第19話 悪魔と戦った結果!

 うーん、思ったよりは弱いかな?

 炎の魔法を避けながら私は考える。

 確かに、魔法の威力は強い。さっきの炎の魔法なんて当たってしまったら、普通は無事に済まないだろう。

 だけど、攻撃の仕方がなんていうか下手くそだ。強い武器を持った子供ががむしゃらに攻撃しているような感じ。

 工夫も何もない攻撃なんて当たらないよ。

 今だって、攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか、直線的に突っ込んできた。

 それを軽くいなして、背後から爆発魔法を叩き込む。背後からの攻撃を悪魔は避けられずに吹き飛んだ。

 悪魔は地面にあたり、砂埃が舞う。

 私は追撃をかけずにその場で待った。流石にこれでは終わらないでしょう。


「おっと」


 案の定、砂埃から魔法が飛んできた。

 砂埃が晴れると何事もなかったように悪魔は宙に浮いていた。

 どうやらまだやる気の模様だ。

 でもこれで力の差はわかったでしょう。どうするかな?

 杖を構えて相手の出方を伺っていると悪魔は予想外の行動に出た。


「うん?」


 悪魔は杖も詠唱もないはず、なのに手を突き出してなにやら唱えている感じだ。

 何をする気だろう。

 警戒をしていると、不意に暗い影がさした。


「キャーッ!!!」


 同時に、悲鳴が聞こえた。

 上を見ると、そこには1メートルは石が降ってきている。

 それも、一つではなく、何個も何個も。まるで岩の雨みたいだ。

 間違いなくさっきの悪魔の詠唱によるものだろう。


 あー、流石にあれはやばいかなぁ。

 私の魔法結界は魔法には強いけど、物理にはそこまで強くない。

 あれがぶつかったら壊れちゃうだろう。

 一番手っ取り早い方法はあの岩を全部破壊することだけど、変に壊して欠片が飛び散ったりすると困るなぁ。

 だったら、この魔法にしよう。


「……『スペース・ブラックホール』」


 杖を構えて私は呪文を唱えた。

 ブラックホールという魔法はその名の通り、なんでも吸い込んでしまうブラックホールを生み出す魔法だ。

 とてつもなく危険な魔法で、周囲にある物を全て吸い込んでしまう。

 ちなみに、魔法書の10巻の一番最後に書かれていた魔法になる。書いた人には、そんな危険魔法載せるなと言いたい。

 そんな魔法を使ったりなど当然できないので、私は杖の振り方と呪文を少し変えて、ブラックホールの生成と同時に結界を生み出すようにした。

 スペース・ブラックホールは私が作った魔法だ。このスペースは宇宙じゃなくて、空間のスペース。範囲内のものを何もかも飲み込むとても便利な魔法だ。

 流石にこの魔法を掃除に使ってたらお母さんに怒られたっけ。

 私の放ったスペース・ブラックホールは一瞬にして私の定めた範囲内の全てを飲み込んだ。

 岩はもちろんだけど、間違って雲まで飲んじゃったから太陽が眩しい。ぽっかりと空いた空に思わず手をかざしてしまった


「おっと、戦闘中だったね」


 思い出して、悪魔の方を見ると、呆然と私の事を見ていた。

 目が合った瞬間、ビクッとする。


「『バリア・バインド』」


 逃げる気配を感じたので、即座に魔法を使って拘束する。

 これも私の作った魔法、魔法を一切通さないバリアを使った拘束魔法だ。

 ここまで戦った結果、あの悪魔は魔法こそそれなりに強いけど、物理の方はそこまでじゃないみたい。

 だから、壊される心配のないこの魔法が最適だった。


「はてさて、どうしたもんかなぁ」


 完全に拘束した悪魔の目の前に行って考える。近づいた私に悪魔がビクッとした。

 流石に放置するわけにはいかないんだけど、こう……ここまで怖がれると倒しづらくなるね。

 マリオン先生に引き渡し……いや、駄目だ。

 流石に拘束が溶けたら危険だ。せめて引き渡すにしても、戦力は削いでおかないと。


「よっし、じゃ、『ドレイン』!」


 相手の魔力を吸収するドレインで悪魔の魔力を奪ってしまうという計画だ。

 幸い私の魔力量は多いから、どれだけ吸収しようと問題ない。

 なんとか拘束から逃れようと身を捩っていた悪魔だったが、次第にその動きが弱っていく。

 シャロンもそうだったけど、魔力が急激に減ると苦しいらしいんだよね。

 ある程度吸収したところで魔法を止めた。悪魔は完全にぐったりしている。

 やばいやりすぎた!?ちょっとだけ私の魔力を分け与えてあげる。

 うん、残り魔力も一年生の魔法使い以下。これなら、なにも出来ないでしょう。

 それじゃあ、拘束を解いて、と思ったところで、


「あれ?小さくなってない?」


 悪魔の身体に変化が起こっていた。身体が段々と小さくなっていっているのだ。


「なんで?タイミング的には魔力を吸収したからだろうけど」


 私が考えている間にも、悪魔の身体は小さくなっていく。

 2メートル以上もあった身体が、普通の一般人、子供……さらに小さくなる。

 そして、同時に形も変わっていく。

 人形だった身体が、次第に4つ足の獣のような姿になっていく。

 これ、どこまで小さくなるんだろう?このまま消えるとか?

 なんてちょっと心配になったけど、やっと縮むのが止まった。

 最終的な姿は、


「……黒猫?」


 どこからどう見ても猫だった。表情なんかなかったはずなのに、しっかりと顔が生まれている。

 金色の目が光っている。

 その元悪魔の黒猫は私の方を見ると。


「にゃーん」


 平服するように頭を下げたのだった。

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