第17話
〜京都近郊〜
西郷が大久保もつれずに桂と会食をしていた
「よぅ桂さん、ワシは東とパイプを作ったぞ、ワシは約束を守ったんだ、今度はそっちの番だぞ?」
タバコをふかしながら西郷が桂に言った
「パイプを作ったって言ったってきちんと把握してるんですか?そもそも幕府の評議員とつるんで幕府主要都市でテロ紛い、民衆の幕府に対する不満を焚きつけるなんて正気の沙汰じゃない!力で力押さえつけるのは圧政と言うんですよ!」
机を叩きながら桂が怒鳴った
「王族が西と東に別れてもう何百年…こんな小さい島国で争ってる場合じゃない!それにワシらの政府だって表立っては発表してないが出生率低下や国内総生産の低下、もう持たん時がきているのじゃ!何としても幕府の勢力と合併して強い日ノ本の国にする為にワシャ泥だろうが飲んでやる、手段なんぞ選べん!」
「そのために捨て駒や民衆は死んでもいいと?」
「フン、真の目的の為に排除するのは当然じゃ」
「民衆無き国家なんぞ繁栄しないぞ!西郷!」
「見解の違いじゃな…もういい、ワシャワシのやり方でやったるわい!」
そういい西郷は会合の場から出ていった
「合理的に進める方がいいのか…西郷の意見も一理あるが…俺には納得できないよ、晋作」
後ろに居た細身のスーツに身を包んだ男にボヤいた
「桂さんは犠牲の上に成り立つ大義はあってはならないってお考えですからね、私も同意見です…ただ…早くこの計画を進めないと。東からの移住者も増えています、政府だけでは管理しきれない事も増えましょう…」
「晋作…とりあえずいつでも調印式は大阪でやれるよう手配を頼む」
「分かりました」
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(東京某所)
とある料亭から役人やら数名が出てきて入口で派手に挨拶を交し、やがてちりじりに各々帰って行った
その一行の一組が車に乗り込む時車の脇から長身の男が出てきて警告無しに眉間に1発
「なんだ!誰だ!だ、誰か!」
もう1人が叫ぶ前にその男の心臓に銀髪の女がナイフを突き刺し胸にあった端末を回収し男は2人は闇夜に消えていった
「イチすまない…こんな事させて」
近藤は齋藤に深々と頭を下げた
齋藤は全然気にしてないよと言いたそうに少し微笑んで近藤の肩を叩きながら首を横に振った
「もうすぐだ…もうすぐこんな事しなくていい世の中になるハズだ、でもしんどかったらいつでも辞めていいからな…」
マスク越しに口を膨らませてるのが分かるくらい齋藤の顔は怒っていた
「嫌なもんか…って言いたそうだな。わかった、でも嫌だったらすぐに言ってくれよ、帰ってこれを解析してもらおうな」
そういい2人は車に乗り込んだ
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「なんかさぁ〜最近局長さんと齋藤さん一緒に居なくなること多くない?」
藤堂は炭酸水をがぶ飲みしながら土方に問うた
「近藤さんは評議員に会ったりするし齋藤はその護衛も兼ねてだ」
土方はPCで報告書を作りながら返答
「でも土方さん、今日の任務だって土方さんが指揮でまとまってたじゃない、本来は近藤さんか参謀の伊東さんじゃねぇの?伊東さんもいねぇし」
Tシャツを脱ぎ上半身が下着姿のままで缶ビール原田は飲む
「ちょっと!原田さん!なんか着てよ、見てるこっちが恥ずかしいよ」
山南が目を背けPCの方に身体を向けた
「そうだよ小夜姐、目のやり場に困る」
「うわーひくわーキモイわー」
「キモイとか言うなや!」
「お子ちゃまには刺激が強いかな?てかアタシがどんな格好しようが勝手じゃんか、あんたらだってへーきで上着脱いでるじゃねぇか」
「俺は目の保養ができて全然構わんよ、もっと見して」
「てめぇコンクリの靴履かせるぞ」
