第4話 魔法学校に通いたい!

 時間は高速で過ぎ去り、私は10歳になっていた。

 そんな私が何をやっているかと言うと、


「えりゃっ!『フレイムストーム』!」


「嘘っ!『マジックバリア』!」


 私の放った魔法をお母さんがギリギリで防ぐ。


「ふぅ、危なかったわ」


「もうちょっとだったのに……」


「いい感じだったわよ、それじゃあ、今度はこっちから行くわよ!」


 お母さんと魔法戦をやっていた。別に、喧嘩をしているとかではない。これも魔法の勉強の一環だ。

 なんでも、


「魔法を使ってバカをしようとする連中だっているからね。それの防衛策はちゃんと身につけておかないと」


 ということらしい。

 考えてみれば、お母さんに最初会った時も私はさらわれていたし、ある程度の戦闘力は必要なんだろう。

 2年かけて、教科書全10冊の勉強を終えてからは、お母さんと戦闘訓練をするようになっていた。

 まだ、一回も勝ててないけど……


「ほらっ!隙あり!」


「……っ!『テレポート』!」


 おっと、危ないなぁ。


「テレポートをそんなに気軽に使うのはさすがだわねぇ。テレポートは消費魔力がかなり多いはずなんだけど」


「魔力はいっぱいあるからね」


 どうやら私の魔力量は凄まじいらしく、強い魔法でも使い放題だ。


「チートだったかしら?それも神様にもらったのかしらね?」


 異世界転生ではチートって定番だよね。私の場合は現代転生だけど。


「うーん、神様には会った記憶ないんだよねぇ。っと、危ない」


 隙を狙わないで欲しい。


「うーん、これも駄目か」


 悔しそうにするお母さん。


「一回当たったら終わりだからね。絶対当たらないよ!」


 私とお母さんの模擬戦は、基本的に魔法が一回当てた方が勝ちだ。

 事前に一回だけ防いでくれる魔法をお互いかけているから、一回だけなら無傷ですむのだ。

 とはいえ、お互いの魔法を完全に防ぐ魔法となると、かなり魔力を使うことになるので、あんまり多くは使えないのだ。

 最初の頃はすぐに模擬戦が終わっちゃってたけど、今は時間いっぱいまで戦うことができる。

 この時間いっぱいとは、


「あー、もう終わりよ。魔力ギリギリだわ」


 こうやって、お母さんの魔力切れという感じになる。

 ちなみに、私の魔力はまだまだ残っている。お母さんいわく、その魔力量絶対チートだわよ、とのことだ。



 今日の模擬戦が終わって帰る準備始める。

 流石に、家の近くではこんな戦いはできないから、誰もいない場所にテレポートしている。

 ちなみに、どこかはわからない。お母さんにテレポート連れてこられた場所に私もなんとなくテレポートとしてるだけなので。


「あ、そうそう、ちょっと待って、サラ」


「うん?何お母さん」


 帰りのテレポートをしようかと思った時に、お母さんに止められてしまった。


「あなた、普通の学校に通っているわよね?」


「うん?通ってるよ?普通って、普通の公立だけど」


 家の近所にある小学校。だって私まだ小学生だし。


「転校するって抵抗ある?」


「えっ!?」


 急に転校どうして!?


「引っ越しでもするの?」


「いえ、違うわよ。私のおすすめの学校があるのよ」


「おすすめの学校?」


「そう、サラは魔法学校には興味ないかしら?」


「魔法学校!あるの!?」


 私は魔法学校にはちょっとした憧れがある。

 前世で読んでいた大好きな小説が魔法学校を舞台にしたものだったのだ。

 あんな生活を私もしたいと何度憧れたことだろう。


「ええ、日本ではないんだけど、いい学校よ。アイルランドにあるの」


「アイルランド!」


 聞いたことはある。というか、これも大好きな小説の舞台だったのだ。ちょっとした思い入れがある。

 あの学校の名前は……


「ええ、フィスニール魔法学園っていう学校なんだけど。とてもいい学校よ」


「…………えっ?」



 フィスニール魔法学園。それは私が前世で大好きだった小説の舞台となる学校の名前だった。


「……フィスニール魔法学園があるの?」


「あら?サラは知ってたのかしら?お父さんから聞いた?」


 どうやら、この世界にはフィスニール魔法学園があるらしい。


「私もお父さんも、そこの出身なのよ」


 しかも、両親の母校となるらしい。

 あー、そのなんだ……?

 転生して、普通の世界だなぁなんて思ってたら、魔法がある世界で、ついつい、魔法自体に興奮してあんまり深く考えてなかった。

 よく考えたら、魔法の呪文とか覚えやすかったもんなぁ。やっぱり呪文なんて、だいたい同じようなものだと思ってたけど。


「ひょっとしてここって、あの小説の世界なの!?」


 まさか、全く同じ世界だなんて思わなかったよ。

 転生してから10年やっと私は大好きだった小説の世界にいることを知ったのだった。



 私がフィスニール魔法学園の名前を知っていた理由と前世で読んだ本について、お母さんにも話をした。


「まぁまぁ、あの学校が舞台の物語なんて!ちょっと面白そうだわ!」


 凄い喜んでいた。

 まぁ、流石にこの世界にあの小説はないだろうけど。ちょっと前世に帰って読みたくなってきた。

 映像化もしてたからそっちでもいいけど、私はどちらかというと、原作派だった。やっぱり密度が違うんだよね。


 それはそうと、


「私!フィスニール魔法学園に通う!」


 今の学校に全く不満はないし、友達だっている。

 だけど、あの学校に通うことができるならそっちのほうがいい!

 そうして、私は、憧れの魔法学校に通うことになったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る