俺の全てはその歌に。
次の日から、俺は必死に
町内イベントのステージ参加、その他、多様なボイストレーニング法をネットから引っ張り、公式サイトを設立。その他複数のSNSのアカウントを作成、同時運営した。
それでも、中学目前の、それも設立直後の反応は、見て居られるものではなかった。
幼馴染を売り込むと意気込んだものの、
視聴されるほうが珍しいという状況だったのだ。
あまりの反応の無さに気恥ずかしくなったのか、
いくつか部屋で動画を撮りながら、試行錯誤の毎日。
一番手ごたえが良かったのは、全国で開催されるのど自慢大会だった。
県予選で準優勝、それでも十分すぎる結果だ。
「この路線で行こう。
その結果もついてか、
俺たちの練習場所は、
大会を基軸にその他にも賞金イベントに参加、各種動画サイトやSNSも、先の大会で運営に頼んで行った宣伝が功を奏したのか、少しの盛り上がりを見せた。
それでも吹けば消えてしまうような視聴数だったが・・・。
だからだろう、中学に上ってすぐには、冷やかしも受けはした。
「ねえ、
「わかる。なんか嫌な感じだよね」
「見てよこれ、超下手くそだよ。これならわたしがやったほうが良くない?」
「うわ、なにこれ」
「出来もしないくせに夢見ちゃって、ほんとうにバカだよね。可哀想」
そんな周囲との隔絶にも屈することなく継続できたのは、
「おい、お前ら。
甘い顔から、鋭い視線と言葉が飛ぶ。その言下を追って、少女二人が弁明する。
「は、
「う、うん。わたしたち、
そうやって俺たちの壁になってくれたから、俺たちは安全にただ努力することができた。
機材は全て借り物ではあったが、それでも一畳の部屋からここまで来たのだ。
中学三年、受験を考える頃には軌道に乗って、それなりの知名度を得ていた。
「すごいじゃん、
「応援するよ!
「ありがとう、ふたりとも」
教室の反対側でもみくちゃにされる
窓際でそれを見ていた。
「けっ!都合のいい奴らだぜ。二年も前だったら、
「気にする必要はないよ。いいじゃないか、今が平和なら。それも
「はんっ!有象無象は見る価値無しってか!さすがはプロデューサー様だな!それなら
「それはお前が守ってくれたからだよ、
「うるせえ、8年間もおもりさせやがってこの野郎」
だけれど、そうして得た平穏は一時で、次には新たな苦難が待ち受けていた。
それは高校受験だ。
「
「いや、俺も一芸だ」
俺たちの通おうとしている高校は、少し特殊で、一芸入試なるものがある。
通常の受験とは違い、並外れた身体能力と運動センス、もしくは、桁外れな才能を持つ者を発掘する競争型のテストだ。
もちろん
「え?でも
だから彼女にとって、俺もそこを受けるのは、予想外だったのだ。
我が幼馴染ながらひどく恩知らずなことを言うなあと思いながらも、
「まあ、なんとかするよ」
そう、何とはなしに答えた。
それに、手を打たないわけにもいかなかった。
一応の安全策、滑り止めも準備しておかなければ。
そうして来たる受験日に、幼馴染三人が校門の前で集まり、俺が言った。
「今日受かって、お祝いにカラオケに行こう」
「
「わたしは楽しいよ」
「でしょうね」
はあ、とため息をつきながら、諦めた表情をした
「もう長いこと面倒見て来たんだ。今更三年ぐらい追加されったって、変わらねえよ。お前ら、絶対に落ちんじゃねえぞ」
その一言を残して、大きな背中は、グラウンドに向かっていった。
それとは反対方向に、俺と
そうして、俺たちはそれぞれの会場に向かった。
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※
次回『ならば俺は〝悪〟でいい。』
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