「原田、たしかにお前の言う通りだ、俺達も気をつける。でも人間ならキチンと服を着ろ、いつなんどき誰か来るかわからん。知らん相手がそんな姿を見たらお前を色眼鏡で見るだろう?俺達の仲間がそう見られんのは俺が我慢ならん」
そういいながら土方が上着を原田に投げた
「上着ありがとう、アタシ今汗臭いから洗って返すわ」
「別に気にしないさ、自分で洗う」
「おやぁ?副長さんはそういうの好きなの?俺と趣味が合いそうだなぁ〜」
ニタニタしながら藤堂が土方を茶化したら
「お前と俺は違う、お前の安っぽい挑発なんかに乗るか」
「つまらねぇの…チェッ」
「相変わらずみんな元気が有り余っとるの〜?ん?永倉や伊東はんはおらんの?」
治療室から山崎が出てきた
「伊東さんは非番、永倉は別任務で出張中ですよ」
と土方が返答
「おぉ医者の先生!なんか最近小夜姐さんを見るとなんて言うか下半身が熱くなるんすよ〜これって何かの…」
藤堂が山崎にかけよった
「お前さんのブツの先端に金属棒入れて検査しよか?病気かもしれんしな、なぁ藤堂はん?」
山崎がニタニタしながら藤堂に返答
「考えただけで激痛…てかさ?俺山崎さんどっかで見たことあんだよなぁ〜」
「こんな顔どこにでもいる顔や」
「いや?いやいやいやいや?思い出せ…あ!思い出した!あんた帝都大学病院にいたろ」
「さぁの?どうやったかなぁ〜」
「あんたいたよ!記事で見た!なんだっけな…そうだ!バスとトラックの事故だ!」
バァン!
「藤堂、いい加減にしろ、ここは仲間の詮索なんかする場所じゃない!好奇心旺盛なのは結構だがそれを嫌がる者もいるんだ!」
机を拳で叩きながら土方が藤堂を諌めた
「すんませ〜ん」
「気にせんでええよ、ちょっとタバコ吸うてくるわ」
そういい屋上階段へ山崎は向かった
「自室に戻って反省しまーす」
藤堂が自室に向かうと思い立ったかのように山南が後を追う
「ねぇ、藤堂さん、さっきの事故の話聞かせてよ」
山南が藤堂の服を掴んで言った
「ん?知りたい?じゃ俺の部屋でゆっくり…」
「こっちは真面目に聞いてる、要件だけ教えて!」
いつになく山南の目は真剣だった…
「ふぅーーー」
屋上の灰皿で山崎が大きく煙を吐いた
「あの事故から結構経つか…あの記事は大きく報道されてた、知ってる奴もそらいるわな…ここにおられんようになるなぁ」
「あんな奴の事なんて気にする事ないですよ!」
声の主はタバコを咥えながら歩いてきた土方だった
「おぉ土方はん」
「ウチは入隊したら経歴は一切不問、今の結果が全てですから。それに近藤さんが選んだ人、俺はそれだけで山崎さんは信用に値すると思ってます」
「ありがとうな…土方はん…しかしなぁ」
「藤堂には俺からキツく叱っておきますよ」
「あんた…俺の事知ってたか?」
いつになく山崎の顔は暗い
「ん?まぁ…触りくらいは。山崎さんてなんでこっちに来たんです?」
土方が缶コーヒーを飲み干しながら言った
「なんや、いつかの逆やな」
「そう言われればそうですね」
「俺ん家は代々医者の家系でな、自分で言うのもなんだがそこそこ優秀やったんや、でももっと腕を磨きたいと俺は思ってた。でもな?みんな家の名前で俺を評価し続けた、それがうんざりでこっちに来たんや、こっちなら家の名前もそこまでかなと思ってな」
「そうですか…」
「まぁそれでもあんまり変わらんかったけどな、さて戻ろか」
山崎は苦笑い混じりにタバコを灰皿に吸殻を押し付けて屋内に戻っていき後に土方もついて行った
共有スペースに土方と山崎が戻った瞬間
大画面液晶に記事が表示された
「遺族ら提帝都大学病院のエリート外科医を提訴?!」
写真の記事にはモザイクが入っていたが知ってる人間がみたらすぐにわかるような写真だった
「なんだこれは!誰がやった!さっさと消せ!」
土方が怒鳴り散らした
山崎が呆然と立ち尽くして画面を確認
「ようやく会えた!元帝都大学病院の岡島!」
