第2話

「運命の人……?」


私は呆然とした。


レオンは自信満々に言った。


「そうだ。聖女と僕は運命的に出会って、一目惚れしたんだ。彼女も僕のことを好きだって言ってくれたよ。彼女こそが僕を理解してくれる唯一の存在なんだ」


「でもレオン……私達も一目惚れしたじゃない……あの日、初めて会った時に……」


私は必死に思い出した。


私達が初めて会った日、それは私が五歳、レオンが六歳の時だった。


父親が公爵である私は王宮へ招待され、王太子であるレオンと対面した。


その時、レオンは金色の髪と碧色の瞳を持つ美しい少年だった。


私はその姿に見惚れてしまった。


レオンも私を見て、目を輝かせた。


「君はエリザベス・ファルコンだね。僕はレオン・アルトリア。よろしくね」


「はい……よろしくお願いします……」


私は恥ずかしそうに答えた。


それから私達は一緒に遊んだり勉強したりするようになった。


レオンは優しくて頭が良くて勇敢で、私の理想の王子様だった。


私はレオンにどんどん惹かれていった。


そして十歳の時、レオンから婚約の申し込みを受けた。


「エリザベス、僕と結婚してくれないか?」


「えっ……本当ですか?」


「本当だよ。君が好きだから」


「私もレオンが好きです……」


私達は幸せそうに抱き合った。


それから二年間、私達は婚約者として仲良く暮らしていた。


しかし、聖女が現れてからすべてが変わってしまったのだ。


「あの日……?ああ、あれか。確かに君に一目惚れしたことは事実だけど、それも子供の気まぐれだったんだよ。大人になってみると、君という人間がどんなにつまらなくて退屈で無能で自己中心的でわがままで……」


「やめて……やめてよ……そんなこと言わないで……」


私は泣きながらレオンに懇願した。


レオンは冷たく言った。


「言うよ。これが本当の僕の気持ちだから。君に対して愛情も尊敬も感謝もない。ただの嫌悪と軽蔑だけだ」


「そんな……ひどい……」


私は崩れ落ちそうになった。


レオンは容赦なく言った。


「だから、君との婚約を破棄する。そして聖女と結婚する。彼女は君とは違って美しくて賢くて優しくて清らかで、僕にぴったりの女性なんだ。彼女と一緒になれば、この国も幸せになる」


「国も幸せに……?それが何か関係あるの?私達は愛し合って結婚するんじゃなかったの?」


私は必死に反論した。


レオンは笑った。


「愛し合って結婚する?そんな甘いことを言ってる場合じゃないよ。僕は王太子だから、国のことを考えなければならないんだ。君と結婚しても国に何の利益もないし、むしろ迷惑だろう。でも聖女と結婚すれば、国民の信頼も得られるし、神の加護も受けられるし、最高のパートナーだよ」


「最高のパートナー……?それが本当に大切なこと?私達が一緒に幸せに暮らすことよりも?」


私は涙を流しながら訊いた。




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