第16話

共有スペースのスピーカーからけたたましい銃声と音声が流れた


ー西新谷の信菱ビルで革命派と名乗る集団が占拠!武装集団の人数は不明!25階に人質が集められてる模様!戦術狼の出動要請入りました!ー



ダム事件から数ヶ月後

それが何かの合図のように東京の治安は悪くなり今はこのようなテロ事件が起きるのも珍しくなく戦術狼に出動要請がかかるようになった



「聞いた通りだ、仕事にかかれ」

近藤の号令で全員が動き出した

「了解です!オルァ!モタモタするな!」

土方がいち早く近藤の声に反応

「はぁ〜い、こんな時間にご苦労だねぇ」

「全くだよ」

沖田と永倉は不満そうに準備開始

「ほらー!ノンデリカシー野郎!早く準備しろよ!」

「うるせぇな、わぁーってるよ!」

こんな時も山南と沖田はこの調子

黙々と準備をしている齋藤に近藤が

「今回はアンカーで隣のビルに移ってもらう」

齋藤は力強く頷いた

近藤は齋藤の頭を撫でながら

「イチの潜入がスタートだ頼りにしてるぞ…いつも危険な事をさせてすまない…」

驚いたような仕草で齋藤は近藤を見つめ、首を横に振った


「毎度毎度お熱いっすね〜、俺も潜入チームだから労ってもらいてぇなぁ」

金色混じりの長髪の髪を縛り色眼鏡を掛けた細身の男が茶化してきた

その男の名は

「藤堂 平助」

芹沢事件の後に補充された隊員

「藤堂、お前にも期待している、齋藤と組んでくれてありがとうな」

「ホントそう思ってますぅ?俺とかはさぁ〜例の事件後の新入りだからいびられてるかなぁ〜と、でも近藤さんがそう言ってくれるなら俺は頑張れるぜぇ〜、あ、でも…」

「このお喋り野郎が!グダグダくっちゃべってる暇あったらさっさと準備しろ!」

話を割ったのは「原田 小夜子」

彼女も藤堂と一緒のタイミングで補充された要員

「弾が切れたらてめぇの玉詰めてぶっぱなしてやるわ」

「お〜怖!でも小夜姉さん頼もしいわぁ!今度こそ授乳プレイしながら僕の頭を撫で撫でしてよ」

「てめぇ…ぶっ殺すぞ!」

「そんなにお・こ・ら・な・い、綺麗なお顔が台無しだよん」

原田と藤堂が装備支度をしながらじゃれあっていると

「お前らいい加減にしろ、なんでいつもお前らはそうやって足並みを乱すんだ!そんなだから俺たち新参者は古参の連中に舐められるんだ!」

そう檄を飛ばすのは近藤と年回が近いメガネを掛けた白髪混じりの短髪の男

「伊東 宗太郎」

彼もまた例の事件後の補充要員だ

「新参も古参も俺は特別扱いはしていない、さっさと準備して指揮車へ行け、俺は先に行く」

近藤は装備支度を整え指揮車へ向かった

「今行くよ〜近藤さぁん」

「アタシも準備OKだ」

原田と藤堂が近藤の後を追うようについて行き最後に伊東が部屋を後にした

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦闘指揮車では近藤と伊東が作戦を立案していた

「報道ヘリに紛れてラペリングで土方、永倉、東堂と齋藤を下ろせばいいじゃないか」

伊東が近藤に意見した

「ダメだ、ビルの間隔がそこまでないからハーネス付けて移動がいい、屋上の見張りは永倉と土方が狙撃でやれる」

「作戦は効率よくした方がいいと思いますが…」

「伊東さん、屋上の状況が把握できない以上ヘリでの降下は承認できない、後は現場で判断する」

「…わかりました…」

伊東は不服そうだ

「全員聞こえるか?信菱ビルの状況は現場着後山南のハッキングで把握後、永倉、土方、齋藤、藤堂は信菱ビルの東隣の安保ビル屋上へ行き永倉、土方で見張りを排除後に齋藤、藤堂がハーネスでビル移動、人質の状況にもよるが藤堂、齋藤が26の敵を無力化させたら伊東、沖田、原田で同時に24階を制圧」


