手に入れた大切なもの。
「
僕は引っ込み思案で、いつも姉の後ろにいる、頼りない弟だった。
「うーん、とね・・・・・・わかんない!」
「わかんないかぁ~・・・」
背後では
「でもねでもね。僕、お姉ちゃんのことが大好きなんだ!」
「お~、嬉しいこといってくれるねえ~」
「うん!だからお姉ちゃんをお嫁さんにしたい!」
「う~ん・・・。それは難しいかなぁ。お嫁さんは
「
背後にいた
「僕は
「・・・・・・・」
「コラ!
姉のことが好きだから、何でも素直に言う事を聞いたのだ。
「ごめん
「・・・・・・・」
「コラ!
◇ ◇ ◇
「お姉ちゃん、なに見てるの?」
「うーん?」
小学校低学年の頃だった。
姉はいわゆる〝そっち系〟の趣味に傾倒していた。
姉の手元では、両手にサイリウムを持った数人が、腕を振り回していた。
「綺麗でしょ?」
当時の姉の声音が、いつもより一段は高かったことを、よく覚えている。
「・・・・・・」
ふたり並んで寝そべって、それを見た。
自身の手元に落ちる姉の目は、期待と希望に満ちていた。
姉の目もキラキラと輝いて、彼女の手元もキラキラと輝いていた。
僕は、〝星〟に囲まれた。
この時だ。僕に目標が産まれたのは。僕も、こんな風に・・・。
「僕もこんな〝星〟になりたい!」
そう、僕は〝星〟を追いかけていたのだ。
川に落ちて、引き上げてくれた姉の笑顔、その〝星〟を愛したのだ。
◇ ◇ ◇
「たまに、自分が間違えているって、考えることがある」
中学に上って、僕の中にあった弱音が漏れた。
「
彼女が心を開いてくれた。そうやって、彼女が僕に弱さを見せてくれたところがあるかもしれない。
返ってきた言葉には、安堵の気持が大きかった。なんだか罪を隠してるみたいで、僕は疲れていたのだ。心のどこかで、この気持ちを認めてほしい部分があった。
「
「・・・そ、・・・そう、なんだ」
けれど
「・・・なんでわたしに?」
「君には言っておかないとって思ったから」
姉への気持ちを誤魔化すために、何度も彼女に好きと言った。
その好きで勘違いをさせた、その言葉で幾度も彼女を惑わせた。
責任はとらないといけないから。
俺は最低だ。もうこれがこれまでへの義務なのか、内から漏れる本当の愛なのかわからない。
けれど、彼女に伝えなければならない。嘘ではないのだ。
だって、だって—————————————————————。
〝『ありがとう、はるちゃん。わたしも大好きだよ』〟
——————僕の中には君がいる。
——————じゃないとあの時、胸の中にいた女の子が、こんなにも大切に思えるはずがないじゃないか。
必ず帰ってくるからって、この〝好き〟に決着をつけて、君に〝愛してる〟と叫びに帰ってくるからって、伝えたかった。
「だから———————」
「言わないで!」
けれど、伝わらなかった。
拒絶された。俺は告白もさせてもらえずに、振られたのだ。
◇ ◇ ◇
次の日にあった
当然だと思った。だってそうだろう。
面と向かって二股を許してくれなんて言おうとしたんだから。
それでも彼女は、俺と友達に戻ってくれた。
彼女が俺を捨てずに、友達に戻ったのはなぜだろう・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※
次回『姉を嫌いになりたくない。』
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