婚約破棄された悪役令嬢は辺境で幸せに暮らす~辺境領主となった元悪役令嬢の楽しい日々~

六角

第1話

私は今日も王宮で働いていた。


私は公爵令嬢エリザベス・ファルコンという名前で、この国の第一王子レオン・アルトリアと婚約している。


私たちは幼馴染みであり、互いに想い合っているつもりだった。


しかし最近レオンは私に冷たくなった。


私が話しかけても無視したり、会おうとしても断られたりすることが多くなった。


それでも私はレオンを信じて待っていた。


レオンは国の未来の王だから忙しいんだろうと思って。


でも今日、その信頼が裏切られることになった。


「エリザベス。君と話がある」


レオンが突然私の部屋に現れてそう言った。


「レオン!久しぶりね!どうしたの?」


私は驚きながらも笑顔で迎えようとした。


しかしレオンの表情は冷ややかだった。


「君と話さなければならないことがあるんだ」


「何か問題でも?」


「問題……そう言えばそうかもしれない」


レオンは深呼吸してから言った。


「君との婚約を破棄する」


「えっ……?」


私は信じられないという声を上げた。


「どうして?私たちは愛し合っているんじゃないの?」


「愛し合っている?そんなことはない。君との婚約は政略結婚に過ぎなかったんだ」


「政略結婚……?でも私たちは幼馴染みで、一緒に遊んだり勉強したりしたじゃない。あの頃は本当に好きだったんでしょう?」


「あの頃はまだ子供だった。大人になってから気づいたんだ。君とは相性が悪いし、価値観も違うし、何より愛している人が別にいることに」


「愛している人が別に……誰よ!?」


私は怒りと悲しみで涙が溢れそうになった。


レオンは冷静に答えた。


「聖女だよ。彼女こそが僕の真実の伴侶なんだ」


「聖女……あの国を救ったと言われている聖女……?」


私は思わず呟いた。


聖女というのは、数ヶ月前に突然現れて、この国を襲っていた魔物や瘴気を浄化した存在だ。


彼女は神から授かった力で奇跡を起こし、国民から敬愛されている。


王宮でも彼女を招待してパーティーを開くほどだった。


私も一度会っただけだが、彼女は美しくて優しくて清らかで、まさに聖女そのものだった。


レオンが彼女に惹かれるのも無理はなかったかもしれない。


でもそれでも私は納得できなかった。


「レオン……どうしてそんなこと言うの……私達これから結婚するんだよ……幸せに暮らすつもりだったのに……」


私は涙声で訴えた。


レオンは無表情で言った。


「それは君の勝手な思い込みだ。僕は君と結婚する気はなかったし、幸せに暮らすつもりもなかった。君との婚約は父上の命令だったから仕方なく受け入れただけだ」


「そんな……嘘よ……」


私は信じられないという顔をした。


レオンは冷酷に言った。


「嘘じゃない。本当のことだ。君に対して愛情など一切感じていない。むしろ邪魔でしかなかった。聖女が現れてくれて本当に良かったよ。彼女が僕の運命の人だって分かったから」


「運命の人……?」


私は呆然とした。





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