湖畔で誰が???
するとある一軒のお洒落な別荘の2階から女性の微かな喘ぎ声が「⋆*⋆・。💋ああああ~~~*。・*⋆」
誰も居ないであろうと思う開放感からか、すっかり油断して、事も有ろうに湖畔に面した豪華な別荘のガラス越しに、何とも妖艶な美しい女性が肌も露わに卑しい中年の男に今まさにいたぶられ💛弄ばれている最中だった。
隠れてコッソリ見ていると何処かで見た事のある………?母にどことなく?
真っ赤なルージュ💄今まで見た事のない娼婦のような厚化粧の、母の淫らなただの欲望に溺れる卑しい女の姿に(多分?いや~でも~?)いつもの清楚な美しい母とは全く違う、別世界のいやらしい見たくもない女の姿………只々我が目を疑う樹。
(まさか………?………嘘であってほしい!)
只悲しくも無いのに……何故か知らず知らずのうちに涙がとめどなく……。
絶望?裏切り?
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