少女の心は、夜闇に紛れて
そんな街灯が照らすひんやりとした九月下旬の道を、
「もう、買い忘れないでよ・・・・」
せっかくの休日、いつも練習ばかりで拘束時間の多い
だが、リビングで放心していたのが悪かった。せめて自室で放心していれば、母親に捕まることはなかったのに・・・。
先週のこともあり、
とぼとぼ、と普段の彼女からは考えられないほど、重く不安定な足取りだ。
無意識にもため息が零れる、ここ数日は、いつも
「忘れないと・・・・」
家々の隙間からのぞき見える夜空は、
そんな重さを跳ね返すように、一呼吸おいて小走りに駆けだした
「
こじんまりとした鉄の門を開こうとした時だった。
右隣、それほどまでに近い距離で、追いすがるように迫真に叫ばれたわたしの名前。
そこには幼馴染である
「
彼の装いは、驚くほど周囲と溶け込んでいて、気づけないのも頷けた。趣味の悪そうな、全身を黒の衣服で包み、同色である夜と、等しく溶け合っていたのだ。
そんな
「
忘れると決めたんだ。もう関わらないと決めたのだ。
いつまでも、もう追い続けないと決めたのだ。
けれど・・・・。
キィと軋む門を開いた時に、その右手を
「お願いだ。今、聞いてくれ。そんなに時間は取らせないから・・・」
その行動に、わたしは少し顔を歪めた。
「・・・別にいいじゃん。隣同士なんだし、明日でも・・・」
こう言ってはいるが、もう会うつもりはない。
「時間ならいつでもあるよ」
そんなものはもうない。
手を振り払おうとした
「今じゃないといけないんだ。・・・・・今、この前の話の続きを・・・言ってないことがあるんだ」
「・・・・・やめてよ」
冗談じゃないと思った。
この幼馴染は、分かり切ったことを更に言葉にして叩きつけようと言うのだ。
嫌がらせにも程がある。わたしは自宅の手前、怒りを鎮めて冷静に返した。
「自分勝手にするのもいい加減にしてよ。この前のことだって・・・・・ねえ
いつか好きになって貰おうと、振り向かせようと頑張ったけど、もう無理だよ。
それを痛いほど痛感して、わたしは失恋したのだ。
それを今更、再認識させるなど、悪趣味がすぎる。
「まだ言葉にしてない。それに・・・俺はまだ終わりにしたくない」
ふざけるな、そう思った。優柔不断なのも大概にしろ。
一度痛い目をみたわたしを、もう一度攻撃するなど、お前はそんなにもわたしのことが嫌いだったのか。
「だから聞いてくれ、俺は・・・」
こっちがどんな気持ちで終わりにしたと思ってるんだ・・・。
「俺は姉さんが好きだ!だからッ—————」
「嫌ッ!」
言ってほしくない。聞きたくない。
どうせ終わるならと、自分の手で終わりにしたのだ。
好きな人から終わりされるのは、すごくすごく痛い事なのだ。
そうして
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※
「少年は、隠れた心を探して、そして・・・」
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