第1話 現代転生しました!

 気がついたら子供になっていた。

 もともとは20半ばだった私だけど、今の私は5歳くらい。いわゆる幼女というやつになっていた。


 前世では教師をやっていたんだけど、確かに働きすぎて倒れたような記憶がある。

 ひょっとして、流行りの異世界転生ってやつかな?それにしては神様とかにあった記憶がないんだけど?

 それに、この世界どう見ても現代の日本なんだけど?こういうのって普通は、魔法とかがあるファンタジー風の異世界とかに転生するものじゃないの?

 これじゃあ、たとえ魔法チートがあったとしても活用できないよ。現代日本において、知識チートは役に立たない。

 もしも、私をこの世界に転生させた神様がいるとしたら、よほど性格が悪いんじゃないかな?


 八神やがみサラというのが今生のわたしの名前だ。

 いつもくたびれていた前世と違って、今の容姿は非常に整っていると思う。自分の事を可愛いというのは気がひけるけど、街を歩くと振り返る人がいるくらいには優れていると思う。

 せっかく頂いた二度目の人生だし、子供時代をやり直そう。そう考えて、実際に満喫していたわけなんだけど。



「こいつがターゲットか……」


 今、私の前には、知らない男の人が一人。

 そして、私は後ろ手に紐で縛られて硬い地面に座らされてる。

 場所は、見たことのない倉庫っぽいところ?ちょっと潮の匂いがするから海に近かったりするのかな?

 とりあえず、今の状況を端的に言うと、誘拐されました。


 近所の子供と一緒に遊んで、帰ろうと思ったら、急に車に連れ込まれてしまった。

 一緒に遊んでた子が見ていたはずだから、きっと警察には連絡がいっているとは思うんだけど。

 そもそも、なんで私は誘拐されたんだろう?

 思い返してみて誘拐される理由が思い当たらない。

 私の家は別に裕福じゃないし、今はお父さんと二人暮らしだ。

 お母さんは、別れたわけじゃないみたいだけど、とても忙しい人らしく世界中を飛び回っていると、お父さんが言っていた。

 娘をほったらかしにしてどうなの?と思わなくもないけど、お父さんは、


「お母さんは、いろんな人を守るお仕事をしているんだよ」


 なんて笑っていた。実に仲のいい夫婦である。

 まぁ、見たことのない人に文句を言っても仕方ない。


「ねぇ、どうして私を誘拐したの?」


 とりあえず、目の前の人に聞いてみることにした。

 ちなみに、私としては、普通に喋ってるつもりなんだけど、ちゃんと言葉にできてるかどうかは微妙だ。6歳児の言葉だからね、しょうがないよ。


「黙れ」


 男の人はそれだけ言って、時計を見る。

 取り付く島もない。どうやら喋ってくれる様子はなさそうだ。

 うーん、こんな時、私に何かチートとかあったら良かったのに。

 あるのは前世から持ってきた知識だけだ。あいにくと役立ちそうな知識がない。

 こんなことなら、身体を動かす系のスポーツとかをやっておけばよかったなぁ。

 前世だと、ずっと本ばっかり読んでたから、身体もひ弱だったし。


 なんて、前世に想いをはせても仕方がない。

 とりあえず、脱出は無理そう?

 身代金目的の誘拐だとすると、私の家に電話をかけていてもおかしくないと思う。でも、誘拐されて以来、そんな様子なさそうなんだよね。

 っていうことはお金目的の誘拐じゃない?ずっと時計を見ているのは何かを待ってる感じかな?

 ターゲットって言ってたし、この人は誰かに依頼されて私を誘拐したってことじゃないかな?

 おおっ!我ながらそれっぽい推理ができた!これも前世で探偵小説とかを読んでいたおかげだね。

 だからどうしたって話ではあるけど。


「時間だ。行くぞ」


 時計を見ていた男が、私に立つように促す。

 大人しく従うよ。だって逆らったら何されるかわからないんだもん。

 そうして、紐で繋がれたまま男の後ろをついて行くと、その先には一台の車が止まっていた。

 私達が近づくと、車から一人の男が降りてきた。

 真っ黒いローブを着ているせいで、どんな人かはわからない。

 その人は私達の方を見ると、なにやら構えて。


「止まれ!」


 構えているのは銃?それにしては細いし短いと思うんだけど?


「ターゲットだな、こちらに引き渡してもらおうか」


「金が先だ」


「ふん、信用ならんな。こちらは無理やり奪うこともできるのだぞ」


「やってみな。こいつを盾にするぜ」


 そう言って、男は私を前に出す。

 なんか、いかにもな闇取引っぽくてちょっと感動してしまったけど、これはまずい展開だよ!

 にらみ合う二人だったが。


「ふん、金だ」


 相手の男が、でっかいボストンバッグを私達の方に投げた。それを確認すると、私を盾にしていた男は、私を押し出した。


「きゃっ!」


 押された私は、思わず、転びそうになってしまったけど、なんとかこらえる。

 ふぅ、危なかった。

 そして、顔を上げると、黒いローブを着た男が私を見下ろしていた。こんなに近くなのに、全く顔が見えないのが凄く怖い。


 ローブの男は私に何かを向けて……

 あれは杖……?


「『ブラスト』!!!」


 どこかから声が聞こえた。

 同時に目の前に爆発が起こった。


「くっ!!」


 ローブの男が爆炎に巻かれている。

 えっ!何!急に爆発!?なんで!

 目の前で起こったことに、びっくりした私に、


「やりすぎた!?大丈夫!」


 後ろから声をかけられて振り返ると、そこには綺麗な女性が立っていた。


 ---

 お読みいただきありがとうございます。

 次回以降は毎朝7時頃の投稿になっていますので、ちょっとでも続き気になった方はフォローと☆さんをよろしくお願いします。

 全20話程度の内容になっています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る