ー了解です!ー

ーかしこまりー

ー分かったよー

ー暴れてやるぜ!ー


無線から各々の反応が帰ってきた

「近藤さん、人質がいるって本当ですかね?」

伊東が怪訝そうに尋ねる

「それも現場に着くまでは判断しかねる、頭の良い奴がいたら人質に手は出さないが…」

「人質7:3って所ですかね?」

「伊東さん、いつも言っているがそういう打算はやめてくれ、市民は全員救う、俺たちは無法者じゃない」

「ある程度はやむなしかと思いますが」

「この話はもう終わりだ、立案してくれるのは助かるが局長は俺だ、伊東さんは参謀、個人的な主観は構わんがいちいち口に出さんでもいい」

「…貴方らしいというか…割り切った方がいいですよ」

「大きなお世話だ」


「近藤さん現場に着きます」

山南が近藤に伝えた

「怪我しても俺が治したるからな、カメラチェックも任しとき!」

山崎も緊急時要員として乗車

「山南、ハッキングの状況は?」

「今やってるよ…ビル保安システムに侵入っと…うんうん…エレベーターは封鎖されてるけどもう使えるようにしてあるよ、25階に人質が集められてるね、人数は…10弱って所、監視モニターだと24階に3人、25階に4人、26階に3人、屋上に2人だね」

「好都合だな、安保ビル屋上チーム先に行け」

2号車から

土方、永倉、齋藤、藤堂が降りて各々最終チェック

「4人ともカメラチェック大丈夫や、全員映っとる気張りや!」

ー近藤さぁーん、今回も俺が頑張るよ!ー

ー藤堂!無駄口を叩くなー

ー先に屋上行くよー

「歳さんそっちは頼んだ、屋上着いたら連絡してくれ、俺はこれから交渉に入る」

ー了解です、なるべく引き伸ばしてくださいー


4人は安保ビル屋上へ


「さて…伊東さん、沖田、原田は24まで行ってくれ」

「分かりました」

「行ってきまーす!」

「アタシの足引っ張んなよ!お前ら!」

そういい3人は24階へ向かった


「山南、回線で25階の電話に繋げて音声をスピーカーに」


「今繋げます」



ールルルルールルルルー


指揮車スピーカーから呼出音が鳴り

人質も映る監視モニターで主犯と思われる人間が受話器を取った


ーなんだ、サツか!さっきも言ったが交渉はしねぇ!俺たちは死ぬ覚悟でここにきてる!ー


「初めまして、警察から指揮権が移り俺が君達と話すことになった戦術狼局長の近藤だ、警察が何を言ったが知らんが…」

近藤は淡々と喋った


ー戦術狼?!てめぇら俺達まとめて殺す気か?人質もいるの忘れるなよ!ー


「誤解だ、俺達は独自組織なんでね、君達の要求にも応えやすいとの事で呼ばれたんだよ」


ー嘘つくんじゃねぇ!てめぇら殺しが専門て言うじゃねぇかー


「誰も好き好んで殺しなんてしていないよ、俺は君らだって助けたいんだ、色々不満もあるだろう?悪いようにしない、聞ける事なら俺から直接評議会に直接掛け合う事もできる、だから改めて要求を聞かせてくれないか?なんなら今別回線で評議会と電話を繋ぐよ…えっと…なんて呼べばいい?」


ー………柴田…俺は柴田だー


「柴田さんか…俺は近藤、改めてよろしく、2人でこの状況を何とかしよう、その前に柴田さん、人質は無事なのかい?誰か具合が悪いとか怪我してるかはない?」


ー今んとこ手出ししちゃいねぇ、要求は現将軍と平岡の辞職だー


「将軍と平岡先生?」


ーそうだ、この幕府を操ってるのは平岡だ、そもそも将軍がだらしねぇから平岡あたりにいいようにやられてんだー


「将軍と評議会か…随分と…まぁ…10分だけとりあえず俺に時間をくれないか?流石に将軍には連絡が直でできないから、待たせて大変申し訳ない」


ー近藤…妙な気起こすなよ?10分後に連絡するー


「柴田さんありがとう、また10分後に」

近藤が回線を切ると山崎が話しかけた

「安保ビル班、24階チーム現着いつでもいけるで」

「あいつらそこまで訓練されてるように見えないよ、やるなら今だと思う」


「歳さん、安保ビルチーム状況は?」


ーアンカーを打ち込んで藤堂と齋藤は準備完了ですー


「見張りも2人だけだよ!」


「よし、2人が移ると同時に排除しろ」


ー了解、やるぞ永倉ー

ーもういつでもやれるよー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「土方さぁん、俺やっぱり高いところ無理!蜘蛛男でもねぇんだから」

藤堂ハーネスを確認しながら土方に言った

「うるせぇぞ、いつもやってる事じゃねぇか、ふざけてる場合じゃねぇぞ、齋藤を見習え」

齋藤はもう準備完了

「へいへい…少しは心配してよ」

「俺は狙える、土方さんは?」

スコープ越しに永倉が問うた

「俺もいける、よし…3、2、1で行くぞ」

土方も準備完了だ


「3、2、1!」

藤堂、齋藤のハーネスがビルの間を切り裂くように素早く移動すると同時に

ビュンビュン!


