第9話 嵐を呼んだやばい少女先生!
「で、あるからして」
校長の話はどこでも長いんだなぁ。なんて事を思い知らされる入学式が終わる。
ちなみに、私はそこで挨拶をさせられた。マリオンさんの補佐教員として紹介されたんだけど、生徒の人たちがあんぐりと口を開けていたのが印象的だったよ。
まぁ、私みたいな子供が教師って言われても、びっくりするよね。
そして、次の日、初めての授業だ。
「さぁ、サラ。準備はいいかしら?」
「はい、マリオン先生!」
授業部屋の前で、マリオンさん、あらため、マリオン先生と頷き合う。
知り合いだから気が緩んじゃいそうだけど、今後は学校内ではお互いきちんとしようと決めた。
マリオン先生が入っていくのに続いて部屋の中に入る。
一気に視線が、マリオン先生に、そして私に移るのがわかった。
うーん、多少は慣れているつもりだったけど、やっぱり好奇の目で見られるなぁ。
ざわざわしているけど、仕方ないよね。
生徒たちは私と同じ歳くらいの子たちだ、その中にはシャロンもいる。
「静かに。授業を始めますよ」
そこにマリオン先生の声で静かになった。
マリオン先生から自己紹介と簡単に私の紹介が入る。
「サラ・ヤガミです」
入学式の時に、先生と紹介されたはずなんだけど、やっぱり驚いている子が多いなぁ。
中には明らかに不満そうな子がいたけど、マリオン先生がいるからか表立って何か言うような子はいない。
マリオン先生がすぐに授業を開始したのはきっと、私への視線をそらすためだろう。
教室の後ろに立って、マリオン先生の授業を見守る。
「この呪文学は、広く一般的な呪文についての授業となります」
マリオン先生の最初の授業はライトの呪文だった。
そういえば、私も最初に覚えたのはライトだったなぁ、あれが2年前くらいだと思うと、懐かしい。
でも、ライトの呪文くらい入学してそうそうの子だって、使える……
「うぅ、全然つかない」
「杖の振り方がわからないよー」
「呪文の発音が難しい」
発動できている子が一人もいないんだけど?
あれ?私、制御には結構な時間かかったけど、ライト使うくらいは一発でいけた気がするんだけど?
生徒たちが苦労する中、
「できた!先生できました!」
一人の優等生っぽい男の子が自慢げに杖の先を光らせている。
光……ってる……?とかろうじてわかるくらいの灯だ。教室の明りに完全に負けている。
「よくできましたね、ヘンリー・グレイヴ」
マリオン先生が男の子を褒める、褒められた子ヘンリーくんは見事なドヤ顔を周りに向けている。
あー、なるほど、こういう子か。いるよね、無駄にプライドが高そうな子。
「皆さんも、ヘンリーくんのように魔力を杖の先に集めましょう」
結局その授業内で、ライトを使えたのは数名にとどまった。
そして、授業の締め。
「最後に、呪文学はとても難しい学問ですが、その分、とても重要になります。サラ先生」
「は、はい?」
何故かご指名を受けてしまった。隣に来るよう言われてしまったので、とりあえず、マリオン先生の隣に立つ。
「サラ先生、何か呪文を見せてあげてください」
えっ、いきなりですか?
「皆さんも、サラ先生を不思議に思っていることでしょう。その力を見せてあげて」
うーん、マリオン先生に言われちゃったらしょうがないよね。
生徒たちも興味津々で私の方を見ているし、一部疑いの目というか挑戦的な目を向けてきている子もいる。ヘンリーくんが、その代表だね。
しかし、何がいいかなぁ。
「あ、できれば魔法書の10巻の中からお願いね。できるだけ派手なのがいいわ」
小声でマリオン先生から付け足されてしまった。魔法書の10巻ってなると、結構危険なやつも混ざっているんだけど?
安全なやつ……、うん、これにしよう、派手だし。
「それでは、『レイニー・ストーム!』」
私が呪文を唱えると、杖の先が光る。しかし、何も起こらなかった。失敗?という空気が漂うけど、私は慌てない。
一人歩いて窓に近寄る。釣られて窓の外を見る生徒たち、授業初日にふさわしい晴天だったのだが。
「あれ?雨……?」
ぽつりと地面が濡れるのを一人の生徒が気がついた。
上空を見ると、徐々に、急激に黒い雲が集まり雨、そして強風が吹き荒れ始めた。
唖然としたまま窓の外を見る生徒達。
「これは『レイニー・ストーム』という魔法です。嵐を呼び出す魔法になります」
うん、派手だし危険がなくていい感じだよね。ちなみに、応用としてサンダー・ストームもあるけど、こっちは雷を呼び出す呪文なので本当に危険になる。
「どうでしょう、皆さんのご期待には答えられましたか?」
なんて、聞く必要はなさそうだ。皆一言も発しないで、窓の外を見ている。
「サラ先生、素晴らしい魔法です。これほどまで簡単に高度な魔法を使うとは思いませんでしたよ」
そんな中、マリオン先生だけが、褒めてくれた。ちょっと嬉しい。
しかし、
「しかし、サラ先生、外では飛行学の授業をやっていたはずですが、危険なのでは?」
「えっ?あっ!」
遠くを見れば、雨と風に打たれながら、箒を賢明に操作している生徒達らしき姿が。
「まずい!」
停止停止!
すぐさま、魔力を込めるのをやめると、すぐに雨と風が止まった。
外での授業のこととか考えてなかったよ。
「ふぅ、それでは、授業を終わりにします、サラ先生は私と一緒に飛行学の先生に謝りに行きますよ」
「はい……」
こうして、私の初授業は終了した。
そして、私の噂はすぐさま全校生徒に広がり、嵐を呼んだやばい少女先生ということで伝わっていった。
ちなみに、学園長には怒られなかったけど、呆れられてしまった。
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