山南が山崎に詰め寄った
「お前なにやってんだよ、どうした?」
沖田が割って入る
「うるさい!これは僕の問題だ!関係ない奴は引っ込んでろ!岡島!この写真の人に見覚えあるだろ!」
そういい山南が1枚写真を山崎に見せた
「これは…そうか…あんたあの人の家族か…」
「よくのうのうと医者やってんな!みんないい?!こいつは人の生命に順番をつけて選ぶ奴なんだ!なんとか言えよ!」
「なになになに?うるせぇなぁ、またトラブルかい?」
原田も画面の記事を読み出した
「帝都大学やその後のお前の足取りを調べても何も出なかった!不正アクセスで僕は捕まったけど近藤さんが不問にするって言うしここなら設備もそろってるし記録やデータが集められる!だから僕はここに入ったんだ、でもどうにも掴めない、それはそうだ、経歴が変わって抹消されてたら私だって追えない」
山崎は何も反論せず山南に土下座をした
「済まなかった…謝っても済まない話しやが俺にはこうするしかできん」
「お姉ちゃんを返せよ!なぁ!返せよ!」
そういい隠して持っていた拳銃を山崎に突きつけた
「馬鹿!しまえ!」
「そうだぞ!どうした!敬!落ち着けよ!」
土方と沖田が仲裁に入るが下手に刺激すると引き金を弾きかねない
そんな時共有スペースのドアが開き近藤と齋藤が帰ってきた
「何の騒ぎだ、これは!」
「近藤さんも知ってたの?知ってて僕に隠してたの?!」
山南の怒りは近藤にも向いた
近藤は画面を見て事態を把握
「…そうだ、だったら山崎さんも撃って俺も撃つか?山南?」
「早くに両親を亡くした僕にとってお姉ちゃんは唯一の家族だったんだ!それを…順番ミスだなんて…!」
「山南、あの出来事には理由があったんだ」
「近藤はん!やめぇ!」
頭を下げながら山崎が声を張った
「どういう事なの?!全部話して!」
「山崎さん、彼女は知る権利がある、ここまでなったんだ…山南はあの時のトリアージの順番を山崎のミスだと思っているだろう?」
山南が拳銃を構えながら黙って聞いていた
「近藤はん、俺が説明する、あの事故で近隣の病院にエマージェンシーが入り俺達も現場に急行したんや、観光バスとトラックの衝突、乗用車も巻き込んだ事故や、現場はもう混乱状態、俺はトリアージを直ぐにしたんや」
「そのトリアージって何?」
原田が聞いた
「普通は馴染みはないよな、こういった大規模な現場では患者を分けんねん、処置しても意味がない…もう息がない人を黒札、生命に関わる治療が即必要な患者には赤札、応急処置だけしてまだ危険度が低い患者には黄色札、軽傷者には緑札と分けんねん。俺は確実に色分けしたんや」
「それをあんたが間違えたんだろ?!」
「そうかもな…いやそうだったんや…」
「違うぞ、山南。この時お前のお姉さんの札を変えた人物が他にいたんだ」
「…はぁ?それをやったのはコイツだろ?!」
「お前のお姉さん自身だ」
「やめぇ!近藤はん、ホンマに…」
「お姉さんは黄色の札だったが近くの親子の子供が緑札、両方とも軽傷者だったが泣き叫ぶ子供を見てお姉さんは自分で札を入れ替えたんだ」
近藤が答えた
「はぁ??なんでよ!なんでなのよ!」
「なぁ?敬ちゃん?気がついてないと思うけど安全装置外れてねぇぞ?」
原田が横から指摘して山南が注意を逸らした瞬間土方と沖田が山南を押え拳銃を取り上げた
「なんだよ!みんな僕をだましやがって!はなせよ!」
「君のお姉さんは危険な状態だったが意識もあり自発呼吸もしていた、ただ肋骨の骨折箇所から気胸の疑いがあっただから黄色札をつけたんや、優しい人やったんやろう…俺が治療に当たっていたら札の入れ替えも気ぃ付いたんや、ただ他の医師が治療にあたってしまった…あとはあんたの知ってる通り。お姉さんの治療記録を見たらもう処置する時には意識が無かったらしい、それでトリアージの順番ミスを他の医者に指摘されて俺は提訴されたんや、裁判では無実が証明されだが…あんたのお姉さんを救えなかったのは事実や、言い訳はせん、お姉さんに札を着けた時俺に言うてたよ、お願いやから向かいの親子から先にて。もちろん医者として承服できんから無視したがまさか自分で変えるとは…」