屋上の見張りが頭を抜かれた


「屋上完了!藤堂、齋藤頼んだ」


ーこっちも着いたよ〜怖かったわぁこのまま齋藤ちゃんと26もサクッとやってくるよー

藤堂と齋藤はハーネスを外し屋上から26階入口へ移動した


「山南ちゃん?聞こえる?26はどうなってる?」


ー24.26共にエレベーター通路前にしかいないよ!ー


ー24もか?人質さえいなきゃなぁー

原田が息巻いてる

ー24、俺が初手に入るから原田さんと伊東さんは後にきてー

ー沖田君が初手だそうだ、こちらもいけるー


ー怪しまれると面倒だまた柴田と話すからその間に片付けてくれ…もしもし?柴田さんかい?ー


ーーーーーーーーーーーー

26階は静かだった

エレベーターホールに3人


齋藤が小型の閃光弾を用意した

「齋藤ちゃん準備いいねぇ〜お仕事しますか〜」

齋藤がエレベーターホールに小型閃光弾を滑らすように投げた


パァン!


エレベーターホールは眩い閃光に包まれた


「なんだ!」

「来やがった!」

「見えねぇ!」

敵が3人慌てた瞬間

藤堂が持っていたSD6で1人の頭を撃ち抜き齋藤が投げナイフで2人を同時に排除


「ヒュ〜…齋藤ちゃん相変わらず凄いね」

齋藤はなんてことないと言った表情

「喋れないで不便じゃない?いつも不思議なんだよね、ねぇねぇ?」

齋藤はうんざりと言った感じだ

齋藤は藤堂を置き去りにして25階入口に向かった


ーーーーーーーーーーーー

(〜26階制圧前〜)


「よし、俺たちもやろう」

MP7を構えながら沖田が言った

「アタシが先に行く、あんたらは見てればいいさ」

「足並みを乱すな、ー山南?24はどうなってる?エレベーターホールに集まったままか?」

伊東が山南に無線


ーエレベーターホールに1人、通路に1人づつだよー


「ー分かったー 聞いた通りだ24階に入ったら手前1人を音で誘き出して音少し立てて2人目も誘導、最後はそのままやる、いいな」

沖田が24階に侵入し通路で物音を立てた


ガン


見張りが反応

「なんだ?ちょっと見てくるわ」

「おう」

1人が24階階段入口手前の角を曲がる瞬間


ピュン!


沖田がヘッドショット


ドサァ!

見張りが倒れる音が響いた

「どうした!」

もう1人が走ってきてるのを感じ取った原田が待ち構え沖田がやったように消音器着きM93Rで頭に弾丸を放った


「ちょろいもんね」

「そのまま行くぞ」

原田を先頭に沖田、伊東が24階を進みエレベーターホールまで来た

2人の見張りと距離があったのが幸いして1人は気がついていない

「マヌケが」

伊東が持っていたHK45で頭撃ち抜いた

恐らく3人目は何が起きた分からぬままだったろう


「こちら伊東、24階確保これから25階入口に向かう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


インカムで近藤が柴田に話しかけた

「もしもし柴田さんかな?待たせて申し訳ない、もうすぐ平岡先生が辞意表明を出して会見を開く、将軍に関してはもう少し待ってくれないか?」


ー仕事が早いな、だが要求は将軍の辞任もだ、受け入れられないならそろそろ人質を殺すぞ?ー


「俺は平岡先生には連絡とった、将軍には今働きかけてるせめて折り返しの連絡が来るまでもう少し待ってくれないかな?それに人質に手を出したら柴田さん、君だって無事では済まないよ。俺はみんな助けたいんだ、誰も血を流さないで解決させたい」


