第12話 魔法学園の図書室!
ここ、フィスニール魔法学園には色々な不思議な話がある。
その中でも、特別に不思議な話として代々語り継がれているのが『フィスニール魔法学園の七不思議』だ。
曰く、学園長室の額縁の裏には、秘密の通路があり、そこには魔法界を揺るがすお宝が眠っているとか。
曰く、何十年も前に教員が一斉に辞めさせられたという事件があり、その時に不満を持った教師が危険な魔法陣を残していったとか。
曰く、この学校には昔『稀代の天才』と呼ばれた魔女がいて、その魔女は密かに自分の後継となる者を探しているとか。
そういう噂話が沢山あるらしい。ちなみに、定番として七不思議を全て知った人間は消えてしまうらしい、というのもあるらしい。
「学生ってこういうの好きですよね……」
かくいう私も嫌いじゃない。特にここは魔法学園だ。秘密の通路とか凄く憧れるよね。
「あ、でも聞いた限りだと七不思議は7つ以上あるみたいです」
「あー、まぁ、そういうものもありますよね」
もはや、七不思議じゃないじゃないというのも定番のうちだろう。人によって知っている七不思議が違うとかね。
「私、そういう噂話が好きで、お姉ちゃん、姉にその話を聞いて図書室で調べ始めたんです」
「図書室ですか?」
「はい。あ、七不思議には図書室に関わる噂もあって。えっと、誰も知らない秘密の本棚があって、そこにはこの学校の秘密が全部載っているとか」
なるほど、そんな本棚があるなら、私も気になるかもしれない。
「私、本が好きなので、いつも時間を見て図書室に行くんですが、そういう本棚は見かけたことがなくて。あ、でも昔の校内新聞を見つけて、そこに七不思議が載ってたりしたんです」
「そこで、今のパウラさんに繋がりそうな噂が載っていたということですか?」
「はい」
ちょっと本題からずれてしまっていたけれど、つまり、その図書室で見つけた噂が気になっていると。
「同じ夢を見るようになった生徒の話が載っていました」
それは、
「今のパウラさんと同じ状況ですね」
「はい、でも、その終わり方があんまりいいものじゃなくて……」
「なるほど、ちなみに、どんな内容か聞いても大丈夫ですか?」
「次第に元気をなくしていって、最後には目覚めなくなっちゃうらしいです」
「それは……確かにちょっと怖いですね」
「ですよね!」
夢を見続けたらいずれ目覚めなくなってしまうかもしれない。パウラさんは私が思っていたよりもずっと怖い思いをしていたのかもしれない。
このタイミングで私に相談してくれたのは良かったと思う。
「シャロン、お手柄ですね」
「でしょ!」
なんか、シャロンが自慢気なのはよくわからないけど。
「ひとまず、その校内新聞というのを見に行ってみましょうか」
時間はまだある。詳細も気になるということで、3人で図書室に向かうことにした。
図書室は私達がいつも授業を受けている『授業塔』とは別の『特別棟』の中にある。私は普段授業塔しか使わないから、特別棟に入るのは初めてだ。
図書室に入ると、古い本の匂いがかすかに鼻を刺激した。
「広い……」
思っていた以上に沢山の本棚がある。奥が全然見えない。これだと、目的の本を探すのは一苦労だろう。
「あら?パウラちゃん?いらっしゃい。他の子は初めましてからしら?」
私が本棚に圧倒されていると、本棚の奥の方から優しげな声がした。
「あっ、スザンヌ先生!こんにちは」
スザンヌ先生?そんな名前の先生いたかな?
「ちょっと待っててね、今そっちに行くから」
不思議に思っていると、本棚をすり抜けて一人の婦人が顔を出した。
「ひえっ!?」
すり抜けた!びっくりしたけど、悲鳴を上げたのは私じゃない。
本棚をすり抜けてきた女性は笑顔で私達の前に立った。
「こんにちは。この図書室の司書をしているスザンヌよ」
「あ、はい。初めまして。サラです」
私が自己紹介をすると、スザンヌ先生はなにやら納得したように頷いた。
「あなたが噂のサラ先生なのね。どおりで凄い魔力を持った子だと思ったわ」
「えっと、私のことを知っているんですか?」
「ええ、もちろん。むしろあなたの事を知らない人はこの学校にいないんじゃないかしら?」
それはそうかも……私凄い目立つからね……
「そっちの子もお名前を教えてもらえるかしら?」
「ひぅ!」
シャロンはさっきから私の後ろに隠れている。
ひょっとして、ひょっとしなくとも、かなり怖がっているよね。でも、名前を聞かれたのに答えないのは失礼だよ。
私は、シャロンの前から移動してシャロンをスザンヌ先生の前に立たせる。
「きゃっ!」
「ほら、シャロン。ご挨拶」
「うぅ、シャ、シャロン……です……」
シャロンは震えながらもなんとか言い切った。
「シャロンちゃんね。あら?もしかしてあなたはマリオン先生の娘さんかしら?」
「……ママを知っているの?」
マリオン先生の名前が出たことで、シャロンの表情が少し和らいだ。
「ええ、もちろん。私はあの子が生徒の時から司書をやっているもの:
懐かしいわぁとつぶやくスザンヌ先生。
……うん。もういいか、気になっていたこと聞いちゃおう。
「えっと、スザンヌ先生は幽霊、なんですか?」
「!?」
幽霊という言葉を聞いてシャロンがビクッとしたのがわかった。
「あらあら。近いけれど、違うわよ」
うん?どういうことだろう?
「私は、魔法生物よ」
あ、なるほど。たしかに近いけれど違うね。
理解する私とは裏腹にシャロンが首をかしげていた。
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