第2話 お母さんは魔法使い!
振り返るとそこに立っていたのは、綺麗な女性だった。
かなりの美人さんで、勝ち気そうな目が良く似合っている。けど、そんな印象的な目よりも気になるところがある。
「わわっ、ちょ、捕まって!」
なにやら女性は焦ったように私のことを抱きかかえた。
振り返ると、そこには火の手が迫ってきていた。
そういえば、爆発が起こったんだった!ここは危ない!
「ちょっと我慢しててね」
女性は私を抱きかかえたまま、なにやら杖を構えて。
「『テレポート』!」
女性の声と共に、急に視界がぶれて思わず、目をつぶってしまった。
ちょっとした浮遊感。
「ふぅ、これで大丈夫よ」
女性の声に目を開くと、目の前には見覚えのある一軒家が。
「私の家?」
一日ぶりくらいだけど、流石に間違えることはない。私の家だ。
「もう、安全だからね」
女性は、そっと私の事を下ろしてくれた。
とりあえず、色々と気になることはあるけれど。
「助かった……?」
どうやら誘拐から無事に家に帰ってくることが出来たみたいだ。
「ありがとうございます」
そして、女性が私を助けてくれたのは間違いない。
「どういたしまして。まさか、やつらを追って久しぶりに日本に来たら、あなたの誘拐に遭遇するとは思わなかったわよ」
やつら?誘拐犯達のことかな?そういえば、あの人達も何かおかしい感じがした。
杖を構えたりして……ちょうどこの女性みたいな。
そうそう、ずっと気になっていたことがあったんだ。
「あ、あの。ひょっとしてお姉さんは魔法使いだったりしますか!?」
着ている服は、黒いローブに、やけにつばの大きなとんがり帽子。
おまけに杖も使っていたし、あの爆発も、そして何よりも一瞬でここに移動したこと。
魔法使いみたいとはまさにこのことだ。
「ええ、そうよ」
女性はこともなさげに肯定してくれた。
しかし、女性は私で指を振る。
「でも、私はお姉さんじゃないわ」
うん?おばさんって言うには失礼だったから、お姉さん呼びにしたんだけど。まさか、そこに突っ込まれると思わなかったよ。
「あなたはサラちゃんよね」
「はい、あれ?私名前言いましたっけ?」
そんな暇はなかったはずだけど。
「してないわ!でもわかるの。なにせ私は……」
バタン!
お姉さんが言いかけたところで、急に家の方から音がした。
見れば、お父さんが息を切らせた様子で走ってきていた。
「サラ!無事だったんだね!」
「お父さん!」
お父さんは勢いよく私を抱きしめた。感動の再会だ。
安心感に思わず、顔が緩んでしまう。やっぱり私も緊張していたみたいだ。
「よかった。本当によかったよ」
泣きながら抱きしめるお父さんに何度も同じ言葉をつぶやく。
ちょっと抱きしめる力が強くない?
「えー、こほん」
そんな中、女性が咳払いをした。
「そろそろ、私もいいかしら?」
「あ、ああ、すまない」
お父さんが私を離してくれた。
「助かったよ、まさかサラが攫われるとは思わなくて」
「たまたま私が日本にいて良かったわ。まぁ、海外にいてもサラのためなら飛んでくるけど」
あれ?二人は知り合いなのかな?
女性が私の方を見る。
「サラ、助けられてよかったわ。私の名前はカレン。八神カレンよ」
うん?あれ?八神?
「あなたのお母さんよ」
うん、えっ?えっ?
「えぇえええええ!!?」
我ながら凄い声が出てしまった。
初めての対面がこんな場面になるとは思わなかった。
そんな衝撃から立ち直り、改めて家の中で話をすることにした。
「今回の誘拐は、闇の教団によるものに間違いないわ」
闇の教団?そんなのがいるの?
「どうしてサラを?狙ってさらったりしたのかい?」
「私が調べた感じだと、それはなさそうね。強い魔力を持つ子を攫ったらそれがたまたまサラだっただけじゃないかしら」
「偶然ってことかい?」
「ええ、おそらく奴らは私の娘だってことは知らなかったはずだわ」
「そうかい……」
なんか話についていけてないけど、どうやら私を狙ったのはたまたま魔力を持つ子供だったからみたい?
えっ?私って魔力あるの!?
「それで、これからどうするんだい?」
「関係者ってことがわかるとまずいと思って離れてたけど、この様子だとしばらくは一緒にいたほうがよさそうね」
「いいね!久々に家族一緒に過ごせるよ」
お母さんが家にいなかったのは仕事の都合だみたいにお父さんが言ってたけど、一緒にいると危ない目に会う可能性があったからってことみたい?
「サラもお母さんが一緒でいい?」
「うん!」
改めてお母さんって考えると少し気恥ずかしいのがあるけど、家族交流は必要だよね。
「嬉しい!やっと一緒に暮らせるのね」
女性は、私を抱きしめる。
「あー、遠見じゃないリアルのサラだわ!」
頬を撫で回される。
凄い似たもの夫婦みたいな感じだなぁ。
しばらく撫で回された後に、ちょっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの、あなたは魔法使いなんですよね?」
「ええ、そうね。お母さんは魔法使いよ」
お母さんを強調された、そう呼べということですね。
「えっと、その、魔法って私も使えたりします?」
ずっと気になっていたのだ。魔法は前世からの私の憧れでもあったから。
「ええ、もちろん、サラは私の娘だもの。きっと凄い魔法使いになれるわ!」
やった!どうやら私にも使えるみたい。
「そうだ、一緒に暮らすようになるし、教えてあげましょうね」
「本当!?嬉しい!」
そうして私は憧れの魔法をお母さんから教わるようになるのだった。
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