第15話

あの敗北から1週間

ダムの爆発は放水に関する所は無事で復旧はそう難しい話ではなかったが元いた職員は行方不明。

今回の事件は西側に情報を流していたのが部隊の芹沢という事もあり近藤は査問委員会にかけられ、処遇が決まるまで部隊は屯所より外出禁止の命令が評議会から通達された。

共有スペースで時間を潰す者、訓練する者…各々顔を合わせても口数は少なく雰囲気は重い、あの事件から土方、永倉はひたすら訓練に明け暮れて沖田は共有スペースでスマホと睨めっこ、山南は流行りのFPSゲームをしていた。

先に口を開いたのは沖田だった

「なぁ…」

「何?」

「俺達どうなんのかな?」

「……うん」

「解散かな?」

「…………かもね」

「俺さ、お前にめちゃくちゃ感謝してんだ」

「…なんで?」

「あの時お前からの無線が無かったら俺達どうなってたかわかんねぇよ…だからありがとうな」

「もっと早く気がついてたら…」

「あぁ!もう!俺がありがとうって言ってんだから素直に受け取れよ!そんでクソゲーやんのか話聞くのかハッキリしろ!元チョイブス!」

山南のゲーム画面はcontinue04の表示でカウントがすすみGame Overに

山南は黙ったままだった



治療室では被弾した齋藤の治療を山崎がしていた

「べっぴんはんどうや?痛くないか?」

齋藤は横に首を振り少し微笑んだ

「せや、喋れんかったよな?どうも慣れへん…悪気は無いんや、すまん!」

齋藤は目を丸くして強く首をふり山崎の肩を叩いた

「気にせぇへんっていいたいんか?なんとなくわかるわ、でも痛い時は我慢する必要あらへん、俺にちゃんといいや」

齋藤は両手でガッツポーズをしたが痛みを感じたのか少し苦痛な顔をした

「あかんど?無理したら…でも大変やったな、俺は指揮車から見てないしよー知らん…でもなアンタら精一杯やったと思うで、誰がなんと言おうと俺の仲間はすげぇんやと胸張って言える。1つ教えといたるわ、医者やってるとな?どんなに助けたいと思って治療してもどうしても無理な人を送らなあかんねん、気持ちや技術ではどうにもならんのや。それはもう運命やったんや、その人にとっての…だからな?芹沢はんの事をあんたが気に病む事ない、あの人はああいう運命やったんや。」

話を聞き終わる前に杖をついて治療室を出ていこうした齋藤に

「齋藤はん、近藤はんの事守ってくれてありがとう」

深々と頭を下げた

チラッと齋藤は山崎を見て会釈して治療室を後にした


ちょうどその時訓練所から土方、永倉が帰ってきた

土方は汗まみれだったどうやら射撃訓練ではなくトレーニングをしていたのだろう、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出しがぶ飲みした、そんな時山南が土方に話しかけた

「土方さん、僕にも銃の練習教えてください」

「ダメだ」

「なんで?僕が弱いから?撃てないから?」

「違うな、心ここに在らずな奴が銃なんて触るな、人を守る物でもあるが扱いを間違えれば自分自身や仲間に被害が及ぶ最悪事故で死ぬんだ、憂さ晴らしに訓練を使うな」

沖田が食ってかかった

「そんな言い方ないでしょうよ?!」

「事実だ」

「土方さんの言う通りだよ沖田、山南の訓練したいって気持ちは買うけど落ち着いてからにした方がいいよ」

納得いかない顔をして山南はまたFPSゲームを始めた


共有スペースのドアが開いた

「ただいま」

近藤だった


真っ先に近寄ったのは土方だった

「お疲れ様ですらどうでした?査問委員会は?」


「結論から言う…お咎めナシだ」

「え?本当ですか?!」

「あぁ、鴨さ…芹沢はMIA、その事については詰められたがな、部隊を作ったのは芹沢で承認したのは平岡だ、あまり突っつかれても面倒だったんだろう。増員はしろと達しがきたがそれに伴い予算も増えた、おそらく口止め料だ」

そう言うと近藤は山南に近づき優しく頭を2回叩いた

「お前のおかげで全員助かったんだ、お前がベストを尽くした結果だ。もっと自分の仕事と自分自身に誇りを持て、良くやった、ありがとうな 」


「…近藤さん…ありがとう…グスン…」

山南に声を掛けたあと土方永倉にアイコンタクトをした

察したのか永倉はキッチンへ土方は自室に戻っていった

「少し風にあってくる」

近藤が屋上へ向かった

沖田が頭を掻きながら山南の肩を叩いた

「お前褒められたじゃん、良かったな」

「うん…グスン…グスン」

「いい加減泣くなよ」

「…うん、沖田もありがとう…」

「訓練くらい付き合ってやるから、いつでも言えよ」

そう言い終わると山南は沖田に寄りかかり沖田は場が悪そうにした



近藤の手には青い色のなかなか見ない洋モクタバコの箱を持っていた


信念…

鬼になれか…

鬼にだって色々いるじゃないか

俺はこういう生き方しかできない

右手で持っていた洋モクタバコの箱を潰しポケットにしまい高層ビルに反射した1日の終わりを告げる夕日に目をやった


「お疲れさん!」

屋上階段かは声がしたので目をやると杖をついた齋藤と山崎がいた

「イチ!無理するなと言っただろう?」

齋藤はマスク越しでも分かるくらい口を膨らませていた

どうやら帰ってきたのに何も言わなかった事怒っているみたいだ

「帰ってきたんやったら声くらいかけや、永倉に聞いたらべっぴんはんが屋上行く言うてきかんかったわ」

「悪かったよ、イチ、山崎さん」

「ん?タバコ吸うんか?やめたん違うか?」

「吸わないよ、何となくここに立って見たかったんだ、さて、風が冷たくなってきたな」

「気ぃ済んだやろ?戻るでべっぴんはん」

「一緒に戻ろう?イチ」




俺にこいつらがいる

ならその時まで俺のやり方で足掻いてやるさ



ーーーーーーーーーーーーーーー

ドカッバキッドカッ

「この駄馬がぁ!誰がそんなことやれ言ったんじゃ!」

「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」


「吉之助、半次郎死んじゃうよ?」


「教育してやっとんじゃ!駄馬には躾が必要だろう!」

疲れたのか砂の入った袋を投げ捨てた


「いいか?暗号化してもそんなもんバレるんじゃ!100歩譲ってそんなもんらワシがどうとでもしてやる、だがな?お前が言う奴は自分の死すら利用するんだ!表向きに死なれたらワシら側が裏でかち合う事になるんだぞ?そんな事も分からんか!親父共々頭が悪いな!出来損ないの駄馬め!」


「せっかく弟になれたのに…先生は分かってたのかもね…残念」


「失望させてすみませんすみません…」


「お前は余計な事するなよ!ワシのやり方をよう見ちょれ!」


これから東に行くことも増えそうだ

筋だけは通しとかんと面倒だ

西郷はスマホを操作し電話をかけた


「おぉ先生ですか?ワシです、ちょっとこれからそっちに行く事も増えそうなのでご挨拶にご一報差し上げた所存です、…ええ…ええ…ええ…なーに厄介事はしませんよ、そっち行ったら一席設けるんで…それでは…平岡先生」



ーーーーーーーーー了ーーーーーーーーーー


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