第14話 中間テスト!
私が作成した薬のお陰で、パウラさんが変な夢を見る回数はかなり減ったらしい。ちょっとした解除魔法的な効果も付与したのが効いたのかもしれない。パウラさんからは凄く感謝された。
しかし、まだ原因が判明したわけではなく、引き続き私の方で調査をしていた。
マリオン先生に聞いてみたところ、先生自身も比較的新しく教員になったらしく、学園長と副学園長くらいしか知らないとのことだった。
ただ、学園長は忙しい人で学園にいないことが多く、副学園長もなかなか忙しいということでまだ話を聞けていない。
マリオン先生には他に詳しい人がいないか聞いてもらっているところだ。
とはいえ、今はちょっと時期が悪い。
学生、そして教師にとっても一大イベントが迫って来ていたのだ。
それは……、
「それで、シャロン。勉強の具合はどうなの?」
「うっ、順調……じゃない」
マリオン先生からの言葉に、シャロンが苦い顔をする。
「大丈夫なの?2週間後には中間テストだけど」
そう、この学校に来てから初めてのテストが迫っていた。
「シャロン本当に大丈夫なの?」
マリオン先生別れて、一緒に学校に向かっている間にシャロンに聞いてみる。
「うぅ、多分……」
なんだかやっぱり自信なさげだ。
「パウラさん、正直なところどんな感じ?」
一緒に学校に向かっているパウラさんにも聞いてみることに。
「うーん、大体はなんとか赤点は免れると思うんだけど、一つ心配がありますね」
おっ?思ったより頑張ってる?
「一応部屋で私が教えてますから」
あ、そういうこと。
「なので、私が教えられるやつは多分、大丈夫なんですけど。天文学だけは私も苦手で……」
「天文学かぁ、先生は誰だっけ?」
「ユベール先生です」
あ、そっか、あの副学園長の先生か、そういえばそんなことも言ってたね。
「なんとかユベール先生もサポートしてくれてるみたいなんですが……」
パウラさんもシャロンの方を見る。見つめられたシャロンはどこか居心地が悪そうだ。
「な、なんとか、ユベール先生が補講してくれるらしいからなんとかなる、と思う」
シャロン、そんなことまでしてたんだ。というか、そこまで厳しいんだ。
私もマリオン先生の手伝いとかしててそんなことになってたの知らなかったなぁ。
「頑張ってよ。赤点取ったら後が大変なんだからね」
「うっ、わかってるよぉ」
こんなことは言いたくないけど、マリオンさんの
放課後、マリオン先生に頼まれた用事を終わらせた後、私は自分の部屋に帰るために授業塔を歩いていた。
「あれ?あれはスザンヌ先生かな?」
眼の前からこちらに向かってきているふわふわとした老婆は先日図書室で会ったスザンヌ先生だった。
そして、その隣にはシャロンの姿がある。
スザンヌ先生が私に気がついたらしく、手を振ってきた。
「こんにちはサラ先生。おかえりかしら?」
「はい、スザンヌ先生はシャロンは珍しい組み合わせですね」
流石に、スザンヌ先生が幽霊ではなく魔法生物とわかってからは怯えることはなくなったけど、シャロンはまだ苦手にしてた感じがしたけど。
「ええ、ちょっとユベール先生にお願いされてね。ずいぶん勉強を頑張ったらしくて念のため送っていくことにしたのよ」
そうなんだ。
「シャロン、大丈夫?」
「う、うぅ、大丈夫?」
シャロンの目はどこか虚ろだ。どうやら疲れて切っているみたいだ。
シャロンのこんな様子始めてみたよ、本当に天文学苦手なんだなぁ。
「サラ先生、シャロンちゃんのことお願いできるかしら?私はまたユベール先生のところに戻らなくちゃならなくて」
「はい、任せてください」
「それじゃあ、お願いね」
私にシャロンを預けてスザンヌ先生は戻っていった。
「シャロン、それじゃあ帰ろうか」
「うん」
うーん、本当に元気ないなぁ。あれ?よく見たら、魔力が減ってる?元気がないのもそれが原因かな?
「シャロン、ちょっと待っててね」
魔力が減っているなら分けてあげればいい。
シャロンの胸に手をおいて、その手からシャロンに少しずつ注ぐように魔力分け与える。
人によって許容量が違うから、溢れないように慎重にしないと行けない。多すぎたら多すぎたで、魔力酔になっちゃうこともあるからね。
魔力を注ぐと、次第にシャロンの目に光が戻ってきた。
「あれ?サラ?」
今更私に気がついたように、きょとんとする。
「おつかれさま、シャロン。ずいぶんと頑張ったみたいだね」
「うん?なんのこと?」
「勉強してたんでしょ?ユベール先生の補講してたんでしょ」
「そう、確かユベール先生のところで、天文学をやって頭使いすぎて……」
「スザンヌ先生に送ってもらったんでしょ?」
「そう、スザンヌ先生が来て……それから……あれ?」
シャロンが首をかしげる。
「それから、気がついたらここにいた」
ふむ?頭使いすぎたにしてはなんかおかしい?
でも、ひとまずシャロンを送ることにしようか。
「ほら、食堂行くよ。今日の夕飯はシャロンの好きなシチューじゃなかった?」
「そうだった!行かなきゃ!」
夕食に釣られて、走り出したシャロン。
私はその後ろ姿を見ながら、少し考え事をし始めていた。
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