「じゃあなに?全部お姉ちゃんが自分でやったってこと?!、近藤さんはなんで知ってたの?!」
「山崎さんをスカウトしたのは俺だ、その時山崎さんから全部聞いたんだ」
山南から力が抜けたのか抵抗しなくなった
「本当に馬鹿だよ…いつもいつも自分の事は後回しに…それで死んだりしてたら意味ないのに…うわぁぁぁーーー」
沖田が山南の肩を抱いた
「もう平気っすよ、敬?ちょっと外の風に当たろう」
そういい沖田が山南に付き添い共有スペースから出ていった
「歳さん、発端はなんだった?」
「すみません、藤堂です、山崎さんをしってたみたいで…」
「今すぐ呼んでこい」
「アタシが連れてくるよ」
そういい原田が藤堂の部屋へ向かった
しばらくすると
「痛い!痛いって小夜姐!俺が何したって言うんだよ!離してって!」
顔左に大きな手形をつけた藤堂を原田が首を掴んで連れてきた
「近藤さん土方さん、小夜姐がいきなり…」
「藤堂!お前!」
土方が何かを言い終わる前に近藤の右拳が藤堂の左頬を飛ばした
「お前の安っぽい好奇心でこの騒ぎだ、入隊前に言ったろ?この部隊に入ったら人の過去を詮索するなと、次やったら…分かるな?」
藤堂は左頬を抑えながら立ち上がり
「すみません…以後気をつけます…」
「もう行け、しばらく謹慎してろ!」
一礼して藤堂が出ていった
「ほら先生、立ちなよ」
原田が山崎の手を引いて立たせた
「近藤さんがやらなかったらアタシが殴り飛ばしてたよ」
「お前その前にビンタしてたじゃないか」
「あれはなんかアイツがムカついたから」
「歳さん、原田、ちょっと山崎さんと2人にしてくれないか?」
「丁度タバコ吸いたかったんだ、副長さん、付き合ってよ」
「あぁ、行こうか」
土方と原田が後にした
「近藤はん…俺辞めるよ…拾ってくれてありがとうな」
「辞めるのは俺が許さんよ、スカウトした時にも言ったが俺達はいつ怪我をするか分からない、それに俺はあんた以上の医者も知らん、何よりこれまでみんなを救ってくれた」
「沢山救ったから許されるって訳でもないよ」
「それに…これだけ隊の秘密を知ったんだ、機密保持の意味合いも兼ねて辞めるのは許さんよ」
「あんた…いつからそんな駆け引きみたいな事するようになったんや」
「さぁな、どうする?それでも辞めるって言うか?」
「どないしたらいい…ここにいていいんか?俺は」
「あんたの居場所はここだ、名前も関係ない、医者としてよりみんなあんたの人間性を理解している、すぐには無理だろうが山南だって理解するさ」
「分かったよ…」
そう言い残し山崎は治療室に戻って行った
戻った時沖田に付き添われた山南が治療室に
「山崎さん…山南が話したいって」
「僕はあんたを絶対許さない!だからあんたの生き方をずっと見続ける、だから途中で逃げるな、これが言いたかっただけ、ありがとう…沖田、もう出よう」
それだけ言って沖田と山南が治療室を後にした
逃げるなか…俺はずっと逃げてたのかもな、家も名前からも
あの時もどこかで現実から目を背けてたのかもしれん
保険証から調べたら妹が居ることくらいすぐにわかったんだ、その時ちゃんと謝っていれば違ったか
あの時にすぐに謝っていればあの子はここには入る事もなく済んだのかもしれん
贖罪…許される事ない罪…もう逃げる訳にはいかんな
「踏ん張り時か…俺も気張らんとな」
そういい引き出しから普段飲まないスキットルを出し1口飲んだ
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