そうして少年は、人を操ることを覚え・・・。
「はあー・・・。
ある男子生徒の呆けた声が、廊下の一区画で、周囲に影響を与えることなく、空しく消えた。
その視線の先は、人行く人へと手を振り返す
「おいバカ!誰かに聞かれたらどうする?!」
それを聞いて、言葉の意味に気付いた男子生徒のつれが、慌てて彼を制した。
「え?」
「
「ああ・・・・」
相手の鬼気迫る表情に困惑していた男子生徒は、その名前で得心がいった。
「付き合ってるんだったよな・・・正直、羨ましいよ」
「
「そうだな・・・それでも、やっぱり・・・」
「大人しく諦めろ。元々、雲の上の存在だったんだ。潔いのも、俺は美点だと考えるぞ」
「・・・そうするよ。それで、あの横にいる冴えない奴は?」
どこか一段、気持ちの沈んだ声で、
「あいつは・・・なんでも入学当初から
「そうなのか、それでも仕事とはいえ、その役回りは気分が良いだろうなぁ」
気弱に告げる彼だが、対する相手は、その意見に同意しかねるという風に、顔を顰めて、いつまでも
「あれが?ようは引っつき虫だろ、あんなの」
その言葉には、
◇ ◇ ◇
「
夕焼けの差し込む廊下で、二人の生徒が浮足立って、歩んでいた。
九月も上旬、夏の色香を静かに残した学び舎は、数時間前の活気とは裏腹に、どこか廃れた雰囲気を醸し出していた。
そんな鬱屈とした場所は、
「何言ってんの!学校帰りだからいいんじゃん!」
「
「
俺たちは
お互いに休日が重なったっことが分かったので、こうして出迎えに行っていたのだ。
「・・・・・・呼び方・・・」
「ん?ああ、すまん。使い分けてるから、ごっちゃになった」
「別に普通に名前で呼べばいいのに」
「呼んだら悪目立ちするんだよ。今も、ただでさえ俺は煙たがられてる」
「そんなの気にしないよ」
「お前がしなくても、俺がするの。わかって、
言尻にいじわるな語調で笑みを浮かべると、突如として振り返った
「やめて」
「ごめんごめん。ふざけすぎたよ、
「もう・・・正直、外面を浮かべるのも疲れるの。
たったと駆けだした彼女にこちらも続く、
だけれど、
「あははは!なんだそれ?あはははは!」
「ほんとだよ!嘘じゃないって!」
俺は
「・・・・・・」
俺たちが小人のように仲良く身を縮こませて視線を送った先には、
無人の教室、ふたりはまさかここに自分たち以外がいるとは考えもしないのか、ただお互いだけを見て、こちらに気付く気配はなかった。
それがどのようなものであるのか察した俺と
「
ふざけた様子でどこかの王様か長老の真似をした
「・・・なんでもないよ。
「じゃあ、わたしの買い物付き合って!CDでしょ、雑誌でしょ、あと服も見たいから意見を頂戴!」
その後はひとしきり、
前半はCD巡りだったので、編集側としては参考にするものもあったが、後半に至っては聞き流す程度に相槌を打っていた。
◇ ◇ ◇
次の日になって
「お、お邪魔します」
「ははっ。そんなにかしこまらなくていいよ。それに今は俺以外いないんだし」
高校に上ると同時に、佐々木家から離れ、元の自宅に戻ってきた。母親の仕事が落ち着いたというのもあるが、なにより
「そ、そう?」
片言気味にそう言いはしたが、それでも慎重に家に上った
今日も繋ぎとめておくための定期交流、適度に話を合わせて相手を持ち上げて、気分を良くさせ、また適度にいじわるをする。
飴と鞭を交互に、薬のように用法と用量を、細心の注意で、手さぐりに。
最初は本の話やら、彼女の趣味の話やらをするので、大変つまらなかったが、触れるうちに語彙が向上したので無駄ではなかった。紹介文などに使えるのだ。
そうして
ピンポーン!とインターフォンが鳴った。
「
(おっと、これはまずい)
前方には無邪気に笑う
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※
次回『そうして他人を壊した。』
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