第3話 魔法使いになりました!

「さぁ、はじめましょうか」


 次の日になって、早速授業を開始することにした。魔法の授業ってどういう感じなんだろう?


「まずは魔力を感じるところから始めましょうか」


「魔力を感じる?」


「ええ、体内にある魔力を思うように操るのが基本になるのよ」


 目をつぶってとうながされるので、目をつぶってみた。


「体の中に何か感じるものとかないかしら?」


 言われた通りに身体に集中してみるけど、何もわからない。


「うーん、サラは魔力が多すぎて逆に感じづらいのかな?」


 ちょっとごめんねと言って私の胸に手を置いた。


「魔力を流してみるわよ」


 そう言われてから少しすると、手が置かれたところがむずむずと暖かくなってきた。


「暖かくなってきたような?」


「いい感じね。それじゃあ、ちょっと動かしてみるわよ」


 暖かさが、身体の中を左に右にと移動する感覚がする。


「右……左……、なんか動いてます?」


「それよ!それが魔力よ」


 目を開けて確認すると、カレンさんは嬉しそうだ。


「じゃあ、今度は一人で感じてみましょうか」


 カレンさんが手を離す。また目をつぶって、さっきと同じように体内に集中する。

 すると、さっきの暖かい感覚がまだ少し残っていた。

 うん?それを包むようにでっかいのがあるような?


「なんか凄い大きいのがある気がします。これが魔力……?」


「あー、それで合ってるわよ。私から見てもかなり大きな力だもの。うーん、これは大変だわ」


 カレンさんはなぜか悩み始めた。魔力が大きいのはなんか良いことのように思うんだけど。


「大きいのは良いことではあるけど、ちゃんと制御しないと、暴走する可能性があるわ」


 あー、なんか前世の漫画でそういうの読んだことある気がするよ。大きすぎて、制御できなくて暴走するって定番だよね。


「本当は簡単な魔法を使ってもらう予定だったんだけど、予定を変更して制御の方を優先しましょう」


 魔法を使えないのはちょっと残念だけど、暴走は怖いからね。


「さぁ、地味な練習になるけど、楽しんでいきましょうね」



 ……本当に地味な特訓だった。

 体内にある魔力を少しずつ動かす、それだけ。


「全体を動かしちゃ駄目よ。ちょっとだけの魔力を絞るような感じで」


 何か凄い難しいことを言われつつも、頑張った。



「うん、OK。よく頑張ったわね」


 1年をかけてようやく制御訓練が終わった。


「あ、でもあんまり気を抜きすぎちゃだめよ。魔法を使う時は常に冷静で……ね」


 それは、この一年間で何度も言われたことだった。


「しかし、一年もずっと同じことやるなんてサラは凄いわね」


 うん、正直、普通の子供だったらすぐに投げ出すレベルだったとは思う。


「サラは前世でもがんばり屋だったのかしらね?」


 ちなみに、前世の話はとっくにばれている。

 なんでも、


「あんなに大人びた7歳児はいないわよ」


 とのこと。

 どうも、魔法のことになると、全然子供っぽくなかったらしい。

 それでも、


「あなたは私の娘よ」


 そう言ってくれた、カレンさん、いや、お母さんのことが大好きだ。



「それじゃあ、お待ちかねの魔法実践に入りましょうか」


 待ってました!このために頑張ったんだよ!


「まずは簡単な魔法からね。『ライト』!」


 お母さんが杖を動かしながら呪文を唱えると、杖の先に光が灯った。


「凄い!」


 光ってる!光ってるよ!

 これ先に何かしこんでるわけじゃないよね?トリックとかない本当の魔法だよね!


「ふふっ、そんな興奮した目で見なくても。サラだってもうできるはずよ」


 促されたので私も杖を構える。

 魔法使いは、自分と相性のいい杖を使うことで魔法が使いやすく、強力になるらしい。

 ちなみに、この杖は、お母さんからのプレゼントでもらったお母さんのお古だ。


「魔力を杖の先に集めて、呪文を唱えながら動かすのよ。あ、あんまり多く集めちゃだめよ。眩しくなっちゃうわ」


 言われた通り、慎重に魔力を杖の先に集める。

 1年訓練しただけあって、少しだけ集めるということもできるようになったよ。


「いい感じね。それじゃあお母さんの真似をして動かして」


 お母さんが杖を動かすのを真似して。


「『ライト』!」


 呪文を唱えると、杖の先に光が灯った。


「うわぁ、これが魔法」


 さっきお母さんのものよりもちょっと強い光、直視するのは危ないけれど、思わず眺めてしまった。


「あんまり見ると、目が潰れちゃうわよ。もう少し弱めて」


 言われたとおりに、杖の先から自身に少しずつ魔力を戻していく。

 次第に光は収まっていき、見てても辛くないレベルになった。


「うん、いい感じね」


 お母さんも嬉しそうだ。


「これが、一番簡単な魔法、灯をつける魔法のライトよ。ちゃんとできわね」


「うん!よかった!」


 お母さんのは何度も見てきたけど、やっぱり自分の力で出来たのは嬉しい。


「ライトができれば、サラだったらあとは呪文と杖の動かし方の知識になるわ」


「動かし方?」


「ええ、ちゃんと杖を動かさないと思った通りに魔法が発動しないのよ」


 こんなふうにと、お母さんは、さっきとは違う動きで、ライトを使う。


「うわっ!なんかパチパチしてる!」


「ふふっ、なんだか花火みたいになっちゃったわね」


 すぐにお母さんは灯を消した。


「とまぁ、こんなふうに、ちゃんと発動しないの。呪文と杖の動かし方はセット。ちゃんと覚えましょうね」


「うん!わかった!」


「それじゃあ、はい。これ」


 お母さんがなにやら、杖を動かすと、どこかから本が一冊落ちてきた。前に聞いたことがある、別の空間に色々と保存しているらしい。

 取り出した本を私に渡してきた。


「これは?」


「魔法書よ。魔法を扱うのに必要な色々な知識が載ってるの。サラが好きそうな呪文もいっぱい載っているわ」


 魔法書!そんなのがあったの!もっと早く欲しかったよ!


「ふふっ、先に渡してたら勝手にやってたでしょ。暴走したら大変だもの」


 うぐっ、確かに、好奇心でやっていた可能性がある。


「でも、今なら大丈夫ね。この本に書いてある呪文は危険なものがないから、好きに勉強して使って大丈夫よ」


 好きに使っていい!なんて夢のある言葉。


「危険な呪文が載ってる本もあるの?」


「ええ、あるわよ。その本はあくまでも入門書だもの。全部で10冊の魔法書の1冊目ね」


 へぇ、10冊もあるんだ。


「徐々にやっていきましょう」


「うん」


 こうして、全10冊に及ぶ魔法の勉強が始まった。


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