雲が晴れれば〝星〟が見える。

浅井あざい遥斗はるとには全てがなくなったのだが、不思議と心は晴れやかな気分であった。


おもむろに体を起こした彼は、若菜わかなの部屋の前を訪れた。


別に何かしようと思っていない。

部屋の前で、ただ膝を抱えて座っただけだ。


何を考えるわけでもなく、熱を求めて。


少しでも、あの時への繋がりを感じたかったのだ。


(ああ、そういえば昔は同じ部屋にいたんだっけ・・・)


よく母親に部屋をわけた意味がないと怒られたものだ。


今ではその景色がすごく懐かしい。


もうなんのしがらみもないし、戻れないのかな?・・・・・戻れないか。


あの夏の日に引き上げてくれた手と笑顔は、もう望めないのかな?


戻れないとはわかっていたけれど、ならせめて———————。




ああ、あの夏の日々のせてしまった記憶が、細部から冷めていく。


10月の冷気が、少しずつ体温を奪う。


最後のひとつが消える。





終わるなら、せめてここがいいな——————————。



こうして、近くであなたの下へと帰って・・・・。






そうして、ゆっくりと目を閉じた時だった。


暗闇の廊下で、部屋の中から声が聞こえてくるのだ。




しくしく、しくしく。


しんしん、と、しんしん、と。



重く、落ちる、嘆きの声。



大切な人が泣いている。





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————————————————————————やらなければ・・・・・・・。








遥斗はるとは将来、どんな人になりたい?』


歯を食いしばって立ち上がった遥斗はるとはスマホを取り出して、通話をかけた。コール音が、耳に響く。


「僕は・・・・」


諦めるわけにはいかない。


こんなところでは終われない。


気持も伝えていない。言葉も尽くせていない。


こんな終わり方なんてクソくらえだ。


なにより・・・・・。


明日華あすか、頼みがある————————」


僕が目指した〝星〟は、

こんなところで諦めることを許してはくれない。




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次回「ここに宣言する。」

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