第6話(4)ダイヤモンドの配信
「これは参ったね……」
ダイヤモンドが頭を抱える。山田が問う。
「え、炎上ってマズいですよね?」
「まあね……」
「ど、どうするんですか?」
「さて、どうしようかね……」
ダイヤモンドが腕を組む。
「……」
「………」
「……動画を削除してしまっては?」
「いや、それこそ火に油を注ぐようなものだよ」
「そうですか……」
「男の影を感じさせないように気を使ってきたんだけどね……動画の再生数に気をとられて、そっちがおろそかになってしまった……」
「だったら……」
「ん?」
「弟とでも言えば良いんじゃないですか?」
「いや、それは悪手だよ」
「あ、悪手ですか?」
「うん、下手に嘘をついてしまうとバレたときの反動が怖い」
「ふむ……」
「このまま黙って沈静化を図る? いや、それもマズいか……」
ダイヤモンドが顎に手を当てる。しばらくして山田が口を開く。
「……考え方を逆転させてしまえば良いのでは?」
「うん?」
「男がいて何か問題が?ということにするんです」
「!」
「や、やっぱりダメですかね……」
「いや……」
「え?」
「それだ!」
「ええっ⁉」
「その手があったよ!」
「で、でも、どうするんですか?」
「こんなこともあろうかとアバターを用意してある」
「ア、アバター?」
「ああ」
「ど、どうするんですか?」
「準備をするからちょっと待っていて」
「はあ……」
「……出来た。このイケメンの方が君だ」
ダイヤモンドがイケメンにデザインされたアバターを指差す。
「は、はあ……」
「それでこっちのカワイイ方がウチ……」
ダイヤモンドがカワイクデザインされたアバターを指差す。
「そ、それで?」
「……これから君とウチはカップル系VTuberとしてデビューする!」
「は、はい⁉」
「名前は『モンド&ネット』だ!」
「え、えっと……」
「ウチがモンド。君がネットね、OK?」
「は、はい……」
「よろしい、それではウチの部屋で配信を始めようじゃないか」
二人はダイヤモンドの部屋に移動する。
「えっと……」
「それじゃあ、生配信始めるよ~」
「ええっ⁉ いきなり生ですか⁉」
「そうだよ」
「い、いきなり過ぎませんか?」
「こういうのはライブ感が大切なんだよ」
「はあ……」
「それじゃああらためて……始めるよ~」
「は、始まった……」
「うむ、休日だけあって、人の集まりも悪くないね……」
ダイヤモンドが配信に乗らないように小声で呟く。山田も小声で問う。
「どうするんですか?」
「プチ炎上を鎮火させなければならない……」
「はい……」
「その為には……」
「その為には?」
「それ以上の話題を提供することだ!」
「ほ、ほう……」
「ほら、コメント欄を見てごらん……『突然のカップル系VTuber登場は草』とか、『炎上騒ぎはこの為の布石だった……?』とかこちらに都合の良い様に捉えてくれているよ」
「ほ、本当ですね……」
「このまま騒いでいれば炎上は鎮火するって寸法さ」
「な、なるほど……分かったような、分からないような……」
「マイクのスイッチを入れるよ」
「え? え?」
「さあ、何をしようか、ネット?」
「え、えっと……歌います!」
「良いねえ、何を歌うの?」
「このちゃんで『じゅ、五芒星』を……」
「意外な選曲⁉」
「失礼します! ~♪」
山田もといネットが歌を歌う。
「なかなか好評だよ⁉」
「失礼しました……」
「アンコールの声が一杯来てるよ!」
「え……」
「なにか他に歌えない?」
「で、では……荒々しい会社のフォロワーズで『赤ん坊プレイ』を……」
「またもや意外な選曲を⁉」
「失礼! ~♪」
ネットが歌い出す。
「歌も結構上手いけど、踊りもキレがある⁉」
ダイヤモンドもといモンドが驚く。
「失礼……」
「すごい盛り上がっているよ!」
「そ、そうですか……」
「よし! 次はゲーム実況だ!」
「ゲ、ゲーム実況⁉」
「うん、今日はこのゲームをやるよ!」
「は、はい……ああ、勝手に俺を振らないで!」
「い、いや、これは恋愛シミュレーションだから! それは振られることもあるよ!」
「あ、そ、そうか……」
「うん? これも意外と盛り上がっているな……よし! オールナイト配信だ!」
ダイヤモンドと山田はさらに配信にのめり込んでいく。
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