そうして壊れてしまった心 上
高校生になって、夏が来た。華の女子高生というやつだ。
高校生活もそれなりに無難に過ごしたわたし、
「ねえねえ、海行こ!」
「いいね!」
「花火しよ!」
「いいね!」
打ち上げ花火、
夏の
「
「笑ってるよ!」
「嘘だあ!」
「嘘じゃない!」
あははははは、と少女たちの笑みが躍る。
ごおごおという風に乗せて、蒸し暑い夜空に。
「夏祭り!」
「りんご飴、金魚すくい!」
「フライドポテト!」
「おいしいけど、らしくない!」
「けれど最高!」
浴衣姿ではしゃぐ女子、箸が転がるだけでおもしろい年頃。
わたしの開いた空白を埋めてくれる、あたたかい過去。
戻ってきたのだ。
◇ ◇ ◇
「え?
「う、うん・・・」
気恥ずかしいそうに頷くのは、わたしたち四人グループ、そのうちの一番気弱そうな女の子、
少しヒステリック気質のある子であったが、一番に彼氏抜けするのは、意外だった。
「ねえねえ、どっちから?どっちから
「
「え?なんでなんで?なんで受けちゃったの?
「それは・・・・」
言い淀む
「すごく、積極的だった」
「「「キャア———————ッ!!!」」」
「も、もう!茶化さないで!」
かわいく怒る
そんな浮かれるわたしの袖を「ねえ」と、横から引く友達。
「一緒に
「えー?」
180センチは超える身長に、がっしりとはしているが、見た目は細マッチョ。その上に、ちょこんと甘いマスクが乗っている。まあ、学校のトップイケメン。雲の上の存在だ。
まあ、わたしも新しい恋を始めるべきだった。むしろ遅すぎるくらいだ。
その日から、前から悪くは思っていなかった
◇ ◇ ◇
その場に居合わせたのは、たまたまだ。
自販機帰りに、化学準備室の前に通った時だ。
「ちょいちょい!
「ん?・・・いいのか?」
「だって怪我してるじゃん!」
わたしが
「知ってたのか?」
「うん。ちょっと袖から見えたし」
彼の手首には、テーピングが巻かれていた。
「・・・・悪い」
うちの化学教師も、なかなかに酷なことをさせる。
それだけなら、それほどの重さではないのだが、意地悪なことに、痛そうな鉛のスタンドが入っている。これがこの箱のほとんどの重量だ。
そうして雑談交じりに二人で教室に戻る。
その途中、階段を上っている時だった。
「ああ、なんだか、お前といると安心するよ」
「何それー?あははは!」
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※
次回『そうして壊れてしまった心 下』
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