第20話 閑話-スザンヌ&マリオン先生視点

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 スザンヌ先生視点


 ずっと後悔し続けてきた。

 私スザンヌはもともとこの学校の図書室を管理するために生み出された魔法生物だ。

 その仕事に不満はないし、むしろ楽しんできた。

 やってくる生徒達との交流、中にはとんでもないことをしでかす子もいたけど、全員愛すべき生徒たちだ。

 そんな生活に影が指したのは今から10年前のことになる。

 当時から副学長をしていたユベール先生の秘密を知ってしまった。彼は、魔神の召喚を目論む邪教の一員だったのだ。

 当然、私はそのことを学園長であるギー先生に報告しようとした。

 しかし、その前に私は捕まってしまって、契約を結ばされた。

 それ以来、ユベール先生の手として悪事に手を染めてきた。直接手をかけていたわけではないけど、生徒を誘導したりさせられた私も同罪だ。

 好きだった生徒の交流が段々と辛くなってきた。

 私のそんな雰囲気を感じたのか、図書室の利用者は段々と減っていった。

 そして、今年もユベール先生は生徒を拐かす計画を立てている。

 自分にできることは何もなかった。


 そんなある日、私は一人の子の存在を知った。

 サラちゃん、サラ先生はあのカレンちゃんの娘だと言う。

 長いこと司書としての仕事をしてきたが、あのカレンちゃん以上に心に残った生徒はいない。

 カレンちゃんにさえ伝わればきっと今の状況もなんとかしてくれる。

 どうにか、彼女に事情を伝えられないだろうかと必死で考えた結果があの夢を見せる香りの魔法だった。

 幸いにも、珍しく図書室に通ってくれた子がいたおかげで、どうにかサラ先生と繋がりを持つことができた。

 もっとも、パウラちゃんとは相性が良すぎて、ひどく悩ませてしまったみたいだけど。

 見ていてすぐに分かった、サラ先生は賢い子だ、きっと母親であるカレンちゃんに伝えてくれるだろう。

 そう思っていた。

 だから一人でやってきたのにはとても驚いた。

 そして、まさかサラ先生自身が私とユベール先生の契約を破棄してくれるなんで誰が想像できただろう。


「さて、これでやっとお話ができるようになりましたかね。詳しい話を聞かせてください」


 そう言ったサラちゃんに私は全てを話した。全てを話したあとのサラちゃんの反応は。


「あー、やっぱりユベール先生でしたかぁ」


 となんとも気の抜ける返事だった。

 カレンちゃんに連絡をと言う私を遮ってサラ先生は一人でユベール先生に挑んだ。

 ユーベル先生は副学長になるにふさわしい実力の持ち主だ。

 しかし、それをサラ先生は子供をあやすかのごとく翻弄する。

 ユーベル先生がその身を犠牲にして悪魔を召喚したときには凄く驚いたけど、それ以上に何事もなかったように悪魔と戦うサラ先生にびっくりした。

 それからも、巨大な石が雨のように降ってきたり、それを一瞬にして消し去ったり。驚きの連続だ。

 最終的に何故か黒猫を抱えて降りてきたサラちゃんの姿はもはや笑うしかなかった。

 さすが、あのカレンちゃんの娘。いや、違う。カレンちゃんは関係ない。

 さすがサラ先生は凄い先生だと、私は泣きながら笑った。


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 マリオン先生視点


 サラ先生が悪魔を倒してから一週間が経った。


「報告は以上です」


 私は、学園長であるギー先生に今回の件を報告していた。


「そうか、ユベールのやつ、そんな前から……」


 学園長が頭を抱える。

 無理もない、信頼していた右腕のユベール先生がずっと裏切っていたことがわかったのだ。

 ユベール先生はずっと昔から邪教の一員で潜入のために教員になったことがすでにわかっている。

 今は、そこから邪教の本体にたどり着けないかと調査をしているところだ。


「それにしても、邪神の召喚とは、邪教の考える連中はよくわからんの」


「まったくの同意見です」


 ユベール先生の部屋で見つかった記録によると、どうやら邪神は全ての魔法使いを滅ぼす存在として崇められているらしい。

 なんで、魔法使いであるユベール先生が自分たちを滅ぼす存在をわざわざ召喚しようとしていたのかはさっぱりわからない。

 調べようにも、ユベール先生の過去は全て消されていて、今はユーベルという名前そのものが彼の名前だったのかについてもわからない。


「まぁ、考えても仕方ないじゃろ。それで、校内の方はどうじゃ?」


 考えを切るように首を振って、学園長が私に聞いてくる。


「それに、関してはこちらの資料を。物質的な被害は皆無、精神的に少し影響が出た生徒もいましたが、今ではほとんど普段どおりに戻っております」


「サラ先生様々じゃのう。あの子が結界を張っていなかったら、とんでもないことになろうて」


 むしろ、あの岩の雨を見た時は、この私でさえここで死ぬと覚悟したくらいだ、生徒の同様は計り知れない。

 それを一瞬のうちに消してしまったサラちゃんはやっぱりとんでもない子だ。

 ……スペース・ブラックホールという魔法について聞いた時は流石に目眩がしたけど。

 あれを使って掃除とか正気の沙汰ではないと思う。今度カレンに娘の教育について話をしなければ。

 そんな決意を改めていると、


「さて、そんなサラ先生は今は何をしているのかの?」


 学園長が少し楽しそうに聞いてきた。


「サラ先生は……」


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本日は2話更新となります。

最終話の21話は今日の17時頃公開になります。

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