第7話 先生って、それはないでしょう!
今ありのまま起こったことを話すと、
1. フィスニール魔法学園に通うために試験を受けにきた
2. 試験を受けたら教師になってくれと言われた
3. とりあえず、親に相談すると言って退室
うん、わけがわからないよ。
「えっと、言い間違えですよね?教師じゃなくて生徒ですよね?」
そっか、きっと言い間違えか。学園長さんお歳を召してるし、きっと言い間違えちゃっただけだよ。いやぁ、生徒と教師間違えるなんてお茶目だなぁ(?)
「サラちゃん、現実逃避しても何も始まらないわよ」
「はい……」
門まで送るとついてきてくれたマリオンさんに注意されてしまった。
いや、だってねぇ、いきなり教師だよ?なんで?
「学園長も言っていましたが、もはやこの学校で教えられることがないらしいじゃない?」
「そうは言っても、私、まだ10歳ですし」
10歳で教師?漫画の世界じゃないんだから。小説の世界ではあるけど。
「学園長が見たところ、生徒よりも教師としての資質の方が強いってことだから大丈夫じゃないからしらね」
私の光を見て、悩んだ末に学園長は決めたらしい。
「マリオンさんはいいんですか?ある意味でマリオンさんの仕事を取っちゃう形になると思うんですけど」
私にお願いされたのは、呪文学の授業になる。そう、今は、マリオンさんが教えている授業だ。
「まぁ、ちょっと複雑ではあるけれど、あのカレンの娘ならしょうがないとは思うわよ」
お母さんへの信頼が熱い。
「それに、私自身もカレンに呪文学を教わったから」
「あ、そういえば、お母さんが弟子って言ってましたっけ?」
「弟子……、ええ、そうね。概ね間違っていないわよ」
聞いてみると、どうやら、マリオンさんは学生時代お母さんと同じ部屋で暮らしていたらしい。当時、落ちこぼれ寸前だったマリオンさんをは荒れに荒れていたとのこと。それを更生させて、さらに卒業までには次席にまで教え込んだのがお母さんらしい。
「マリオンさんが荒れていたなんて想像つかないです」
「まぁ、今は歳もとったからね」
指摘すると、マリオンさんはちょっと恥ずかしそうだ。
「ともかく、一年間は引き継ぎも兼ねて、私のサポートになるみたいだから、あまり緊張しなくても大丈夫よ」
「はい……」
色々と私も頑張って説得した結果、まず一年間、マリオンさんの助手みたいな形での採用になった。副担当みたいな感じかな?それでうまく行けそうなら2年目からは晴れて呪文学を教えることになるらしい。
マリオンさんもクビというわけじゃなくて、別の授業を教えるということになる。
「あ、一応言っておくと、教師になっても他の授業を見学することは可能よ」
「そうなんですか!」
やった、それはちょっと嬉しいかも。って、あれ?いつの間にか、教師になること確定している?お母さん達に相談してからのはずだったのに。
まぁ、お母さんがどんな反応するかは正直予想がついてるけど。
「あら!教師!いいじゃない!頑張りなさい!」
思った通りの反応が返ってきた。お父さんは少し悩んでる、そりゃそうだよね。いきなり娘が教師なんて……
「うーん、そうなると、ケーキの文字が違うなぁ」
「えっ?ケーキ?」
「あ、うん。持ってくるよ」
そう言って、お父さんが持ってきたのは、白いクリームにいちごが乗ったショートケーキだった。
「文字を『入学おめでとう!』にしちゃったけど、教師だと入学は変じゃないかな?」
悩んでたのってそれ!?
「いいじゃない、学校に入るんだから、入学でも」
「そっか、それでいいか」
二人笑う。
えー、それでいいの、もうちょっとなんかないの?
「まぁまぁ、混乱するのもわかるわ。でも、そうなるのは目に見えていたというか……」
お母さんが笑う。
「2年間で10冊ある魔法書を全部勉強しちゃう子を普通の生徒として扱うわけにはいかないからね」
だって、次々と新しい魔法を覚えるのが楽しかったんだもん。流石に、それで教師になるとは思わなかったよ。
「まぁまぁ、ちょっと他の子とは違った形になるけど、せっかくの学園生活だもの。楽しんできなさい」
「うん」
結局、両親は全く反対することもなく、私が教師になることを認めてくれた。
そうして、時間は光の矢の如く、過ぎ去り、明日が入学式の日となった。私もその準備のために、今日から魔法学園の寮に入ることになっている。
「いってらっしゃい」
「身体に気をつけるんだぞ」
家を出たところで、二人に抱きしめられた。これから、6年間は寮生活の予定だ。
あ、ちなみに6年間っていうのは、普通の生徒が入学して、卒業するまでの年数になる。
まぁ、私の場合は、その後も続ける可能性あったりするけど、さすがにまだ一生を決めるのは早いかなということで、ひとまず6年とさせてもらった。
両親とはお別れになってしまうけど、
「何かあったらテレポートで会いに行くからね」
「サラもすぐ帰ってきていいんだぞ」
ということで、魔法という便利なものがあるので、あまり寂しさはなかったりする。
そんなわけで、改めて。
「行ってきます!」
私は、フィスニール魔法学園に教師として通うことになったのだった。
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