第33話 引き留め

構内アナウンス「ええー、まもなく特急列車が参ります。黄色い線まで下がってお待ち下さい。」

駅構内が列車の光で照らされた。

そして飛び降りようとした。

シン「...」

パァァァァァーッと電車の音が鳴り響く。

サラリーマン「きみ!ちょっと!!!」


手を引かれて間一髪のところで後ろに退け沿いた。

シン「え、え、なに...」

サラリーマン「きみ、大丈夫かい?」

シン「大丈夫.....です...」

サラリーマン「そうですか、ちょっと立ってこっちに来れるかい?」

シン「は、はい...」


二人は駅を出た。

サラリーマン「きみ、自殺しようとしたでしょ。ずっと後ろから伺ってたけどそんな気がしたんだ」

シン「は、はい。死のうとしました。でも止めなくてよかったですよ...」

サラリーマン「なに言ってるんだ!?きみ!!目の前で死のうとしてる人を助けないわけないでしょ!!!なにがあったんだい?」

シン「生きるのが辛く...辛くて...」

サラリーマン「わかった、ちょっとこの後時間空いているかい?いい居酒屋知ってるんだけどそこで詳しく聞こうか」


シンは流されるようにサラリーマンの後についていった。

二人は新宿の居酒屋に向かった。

サラリーマン「ここがオススメの屯田っていう飲み屋だ」

シン「ホントにいいんですか?」

サラリーマン「いいってことよ。さぁ、はいってはいって」

お店の中はにぎやかだ。

サラリーマン「とりま、ビール2つで」

店員「まいど~」


シンは下を向いていた。

サラリーマン「それでなにがあったんだよ」

シンは少し顔をあげた。

シン「会社で上手くいかなくて、毎日パワハラされるし...それで辛くて...」

サラリーマン「そんなことかー、じゃあ辞めれば?」

シン「いや、それは...」

隣の席に女の子の集団がきた。


女1「ことねー、一緒に座ろー」

女2「あたしこっちー」

赤井琴音「はいはーい」

シンは恐縮した。

サラリーマン「き、きみ?童貞?」

シン「なんでそんなこと聞くんですか...帰りますよ...」

サラリーマン「悪かったよ、まぁ気を楽にしてリラックスしてさ」


女1「それでー、まだ家庭教師続けてるの?」

赤井琴音「まぁね、大学卒業してもやりたい仕事無くてさー。バーと掛け持ちしながらやってるよ」

女2「へぇー、大変だねー」

赤井琴音「割りと楽よ。正社員よりはねー」

女1「それな、私も似たような感じだしねー」

赤井琴音「それがさー、3年前くらいなんだけど記憶が曖昧でさー。変な気分だったんよねー」

女1「そうなの?ウケる」


サラリーマン「どうしたの?会話が気になる?」

シン「い、いえ。なんでもないです。話を続けましょう」

サラリーマンが話を続けた。

サラリーマン「まず、自己紹介としようか。私の名前はミラクルコジオっていいます。あ、これ偽名みたいなもんね。やってることは経営者です」

シン「え!?凄いですね」

ミラクルコジオ「まぁ、色々な事業とか展開しててさマーケティングに関しても他の企業さんとチームアップしたり色々やってますよ。株とかも興味があってこの前なんか...」

そこからの会話が覚えてないほど長かった。


ミラクルコジオ「とまー、こんな感じの経歴なんだけど、ってあれ聞いてる?」

シン「は、はい!色々やっていて凄いですね!!」

すると横の女子軍団が話を聞いていた。

女の子達の目が銭のマークになっていた。

女1「ええー、今の話本当ですか?」

女2「ええー、ちょーやばい~」

ミラクルコジオ「あはは、本当だよー。君たちも一緒に飲みかい?」

女1「のむのむー!!」


シンの相談を忘れて女の子達と飲んでいた。

シンの心の声「俺の相談はどうしたんだよ....」

赤井琴音「なんか、ごめんね。この人とお話してたのに」

シン「いいんですよ、この人今日初めて会った人なんで」

赤井琴音「そうなの?ところであなた...どっかで会った?」

シン「いや、初めてだと思います」

赤井琴音「そう、とにかくごめんなさいね」

シン「いえいえ、お気になさらず」


シン「あの僕先に上がります」

ミラクルコジオ「え!?ちょっと待って!」

女2「ちょっと~そんなのほっといて続きのもうよー」

ミラクルコジオ「ああー、あとでね。ちょっと待って!!!君の名前は?」

シン「シンっていいます」

ミラクルコジオ「シン君!!連絡先を交換しよう!あとで連絡するよ!!!」


シン「は、はい」

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