第5話 ここが憧れの魔法学校!

 それからは早かった。お父さんにも話をすると、


「フィスニールか!いいぞあそこは!お父さんもあそこでお母さんに出会ったんだ!」


 どうやら出会いの場所とのことらしい。というか、今更だけど、お父さんも魔法使いだったんだね。てっきりお母さんだけだと思ってたよ。


「まぁ、お父さんは魔法はもうほとんど使えなくなっちゃったけどね」


 とのことだった、魔法が使えなくなることってあるの?

 詳しく聞きたかったけど、なんだか聞いてほしくなさそうな感じだったので聞けなかった。まぁ、両親にだって何かしらの事情があるんでしょう。

 それよりも今はフィスニール魔法学園だ。



 フィスニール魔法学園の入学は秋に開始される、だけど、その前に。


「入試があるんじゃなかったっけ?」


 小説にはあったはずだけど、大丈夫なのかな?

お母さんに聞いてみると、


「あるけど、サラなら全然大丈夫でしょう」


 あるの!?大丈夫って言われても心配だよ!


「それよりも、学校は寮制になってるけど、大丈夫なの?」


「あ、そっか」


 あの小説でも皆、寮に通ってたね。そっか、私もあそこの寮に入れるんだ。ちょっと楽しみ。


「うーん、お父さんはちょっと心配だなぁ……」


「まぁまぁ、私達も入ってたくらいだから大丈夫よ」


「でもなぁ……」


 お父さんが少し心配そう。


「大丈夫だって、学園長にもちゃんと手紙書いておくし。それに、マリオンも教師やってるみたいだからね」


「マリオンか!えっ!?あいつ今教師やってるのか!?」


 マリオン?って誰?


「サラ、マリオンっていうのは、私の弟子みたいなものなのよ。サラのことをお願いしておくから、遠慮なく頼りなさいね」


「うん、わかった」


 なるほど、そのマリオンさんは私の姉弟子さんってことかな?


「まぁ、マリオンならひとまず安心だろう」


「そうそう、マリオンの娘もサラと同じ歳みたいだから、同じ学校で会えるかもね」


 それは嬉しい!近い歳の魔法使いと会うことなんてなかったから、友達になれたらいいなぁ。



 入試は8月の夏休みの時期に行くことになった。

 なお、移動手段は飛行機……、ではなくテレポートというちょっとずるい手段を使った。一応パスポートは取ったからという言い訳はしておく。不法入国には変わらないけど。

 

お母さんに連れられてテレポートをした先には、映像で見たことのある大きな校舎が。


「うわぁ、そのまんまだ!」


 映画で主人公達が初めて学校に来た時に、見上げていた校舎。それを自分も見上げることのできる感動に私が震えていると。

 ギギィと音がして、門が開いた。そして、出てきたのは女の人。

 お母さんよりも少し歳上の人かな?いや、そういえばお母さんの年齢知らないや。


「カレン!」


 その人がお母さんに駆け寄ってくる。


「マリオン!久しぶりね」


 この人が例のマリオンさん?あれ?姉弟子さんじゃなかったっけ?


「久しぶりじゃないわよ!急に連絡してくるんだもの!びっくりしちゃったじゃない!」


 そのマリオンさんは、私達の前に、立つと腰に手を当てた、いかにも怒ってますというポーズでお母さんに文句を言う。

 それに対して、お母さんは笑ったままだ。


「まぁまぁ、それよりも私の娘を紹介するわよ」


 私を前に押し出す。

あ、自己紹介しなきゃ。


「八神サラです!」


 ペコリと頭を下げる。

 ちなみに、私の言葉は日本語のままだけど、魔法を使って喋った相手に内容が伝わるようになっている。そのおかげで、知らない言語でも意思疎通ができる。アイルランドって何語?アイルランド語?英語だったら、前世で勉強したから多少は話せるけど、流石にアイルランド語は無理。


「あらあら、とても賢そうな子ね。私はマリオン。マリオン・ローレンよ。ここで呪文学の先生をしているわ」


「よろしくお願いします!」


 マリオンさんがどんな人か気になっていたけど、優しそうな人で良かった。


「それで、カレン。聞きたいことは色々とあるんだけど、この子がこの学校に通いたいって?」


「そうなのよ!とても優秀だから、私も教えることがなくなっちゃってね」


 そんな理由でこの学校をおすすめされたの!?


「もう!他でもないあなたの頼みだから、試験は受けさせるけど。本当はちゃんとした時期じゃないと駄目なのよ」


 あ、やっぱりこの試験は特別扱いなんだ。そうだよね、物語だともうちょっと早い時期だった気がしてたよ。


「それに、試験の結果には特別扱いはしないわよ。……まぁ、うちの子が入れるくらいだから大丈夫でしょうけど」


 ちらっと私の方を見る。


「……?」


 試験ってどんなのだっけな?なんか、水晶玉に手を当ててただけのような記憶があるんだけど、同じなのかな?


「大丈夫、大丈夫。うちの子が受からないとしたら、それは試験の方が間違っているだけだから」


「もう、勝手なんだから」


 マリオンさんは、文句を言いつつもちょっと楽しそうだ。どうやら、相当お母さんと仲がいい様子。


「それじゃあ、頑張ってね」


 お母さんは、私にそう言うと、肩を押してマリオンさんの方に差し出す。


「あれ?お母さんは行かないの?」


「ええ、ちょっとここにいると文句を言われそうな人がいるから……、じゃなくて、用があるのよ」


 どうやら、お母さんはここで帰るようだ。ちょっと寂しいけど、まぁ、それを悲しむほどの歳じゃない。


「帰りは自分で帰ってこれる?」


「うん、大丈夫だと思う」


 テレポートを使うだから一瞬で帰れるはず。


「えっ?カレン!?あなたまたどこか行くの!ギー先生があなたに用があるって!」


「大丈夫大丈夫!手紙に色々と書いておいたから!それじゃあね!」


 早口で言うだけ言って、お母さんは帰ってしまった。


「もう!」


 テレポートしたお母さんを、プリプリと見送るマリオンさん。


「あの、なんか、お母さんがすみません」


 とりあえず、お母さんが不義理してそうなことはよくわかった。


「……いえ、いいのよ。悪いのはカレンだもの。それにいつものことだしね」


 いつもなんだ……お母さん……

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