第17話 悪魔召喚!

「あー、やっちゃったなあ」


 かっこよく推理を披露してたのは間違いだったかぁ。

 まさかユベール先生とそんな縁があったと思わなくて、びっくりしちゃったよ。

 先に杖奪っておくんだった。


「サラ先生!」


 落ち込んでいると、上から声がした。


「スザンヌ先生。すみません、逃げられました」


 上から降りてきたのは、ふわふわと浮いたスザンヌ先生だ。


「仕方ないわよ、ユベール先生はあれでも歴戦の魔法使いだもの」


 そうだったんだ、でも、今回のは単純に私のミスだ。


「とりあえず、スザンヌ先生は学園長に報告をお願いします」


「わかったわ」


 スザンヌ先生とユベール先生の間に結ばれていた契約は私が破棄してある。

 今の契約者は私だ。

 私の指示に従って、スザンヌ先生はすぐさま飛んでいった。


「さて、私はユベール先生を追おうかな」


 事前に逃げられる可能性を考慮して、この学校の外には出れないような結界を張っておいた。

 だから、ユベール先生はまだこの学校にいるはずだ。


「『トレース』!」


 そして、追跡の呪文でユベール先生の転移先を確認する。


「うーん、あれ?ここは?」


 ユベール先生の転移先はグラウンドだった。隠れるようにしているに違いないと思ったんだけど、目立つ場所にいるのは予想外だ。


「ひとまず追おう」


 グラウンドに立った私は一息ついて、目の前にユベール先生に声をかけた。


「残念ながらそれで邪神は呼び出せませんよ?」


 ユベール先生は水晶玉を握りしめて呪文を唱えていた。

 見てわかった、邪神を呼び出すつもりだ。


「邪神を呼ぶほどの魔力が足りないのは承知の上だ!ならば邪神とまで行かずとも最上級の悪魔を召喚するのだ!」


 ユベール先生が叫ぶ。

 いつもの余裕な表情とは裏腹、目が血走っている。

 なるほど、逃げられないことを悟って、ぶち壊しにかかったわけか。

 だけど、残念。


「果たして、最上級悪魔を召喚するのに果たして魔力が足りるんですかね?」


「なんだと!?」


「そもそも、友達が魔力を吸収されているのに、何も手を打たない私じゃないですよ」


 具合を悪そうにしている、シャロンを見て私は状況を察した。

 何者かに、魔力を吸収されている。だったらそれを妨害すればいい。


「生憎と、シャロンの成績が本当に悪そうだったので、補講自体は止めませんでしたが。それでもやりようはあるんですよ」


 シャロンが補講がある毎朝、私はシャロンに魔力を与えていた。

 私がシャロンに魔力を与えたのは、シャロンが辛くなくなるようにともう一つ理由がある。それは後で回収しやすいようにだ。

 私は杖を構えた。


「私の魔力は返してもらいますよ」


 自分の魔力であればたとえ触れていなくても、回収することができる。


「くそっ!魔力が!」


 水晶玉からは先程の濃さは失われて、ユベール先生が焦っている。


「さて、終わり、ですかね?」


 杖の先をユベール先生に向けた。


「こんなところで、こんな小娘に我々の計画を狂わされてたまるか!」


 ユベール先生が叫ぶ、同時に水晶玉を上に放り投げた。

 思わず、その水晶玉を目で追ってしまった。


「魔力が足りぬなら私の命ごと持っていけ!」


 ユベール先生が杖の先を水晶玉に向ける。


「っ!『ウィンド・ブロウ』!」


 私がユベール先生に杖を向け、吹き飛ばし魔法を放ったが私の魔法はユベール先生の身体をすり抜けた。


「この生命!我らが教団の夢のために!!」


 徐々に透明になっていくユベール先生が叫ぶと、その身体が光って霧散した。

 光は水晶玉に吸い込まれる。

 水晶玉はユベール先生の魔力を受け取り、禍々しく光って浮く。


 ゴゴゴゴゴッ


 急に低い音が聞こえてきた。続いて、かすかな揺れを感じる。

 地震?いや、大気全体が揺れている感じだ。


「サラ先生!」


 宙を睨んでいると後ろから声が聞こえた、こちらにかけてくる影。


「マリオン先生!」


「サラ先生!失敗したのですか!?」


 マリオン先生には、予め一連のことを話してあった。

 危険なことはするなと怒られたけど、私相手が一番油断するだろうということで強行した次第だ。


「まさか、自分の命まで犠牲にして召喚に入るとは思いませんでしたよ」


「そんな!邪神の召喚が始まったということ!?」


「いえ、流石に邪神までは魔力が足りない様子でした、でも最上級の悪魔を召喚するとか言ってましたよ」


「最上級の悪魔!?」


 マリオン先生が悲鳴に近い声を上げる。

 その瞬間、水晶玉が弾け、その空間に黒い穴のようなものが開いた。

 その中から、真っ黒い人形が現れる。察するに、アレが悪魔なのだろう。

 人形だが顔は能面、そしてなにやらドロドロとした黒いオーラを纏っている。

 端的に言って気持ち悪い。


「あれは!あの時の!」


 その姿を見て、マリオン先生が叫んだ。見覚えでもありそうな感じだけど。


「危険です!あれは昔、カレンが辛うじて追い返した、最上級の悪魔です!」


 お母さんが?

 悪魔は叫んでいるマリオン先生と隣にいる私を認識すると、手を振った。

 その瞬間、爆発が起こった。

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