第6話
「何だ?」と年若い男が訊くと、「抱っこ」と少女は言った。
「だってもう疲れちゃって歩けないんだもん。抱っこー」
「おいおい随分と
「さっさと背負いな」と
「
「大丈夫かい姐さん。重かったら
大男が前を歩き、真後ろに少女を抱き抱えた年若い男、最後尾に
「街灯を七つ過ぎたら例の場所に
「
「……
「おいおい大丈夫かよ? 何か疲労が見えるぜ? まさかもう疲れたんじゃねぇだろうな」
「悪、かったな……体力、無くて……
「情けない奴だね。
「
年若い男が
「
年若い男は溜息混じりに
木々を
「無事で
少女は
犬は素早く足から離れて
背後から犬の足音と
葉を揺らす音が
木に
大男は豊かな葉を押し退けて枝の上に登った。枝は細いにも
「何だかなぁ……」と言う年若い男の
釈然としない物を感じつつ年若い男は足を前に進めた。森を抜けると草原に出た。特に
「まぁ後一つ残ってるんだからさ、
「
「まぁまぁ」と大男は槍を片手に年若い男を
「
「咬まれて
「だから
「心配しなくても森出てから半径六〇
街灯を三つ過ぎると
暫し待って見るが何の音もしなかった。
何も無かった。音も無い。
何らかの音がした瞬間に現れる。
「何の音もしねぇな……
「いや
「仮に
「あたしも賛成だね。
「でもよぉ、現実問題として何も――」と大男が言い掛けた所で音がした。
切り裂く音では無かった。動物の足音、小型では無い、
探知を続けて居た御蔭で街灯は
尾が長い。丁度体長と同程度の長さを保有して居た。本体の正確な大きさは
鋭い爪と牙を有し、尻尾を地面に垂らして引き
不味い、と年若い男は直感した。あれは
「なぁ俺には姿は見えねぇんだけど、何か妙にやばそうなのが
「ふふっ、敵だろうねぇ……。あたしの勘も下手すると死ぬかもとか言ってんのさ。
「何が
「
年若い男は少女を抱いた
大男は後ろを警戒し
「
「工場だ! 工場
「
「能力消しな! あんたが収集してると工場が出て来ない可能性が有る!」
「正気か? 敵の位置が把握出来なくなるぞ!
「心配すんな! 俺なら大体だが位置は
「……
最後に確認した段階では四十
延々と
十歳の少女とは云え、人間一人を抱えた状態で走り続けるのは辛かった。足に疲労が
背中に
背後で
「駄目だ間に合わねぇ! 先行け! 足止めを……!」
大男が立ち
「着いた! 工場!」
光だった。
「下がって居ろ!」
大男の声が飛んだ。年若い男は少女を抱えて歩き出した。走れない。ゆっくりと後退して行く事しか出来なかった。背後からは大男と獣の咆哮が
年若い男は工場
槍は
一方、大男は守勢を保持しつつも相手の隙を衝いて攻撃を仕掛けて居た。
「行ける?」と背後から
「何驚いてんのさ。見てりゃ
年若い男は大男に目を移した。決定打を与えられずに
「出口を探すのか……あの子が居るとは云え、間に合うと思うか?
「間に合うか
時折攻勢に転じて居たのが完全に守勢に専念し、少しずつ工場内に下がり始めた。年若い男は少女と
「あれー
半径二
「早くして
「慌てないでー。焦っちゃ駄目だよー。
歌う
だが、限界が近かった。
一方の少女は鞄から細長い小さな瓶を三つ取り出して三〇
程無く正三角形は完成し、少女は年若い男を呼んで言った。手伝って、と。それから少女は
意図を察した
少女は年若い男に
少女の瞳は
「今!」と
ほんのすこしのあいだ、まわりがひかりにつつまれて、つぎに視界がひらけたときには、べつのところにきていた。しろい石でできた神殿をおもわせるふしぎな建物で、はしらが何本もうえにのびていた。てんじょうや壁はなく、ふきぬけになっている。
神殿はちいさく、ほかよりも少しだけたかいところにあった。まわりは水でかこまれており、ゆるやかな階段が下にむかってのびていて、そのさきには草原がひろがっている。草原にはてんてんと木がはえていた。水のながれる音がひびき、どうじに鳥のなき声がきこえた。
あだやかな女と、くまのような大男はほうけた顔でまわりのようすをみていた。少女はとしわかい男のまえに立ったままでいた。そうして「ありがとう」といって、彼女はじぶんのペットをひきつれて階段をおりていった。あわてて三人はあとをおった。少女はくびをかしげて「どうしたの?」ときいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます