第37.5話  決意(永井鈴音視点)

 

 私、永井鈴音は、完全に自暴自棄になっていた。


『私の気持ちも知らないでそんなこと言わないでよ!』


 ――なんで、私あんなこと言っちゃったんだろう……。


 そう悔やむもあの時、私は、そう叫ばずには、いられなかった。


 霧崎君は、ただ私を心配してくれたということは、わかってはいる。


 しかし――


 吉井さんが霧崎君に抱き着いていた光景が何度も何度も頭に消えては浮かぶ。


 この霧崎君への恋心、初恋は、もう諦めるべきなんだ。


 もう、私は、上条さんや吉井さん相手に霧崎君を振り向かせることなんてできない。


 それでも、まだ霧崎君のことが好きで好きで仕方ない。


 私は、そんな矛盾した思考が脳内を渦巻き、他のことを思考することすらままならない状況に陥ってしまっていた。


 そんな状況にあって、私は、心を揺さぶられるようなことを言われ、あのように叫ばずにはいられなかったのだ。


「霧崎君……どうして、上条さんと仲良くなっちゃったのかなあ……。何で、吉井さんの前の席になっちゃったのかなあ……。どうして、いつもいつも私だけ我慢しなくちゃいけなかったのかなあ……」


 乾いた声で私は、家の自室のベットの上に仰向けになりながらぶつぶつと独り言を呟いた。


 今になって、私がクラスで目立つからというだけで霧崎君に話しかけるのを躊躇い続けていた日々を後悔し始めていた。


 私がもっと積極的にアプローチできていたら……。と、もしもの世界を想像すると、胸が痛んで仕方がない。


 しかし、今更後悔したところで、今までの時間が返ってくることはない。


 そんな当たり前のことに私は、肩を落とした。


 せめて、私の気持ちは、伝えたい。


 そして――


 私の存在がふとした瞬間に霧崎君にちらついてくれれば、もう、それでいい。


 私は、そんな重たい、いわゆるメンヘラと言われる人たちがしそうな思考をしていた。


 私は、自分が思っていた以上に、重たい女であることに驚きつつも、私は、抑圧し続けていた反動のせいか荒立つ感情の波を抑えることができなくなってきてしまっていた。


 ――もう、ダメもとで告白しよう……。


 霧崎君には、迷惑な話かもしれないが、この苦しみから逃れるには、もう告白して綺麗さっぱり霧崎君のことを忘れるしかない。


 私は、霧崎君に告白しようと決心した。


 ――霧崎君は、今、帰り道かな……?


 日が沈みかけてあたりが暗くなってきたころ、私は、スマホに手を伸ばした。


『霧崎君、今日はごめんなさい。話したいことがあるんだけど、この後、会えませんか……?』


 私は、震える手で文字を入力し、霧崎君にメッセージを送った。




 






 


 







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