ここに宣言する。
大き目のリュックサックに荷物を詰め込んだ
それは母親、ひいては病院から逃げるためだ。
こんな状態で問診などされてしまえば、安静、ひどくて入院が確定なので、意地でも回避しなければ。
だけどその前に・・・。
「姉さん・・・」
「さっきはごめん。俺もあんなの見せるつもりはなかったんだ」
それでけで、
暖かく、努めて優しく。
寄り添うように。
「・・・さっきの話だけど、やっぱり姉さんには見てほしいんだ。俺がやる、俺と姉さんの好きになったモノを」
彼女には、絶対に見てもらわなければならない。
「もしかしたら姉さんは、もうそれが嫌いなのかもしれない。もう目にも入れたくないのかもしれない」
これからすることに、姉の存在は不可欠なのだ。
「だけどあなたには必ず見て貰わなくちゃいけない。・・・・・・その結果、俺はあなたを傷つけるかもしれない。でも俺たちはそういう生き物なんだ」
人に良し悪しや好き嫌いがあるように、触れてほしくない場所もあれば、言葉にしてほしくないこともある。
それは千差万別で、もう何を話そうとも避けられないのだ。
僕たちは言葉を発するだけで、他人を傷つける。
それはいけないことだ。忌避すべきことだ。
でもそれでは・・・・。
「俺だってそうだ。・・・俺は姉さんに危害を与える」
それでは誰も言葉を発せなくなってしまう。
だから僕たちは他人を傷つける生き物なのだ。
「傷つけます叩きます攻撃します貶します踏み荒らします、あなたの傷口を抉って二度と治らない傷跡を与えます。けれど・・・・」
それでも・・・・。
「けれど絶対に嘘はつきません」
そうなのだとしても、あなたにもそれを見せてあげたいから。
「もう怖がったりしません」
世界と世間は、数え切れないほどのしがらみが多くて厳しいけれど、広いんだって知ってほしいから。
「僕を信じてください」
もう一度、隣を歩んでください。
もう一度、あなたの好きなモノを信じてください。
「迷ったっていいから」
もう一度、あなたの勇気を僕にください。
「話をしよう。姉さん」
知らなくてはいけないから、絶対に後悔させないから。
好きだったあの場所に、あなたを必ず還してみせるから。
たとえ俺は戻れないのだとしても・・・・。
言葉を言い終わった少年は、戸より背を向けて、強く、軽やかに歩き出した。
その先が、明確に終わりだろうとも、彼はためらうことなく歩き出した。
これは呪いではないと、謳うように。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※
~~ Grand Finale ~~
「🔳🔳🔳🔳🔳🔳🔳」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます