第11話 魔法学園の七不思議!

 早いもので私がフィスニール魔法学園に来てから、1月が経った。

 私はというと、嵐を呼んだ教師ということで、変に絡まれることなく、平和な毎日を過ごしていた。


「あれ、先生じゃない?」


「えっ?本当、可愛い。飴あげるよ」


「じゃあ、私はチョコレート」


「みんな、そんなに上げたら先生太っちゃうでしょ」


「太った先生も可愛くない?」


「「それわかるー」」


 ……と、まぁ、そんな感じで上級生のお姉さま方には可愛がられている感じではあるけど。

 とりあえず、太るので餌付けはほどほどにしてください。


 授業も終わって、私は広間でシャロンを待っていた。朝に会った時に、何やら相談があると言われたのだ。

 シャロンとは、毎朝一緒に食事を取っている関係上かなり仲良くなったと思う。一緒にお出かけもしたしね。


「あっ!いたいた!お待たせ、サラ!」


 待ち人であるシャロンがやってきた。相変わらず元気がいい子犬みたいだ。

 そして、そんなシャロンの後ろには見覚えのある子がいる。いつも授業中にシャロンの隣に座っている子だ。

 名前は、


「紹介するよ、この子はパウラだよ!」


「パ、パウラです。よろしくお願いしましゅ」


 噛んだ。そうそう、パウラさんだ。ロングヘアーに片目が隠れているかなり、おとなしい感じの女の子だ。いつも本を抱えているのがとても印象的な小動物っぽい子だ。

 子犬っぽいシャロンとは同室だったかな?性格的に全然違う二人だけど、いつも一緒にいるから相性は悪くないんだろうね。


「ご存知だとは思いますけど、私はサラです。教師という立場ですけど、パウラさんとは同じ歳なので仲良くしてください」


 できるだけ、怖がらせないようにニッコリと笑う。

 どうも、私、可愛がられていることもあれば怖がれていることもあるみたいなんだよね。


「は、はいぃ」


 パウラさんには怖がれている模様。まぁ、シャロンに期待しておこう。


「それで、なにやら相談があると聞いたんですけど」


 シャロンに目を移すと、頷いた。


「なんかパウラが夢見が悪いらしいの」


 ……予想外の相談の匂いがするぞ?



「最近、夜に寝ていると同じ夢を見ることがあるんです」


 寮の談話室に移動して、落ち着くと、パウラさんはそう言って話し始めた。


「同じ夢ですか?」


 ちょっと雲行きが怪しくなってきた。


「は、はい。あ、毎日ではないですけど、結構な頻度になります」


 なるほど……


「どんな夢か聞いても?」


「はい」


 そうして、パウラさんは夢の内容について語ってくれた。



 その夢は、知らない地面の上で、寝かされている自分を見るところから始まる。

 寝ている自分の周りには見たことのない魔法陣が書かれていて、パウラさんは動かない自分を部屋の天井から眺めているような感じらしい。

 そこに、黒いローブの人が来る。

 黒いローブの人物は、眠っているパウラさんの額に手を当てて、呪文を唱える。


「そこで目が覚めます」


 あ、そこで終わりなんだ。

 うーん、悪夢と言えば悪夢っぽい?けど、なんか不思議な夢って感じ。


「それを何度も見るってことですよね」


「はい。毎回同じ始まり方をして、毎回同じ終わり方をします」


 なるほど、確かに変だね。

 これが一度や二度くらいなら、たまたま変な夢を見たんだねって流すところではあるんだけど、何度も見ているっていうのはおかしい。


「ちなみに、パウラさんはそういう体験とかしたことあるんですか?」


「いいえ、ありません」


 過去の体験を思い返してしまっている可能性もなし。


「となると、何かしら原因がありそうですが……」


 考えてみる。


「サラ!何かわかるかな!」


 シャロンが期待したような目で私の事をみるけど。


「相手に夢を見させる魔法というのは確かに存在します」


 確か魔法書8巻あたりだったっけな?医療用の魔法の項目にそんなものがあった気がする。


「つまり、誰かがパウラにそんな魔法をかけてるってこと!?」


「その可能性もありますね」


 ただ、


「この魔法、なかなかに難しい魔法なんですよね。少なくとも生徒にできる魔法じゃないです」


 最上級生の授業にも参加したけど、せいぜい5巻レベルくらいの魔法しかやっていなかった。どうやら魔法書の5巻が卒業の基準らしく、以降は研究者とかが読むものらしい。

 それを軽く渡してきたお母さんは……

 ともかく、魔法書8巻にもなると、生徒で使える人はまずいないと言い切れる。


「そうなると、先生が!まさか……サラが!?」


「いやいや、なんでそうなるのよ」


 もちろん、私は使うことができるけど、そんなことはしていない。


「まず、する意味がないんですよね」


 なんでパウラさんにわざわざそんな夢を見させているのか全くわからない。


「あ、あの!」


 私とシャロンが話していると、パウラさんが声を上げた。


「実は、気になってる噂があって!」


 噂?


「そんなのがあるんですか?」


 シャロンの方を見るけど、キョトンとしている。


「あ、えっと、上級生の間で話題になっている噂みたいなので。あ、私、姉がいてそこから聞いたので……」


 シャロンが知らないのも無理がない。


「どういう噂なんですか?」


「どういう噂なの?」


 シャロンと被ってしまった。聞かれたパウラさんは、少し言いづらそうにした後。


「あの、フィスニール魔法学園の七不思議っていう噂なんですけど……聞いたことないですか?」


 ……なんだか学園の定番ネタがここに来て出てきたぞ?

 パウラさんには悪いけど、ちょっと楽しくなってきてしまった。



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