ー意外とお前は甘いんだなー


「よく言われるよ、この性格はどうにもならんのです」


ーフッ…しかしお前の…ー


ー柴田さん!24.26階の丸山、古原が無線で連絡してきています、なんかあったみたいですー


ー1人づつ行ってやれー


ー分かりました、おい!東!ついて…ー


「25階待機メンバー、そっちに2人行ったよ!」


25階入口には齋藤、沖田、藤堂、原田、伊東が待ち構えていた

「そろそろだ…ドアが開いた瞬間1人目を拘束、2人目は排除」

伊東が指示

「んじゃ拘束役はアタシがやるよ」

原田がチェストリグとTシャツを脱ぎタンクトップになり胸元をあらわに

「おぉーいい眺め、2人目は俺が殺るわ」

藤堂がSD6を下げ、小型ナイフで身構えた


ギィィ


見張りの1人が無警戒でドアをあけた

「ねぇ、コレ見て」

原田がタンクトップの首元を下げて胸の谷間を1人に見せつけ視線が下にいった瞬間首を締め、その隙に脇から藤堂が2人目の見張りの首元に小型ナイフを突き刺した


「がはぁ」

2人目が絶命


1人は首を原田に締められ原田の腕を叩いていた

「死にたくなかったら俺の言うことを聞いて大声出すな、いいか?このまま俺達に銃を向けながらリーダーの所につれていけ、間違っても妙な気を起こすなよ」

見張りはウンウンと力強く首を振った

原田が拘束を解きながら自分の胸元見て

「こんなもん何がいいんだろうね」

「小夜姐さんのおっぱいに癒されてぇわぁ」

と藤堂がブツブツ言っていた

見張りの銃から弾丸を抜き装填分のマガジンの弾抜いて渡し原田に銃を向けながら25階に侵入

見張りから少し離れた所に沖田、齋藤と続いた


「誰だそいつ?東はどうした?」


「柴田さん、怪しい奴が…」

そう見張りが言い切る前に拘束していた見張りを沖田が射殺、もう柴田の近くにいた1人を齋藤が投げナイフを首元に投げ沖田がそのまま柴田に銃を向けた



キャーーーーーーーー!

人質達の叫び声がフロアに響きわたった


「そのまま近藤さんと話せよ」

沖田は銃を向けたまま言い放った


「てめぇ…騙したのか?俺たちを助けたいって言ってたじゃねぇか!」


ーあぁん?そんな事言ったっけか?まぁいいそんな口約束どうでもいいわ、革命派なんて名乗る奴を俺たちが助ける訳ないだろ?お前だけは聞きたい事が山ほどある、死にてぇなら勝手にしろー


ガチャ


「クソがぁ!」

柴田が銃を向ける瞬間沖田が柴田の銃をを撃った


「まだ続ける?近藤さんに生け捕りにしろって言われてたから手加減してるけど俺はお前の頭ぶち抜いたって構いやしねぇよ?」


「クソ!好きにしろ!」


「はーい、おじさん手を出してー」

藤堂が柴田の手をタイラップで巻いて拘束

「伊東です、柴田の確保完了しました、帰投します」


ーみんなよくやってくれた、後始末は警察に任せて屯所へ帰ろうー


ー了解です!ー


「はー疲れたぁ!早く帰って酒飲もうぜ」

「俺はドクペ」

「沖田君はお子ちゃまですねぇ〜まだお酒飲めないの?」

「あんなもん人間の飲むもんじゃねぇっすよ」

「酒味がわかんないようじゃまだまだアンタはガキって事だな」

沖田は原田、藤堂にからかわれながら柴田を連れて行った


ーーーーーーーーーーーーー

「ふー…人質が無事で何よりだな」


ー近藤さん交渉お疲れ様です、俺たちもそっちに戻りますー


「歳さんと永倉もお疲れ様、助かったよ、ウチは狙撃できるのがまだ少ねぇからな」


ーいやいやいや、永倉に比べたら俺はまだまだですよ、帰って1杯やりましょう、これからそっちに帰投しますー


「了解」


「近藤さんお疲れ様」

山南がインカムを外しながら近藤の方を向いた

「山南も監視お疲れさん、山崎さんもチェックありがとう」

「いやいや俺なんかなんもしとらんて」

照れくさそうに山崎が答えた

「そんな事はないよ、山崎さんがいるから致命傷以外なら助かるってみんな信じてる、もちろん俺もその1人だ」

「一言言わせてもらえれば怪我すんなやと」

「それはそうだな」

戦闘指揮車の周り騒がしくなってきた

「賑やかな連中が帰ってきたな」

「せやな、さて帰ろか。こっちの運転は俺がするわ、近藤はんはゆっくりしとき」

「ありがとう山崎さん」


近藤はそういい指揮車の椅子に深く座った








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