ここに宣言する。

大き目のリュックサックに荷物を詰め込んだ遥斗はるとは、家出の準備を終えた。


それは母親、ひいては病院から逃げるためだ。


こんな状態で問診などされてしまえば、安静、ひどくて入院が確定なので、意地でも回避しなければ。


だけどその前に・・・。


「姉さん・・・」


遥斗はるとは再び、戸を叩いた。


「さっきはごめん。俺もあんなの見せるつもりはなかったんだ」


遥斗はるとの謝罪に、室内から息を吞む声が聞こえた。

それでけで、遥斗はると若菜わかなが話を聞いてくれているとわかり、会話を続ける。


暖かく、努めて優しく。


寄り添うように。


「・・・さっきの話だけど、やっぱり姉さんには見てほしいんだ。俺がやる、


彼女には、絶対に見てもらわなければならない。


「もしかしたら姉さんは、もうそれが嫌いなのかもしれない。もう目にも入れたくないのかもしれない」


これからすることに、姉の存在は不可欠なのだ。


「だけどあなたには必ず見て貰わなくちゃいけない。・・・・・・その結果、俺はあなたを傷つけるかもしれない。


人に良し悪しや好き嫌いがあるように、触れてほしくない場所もあれば、言葉にしてほしくないこともある。


それは千差万別で、もう何を話そうとも避けられないのだ。

僕たちは言葉を発するだけで、他人を傷つける。


それはいけないことだ。忌避すべきことだ。


でもそれでは・・・・。


「俺だってそうだ。・・・俺は姉さんに危害を与える」




「傷つけます叩きます攻撃します貶します踏み荒らします、あなたの傷口を抉って二度と治らない傷跡を与えます。けれど・・・・」


それでも・・・・。


「けれど絶対に嘘はつきません」


そうなのだとしても、あなたにもそれを見せてあげたいから。


「もう怖がったりしません」


世界と世間は、数え切れないほどのしがらみが多くて厳しいけれど、広いんだって知ってほしいから。


「僕を信じてください」


もう一度、隣を歩んでください。

もう一度、あなたの好きなモノを信じてください。


「迷ったっていいから」


もう一度、あなたの勇気を僕にください。


「話をしよう。姉さん」


知らなくてはいけないから、絶対に後悔させないから。


好きだったあの場所に、あなたを必ず還してみせるから。


たとえ俺は戻れないのだとしても・・・・。




言葉を言い終わった少年は、戸より背を向けて、強く、軽やかに歩き出した。


その先が、明確に終わりだろうとも、彼はためらうことなく歩き出した。


これは呪いではないと、謳うように。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~ Grand Finale ~~

「🔳🔳🔳🔳🔳🔳🔳」

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